異世界一の牛丼屋

たろたろぬ

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二章

後輩ができるっす

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「む、長崎くん。その紙はなんだい?」


 事務所のいすに座り、何やら神妙な面持ちで何枚かの紙を眺めている長崎。遠山はそんな長崎を後ろからのぞき込む。


「これかい? なんだと思う?」
「む―難しいな」



 楽そうに裏返しにした紙をひらひらと揺らす長崎。



「降参だよ。答えを教えてくれ」



 困り顔でこちらを見つめてくる遠山に長崎は紙束を手渡す。
 そして遠山はそれを見てふむふむ、すごいなと返答する。



「すごいだろ? それは全部この店で働きたいと言っているバイト希望者さ」



 バイト希望者その数五人。
 ユイカがこの店を宣伝してくれていこう、ここは超人気店となっていた。どの時間帯でも大体店が空になることはない。常に誰かがイスに座っている。少し前の状況からするとすごい変わりようである。



「そうだねいい加減ここも三人で毎日回すのはきつくなってきたよね」
「そうだな三人で回すとかとんだブラックだぜ」



 ハハハと笑う長崎。
 そしてそれとは対照的に本当だよ、僕の体は何回ゲシュタルト崩壊を起こしそうになったことだか、と暗い表情の遠山。



「それで何人雇うきだい?」
「とりあえず全員だな。別にいいだろ?」
「そうだね。予算的にも五人雇うくらい平気だろうからね」


 ふう、ようやくこれで僕もたくさん休むことができるよ。もともと防衛省時代もひどかったけど、それ以上にここは酷だからな。
 などと思った遠山である。



 次の日。


「えっ!? 後輩ができるっすか?」


 心の底から驚いた声。
 そして直後ほっとしたノス。ノスも少し自分の仕事量の多さにつかれていただけに、従業員が増えるというのは手放しで喜べる案件なのだ。


「さっそく一人今日来るんだが、ノスお前が新人の教育をするんだ」
「えっ、えっ!? 僕がっすか!?」
「俺はお前以外に適任を知らない」


 その一言に僕は適任じゃないんだね。
 まあいいけど。と遠くですねる遠山。
 もちろん二人が遠山に気づくことはない。


「できないなら俺が自分で教えるがどうする?」
「やってみるっす!」


 ノスはやる気に満ち溢れた声で即座に答えた。
 ノスは働き始めてからずいぶん変わっていた。もうすでに前のことも完璧にこなし、バックの作業もだいたいできるようになっていた。もちろん一人で牛丼を作ることもできる。


「あ、これ持っていくっすね」


 完成した牛丼をさっとおぼんにのせ、すっと振り向き歩みだそうとしたのだが。
 ツルッ、キューン、ドシャーン。三連コンボが見事に決まった。
 おぼんから牛丼が地面にぶちまかれる。


「す、すいませんっす」


 これを見てお気づきかもしれないが、ノスのどじっぷりももちろん健在である。


 
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