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第1章
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しおりを挟むヒポクリフトを担いだ獣顔の足が止まる。
そこはダンジョン途中にはある岩陰で、獣顔は岩陰に隠れるようには身を屈めた。それにヒポクリフトも続く。
「冒険者よ、絶対に物音を立てるな」
釘をさしておく。
獣顔はそうも言った。
ヒポクリフトは、ただただ獣顔の言葉に頷く。
「あの」
「何だ?」
「助けてくれて……ありがとうございました」
ヒポクリフトは獣顔を見つめて言った。
獣顔がどういった存在で、どうして助けてくれたのかは分からない。
ただ少なくとも敵ではない、そんな気がするーー
ただ、そんなヒポクリフトの思いとは裏腹に、獣顔は失笑を浮かべる。
「勘違いするな。別にお前を助けたかったわけじゃない。契約の元に、ただの其れだけだ」
「それはどういう、」
ヒポクリフトが言いかけて、獣顔は彼女の口元を手で塞いだ。
「静かにしろ……すぐそばまできている」
そう言われはしたが、ヒポクリフトには何も聞こえてはいなかった。
それでも獣顔には何かが近付いてくる音が聞こえてくるようで、獣耳をヒクヒクと動かしていた。
「来たーー」
獣顔が呟いた、
刹那の事だった。
岩陰のすぐ隣を、数にして6匹程の魔物が通り過ぎていく。
ヒポクリフトよりも獣顔よりも遥かに大きな巨体を揺らして。
「オークだ。どうやら、あの中に奴がいるようだな」
「奴、ですか?」
「ダンジョンマスター(階層主)、お前も聞いたことがあるだろう?」
ヒポクリフトはそんな獣顔の問い掛けに、首を横に振っては応えた。
「何だと?ダンジョンマスター(階層主)の存在も知らずにダイスボードに進入したのか?」
獣顔は溜息を吐いた。
「いいか?この迷宮ダンジョンには、その階層ごとにダンジョンマスター(階層主)と呼ばれる門番がいる。地下3階以降はそいつを倒さなくては先の階層に進めないというわけだ。しかも、今この地下4階層にいるのは俺とお前の二人だけ。つまりあいつを倒せるのは俺だけだ……理解したか?」
ーー知らなかった。
ヒポクリフトは獣顔の言葉に、ただただ驚いていた。
「いいか冒険者よ、お前にこの先は荷が重すぎる。何を思ってこのダイスボードに足を踏み入れたかは知らんが、言っておく、貴様如きでは先には進めない」
獣顔は辛辣な言い方で、ヒポクリフトを指差した。
「ただ、今更引き返すにもお前は力がなさが過ぎる。増してや、仲間を失った冒険者となれば……」
仕方ない、これも契約か。
「???」
「冒険者よ、名は?」
「……ヒ、ヒポクリフト!」
「そうか。ではヒポクリフト、お前をこれから地下8階層にはある転移魔法陣(ゲート)まで連れていく。そこから地上へと出られる」
獣顔は、溜息混じりに言った。
「あの……」
「何だ?」
「転移魔法陣(ゲート)……とは?」
「時期に教える」
そうですか。
では、
「貴方の事を聞いても?」
「……答える義理はない」
獣顔は行きたいやはり冷たくヒポクリフトを突け放す。
「……でもまぁ、名前だけは告げておこう」
獣顔は短く、「ガンスレイブ」とだけ、そう呟いた。
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