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図書室
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*短めです。
念願の図書室に来た。
放課後だと言うのに、人はあまりいなかった。みんな借りたい本を見つけるとサッサと受付を済ませ、図書室を出ていく。
…何か課題でも出てるのかな?
静かな空間のなか、パタパタと駆ける音だけが聞こえていて、しばらくすると音も止んだ。
受付の司書のおじいさん以外、誰もいなくなったみたいだ。
折角なので堪能しよう。
私は本の種類や本棚の場所、本の並び方をゆっくりと見ながら、気になった本を取っていく。
…これでは、今日中に見終わらないかも。
そう考えると、【建国・歴史】と書かれた本棚の前で立ち止まる。今日の授業でも取りあげられたものを復習も兼ねて読むことにした。
黙々と読んでいると時間はあっという間で、大きな窓から夕日が差し込み、眩しさからようやく本を閉じた。
(この本を借りていこう)
「すいません、この本を借りていきたいのですが。」
「はい、かしこまりました。こちらの用紙に本の背番号とクラス、名前を書いてください。」
司書のおじいさんは優しそうなお顔で丁寧に教えてくださった。
「貴方は、今日初めて図書室を利用されましたか?」
「はい。今日から編入してきた、セレシア・ウェルナーと申します。」
「あぁ、貴方が噂の編入生の方ですね。私はこの図書室の司書をやっています、ダンと申します。ほっほっ、いやぁ、こんな時間まで図書室に残る生徒は珍しくてですね。思わず声をかけさせて頂きました。」
「そう、なのですか…こんなに素敵な図書室なのに、他の方々はあまりのんびりされていかないのですね。」
「…そうか、貴方はご存知ないのかもしれません。
図書室の中にはいくつかソファや勉強できるスペースがあるのをご存知ですか?…あちらの2階、奥のスペースはあまり近づかないようにしたほうがいいですよ。」
指で示された2階は、幅広い研究などに使う専門書が並べられた所だ。私としては、専門書を読む予定は今のところないけれど。奥になにかあるということかしら…
「何故、とお聞きしても?」
「奥にはね、恐ろしい狼がいるのですよ。」
「え?狼ですか?」
「はい。この図書室を守る狼です。近づいたり、図書室で騒がなければ、襲ってくることもないですし安心してください。……1度、男子生徒で酷く騒ぎ本を散らかした生徒が居まして。その生徒は狼によって病院送りにされてしまったのです。」
あまりに突拍子のない話に、私は呆然としてしまった。
こんなに綺麗な図書室に狼?というか、こんな綺麗な図書室を散らかした生徒がいる??どんな神経なのかしら。
「それから、他の生徒も怖がってしまって。用事を済ませると、さっさと出ていってしまうのです。私としては、もう少し使って欲しいような、汚されなくて嬉しいような複雑な気持ちですが。」
ダンさんは困ったような顔をして笑っていた。
それを改善したいと思っているわけではなさそうだ。確かに図書室が汚されず、静かな空間を保てるならそれはそれで……なんて。
「では、あまり長居しないほうがいいのでしょうか?」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。静かに勉強や読書をしている生徒を、狼は襲ったことがありませんから。」
「そうなのですね。」
それだけ、聞ければ安心した。
部屋で借りた本を読むのもいいけれど、本に囲まれた紙の匂い、ページのめくる音だけが作る空間で読むのも大好きなのだ。
これから放課後は図書室に通うことを日課にするつもりでいた。
「これから、よく来ると思いますがよろしくお願いします。では、また明日。」
「はい、お待ちしておりますウェルナー様。また明日。」
念願の図書室に来た。
放課後だと言うのに、人はあまりいなかった。みんな借りたい本を見つけるとサッサと受付を済ませ、図書室を出ていく。
…何か課題でも出てるのかな?
静かな空間のなか、パタパタと駆ける音だけが聞こえていて、しばらくすると音も止んだ。
受付の司書のおじいさん以外、誰もいなくなったみたいだ。
折角なので堪能しよう。
私は本の種類や本棚の場所、本の並び方をゆっくりと見ながら、気になった本を取っていく。
…これでは、今日中に見終わらないかも。
そう考えると、【建国・歴史】と書かれた本棚の前で立ち止まる。今日の授業でも取りあげられたものを復習も兼ねて読むことにした。
黙々と読んでいると時間はあっという間で、大きな窓から夕日が差し込み、眩しさからようやく本を閉じた。
(この本を借りていこう)
「すいません、この本を借りていきたいのですが。」
「はい、かしこまりました。こちらの用紙に本の背番号とクラス、名前を書いてください。」
司書のおじいさんは優しそうなお顔で丁寧に教えてくださった。
「貴方は、今日初めて図書室を利用されましたか?」
「はい。今日から編入してきた、セレシア・ウェルナーと申します。」
「あぁ、貴方が噂の編入生の方ですね。私はこの図書室の司書をやっています、ダンと申します。ほっほっ、いやぁ、こんな時間まで図書室に残る生徒は珍しくてですね。思わず声をかけさせて頂きました。」
「そう、なのですか…こんなに素敵な図書室なのに、他の方々はあまりのんびりされていかないのですね。」
「…そうか、貴方はご存知ないのかもしれません。
図書室の中にはいくつかソファや勉強できるスペースがあるのをご存知ですか?…あちらの2階、奥のスペースはあまり近づかないようにしたほうがいいですよ。」
指で示された2階は、幅広い研究などに使う専門書が並べられた所だ。私としては、専門書を読む予定は今のところないけれど。奥になにかあるということかしら…
「何故、とお聞きしても?」
「奥にはね、恐ろしい狼がいるのですよ。」
「え?狼ですか?」
「はい。この図書室を守る狼です。近づいたり、図書室で騒がなければ、襲ってくることもないですし安心してください。……1度、男子生徒で酷く騒ぎ本を散らかした生徒が居まして。その生徒は狼によって病院送りにされてしまったのです。」
あまりに突拍子のない話に、私は呆然としてしまった。
こんなに綺麗な図書室に狼?というか、こんな綺麗な図書室を散らかした生徒がいる??どんな神経なのかしら。
「それから、他の生徒も怖がってしまって。用事を済ませると、さっさと出ていってしまうのです。私としては、もう少し使って欲しいような、汚されなくて嬉しいような複雑な気持ちですが。」
ダンさんは困ったような顔をして笑っていた。
それを改善したいと思っているわけではなさそうだ。確かに図書室が汚されず、静かな空間を保てるならそれはそれで……なんて。
「では、あまり長居しないほうがいいのでしょうか?」
「いえいえ、そんなことはありませんよ。静かに勉強や読書をしている生徒を、狼は襲ったことがありませんから。」
「そうなのですね。」
それだけ、聞ければ安心した。
部屋で借りた本を読むのもいいけれど、本に囲まれた紙の匂い、ページのめくる音だけが作る空間で読むのも大好きなのだ。
これから放課後は図書室に通うことを日課にするつもりでいた。
「これから、よく来ると思いますがよろしくお願いします。では、また明日。」
「はい、お待ちしておりますウェルナー様。また明日。」
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