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楽園創造編

魔王が現れました

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 行く宛もないわたしは、トボトボ街の外へと飛び出していた。

 涙が溢れて止まらない。

 今のわたしには行く場所も帰る場所も、どこにもないんだ──

「お初にお目にかかります、ビルマ様」

 街の外に広がる草原を、泣きながら歩いているときだった。いつの間にそこにいたのだろうか──前方に、黒いタキシード姿の銀髪の何者かが立っていた。俯いて歩いていたから、全く気付かなかった。

 それにしても、かなりの美形だ。淡いブルー瞳に、青年にも少女にも映る端正な顔立ち。黒いタキシード姿も相まって、雪のような肌の白さが際立っていた。

「えっと、あなたは一体……」
「ああ、申し遅れました。私、魔王軍の参謀を務めさせております、【ザラト・リッチ】でございます。以後、お見知りおきを」
「ま、魔王軍のザラト・リッチ!?」

 その名については、よく知っている。

 ザラト・リッチ──魔王リリスの懐刀とも呼ばれているリッチーアンデットの王、魔族だ。人間と敵対関係にある魔族のザラトが、人間の街の近くに現れたということは……想像するまでもない。

 わたしは、即座に創造魔法クリエイトマジックを発動。対アンデット戦で効力を発揮する【聖水】と【銀の剣】を精製させ、ザラトと対峙した──と。

「素晴らしい。それが、噂に聞く創造魔法クリエイトマジックですか。いや、詠唱もなし精製可能とは、噂以上です」
「へっ?」
「なにより、」

 と、ザラトは目にも止まらぬ速さで近づいてきて、わたしの手から聖水と銀の剣を奪い取った。それら交互に見流して、感心そうに頷く。

「やはり、魔王様の目に狂いはなかったようですね」
「あのぉ、もしもし? 話が全く見えないんですけど……」
「とりあえず、魔王城へお越し下さい」

 ん? 

「魔王、城? どうして?」
「詳しい話は私からではなく、魔王様の口から直接ご説明があると思いますので」
「魔王⁉︎ いやいやいや、話が飛躍し過ぎ──」
「では、行きますよ」

 ザラトは、ぶつぶつと何事かを唱え始めた(魔法?)。すると、目の前に突如として真っ暗闇の穴が浮かび上がった。

 ザラトは、わたしの手を引っ張りながらその黒い穴へと入っていく。

「ってちょ、待っ、うわぁあああああ~」
 
 なす術もなく、わたしは穴の闇に飲み込まれたのだった……。

◾️

「ようこそ魔王城へ、ビルマ様」

 そう言ったのは隣に並ぶザラトだ。どうやら、先ほどの出来事は夢ではなかったらしい。

 わたしは、ゆっくりと目を開く。

 足元には魔法陣が描かれていて、仄かに光っている──これは確か、転移魔法陣テレポートゲートだ。大魔法士クラスしか構築できないとされる高度な魔導術式である。

 次にわたしは辺りを見回して──この場に蔓延る無数のに気付いてしまった。

(ま、魔族……⁉︎)

 しかも、ただの魔族ではないのだろう。どの魔族にしても、並々ならぬ覇気を漂わせている。威圧感は半端ではなかった。

 そして、視線を部屋の奥へ。

 なだらかな階段の先に、豪奢な椅子に座る黒髪の男が一人……あれも、魔族だろうか。

 朝焼けの空のような肌に、左右の額それぞれに金色の立派な角。その切長い瞳の奥には、彼の力強い意志が垣間見えるようで──

「よく来てくれた、ビルマ殿。急に呼び立てして申し訳なかった」
「あ、あなたは?」
「失敬、挨拶が先だったな。では改めて、我こそが【第6代目魔王 アスラ・ソウ・リリス】である」
「え、えぇっ⁉︎」

 う、うそ……魔王って、あの魔王⁉︎

「あわわわ、わわ……」
「ビルマ様、大丈夫ですか?」

 そう尋ねてくるザラトに、わたしは耳打ちした。

「……あの、帰ってもいいですか?」
「ダメです。とりあえず、魔王様の話だけでも聞いていってください」
「聞いたら、帰してくれるの?」
「大丈夫です、きっと帰りたくなくなりますよ」
「か、帰りたくなったら?」
「一時の気の迷いかなにかと。お部屋をご用意してますので、そちらで一晩よく考え直してみたらいいと思います」

 それもはや強制だ! 

 でも、なんでわたしなんかをそこまでして……絶対、なんかあるに違いないよ。

 例えば──

『おい、そこの人間の女! 酒もってこい!』
『はっ、はい! よろこんでー! 創造魔法クリエイトマジック──お酒っ!』ぽいっ。
『おい、俺様の肉がまだだぞメス豚っ!』
『も、もうしわけありませんーっ! んっー創造魔法クリエイトマジック──お肉っ!』ぽいっ。
『ぐへへへ……おい、女を寄越せ』
『あ、あのっ、生命の創造クリエイトはできなくてっ』
『なに言ってやがる? お前がいるじゃねーか』ぽろんっ。
『ご、ご堪忍をっ~いやーんっ!』

 やばい、目眩がしてきた──と、魔王はわたしの異変をいち早く察してくれたのか、

「おい誰か、ビルマ殿に椅子を用意してくれやってくれ」

 えーと……意外と、優しい?

 魔王なのに、客人を迎え入れる器量はあるみたいだ(勝手な偏見だけれど)。

 でも、椅子なんて用意してもらわなくてもいいんだけどね。

「あの……自分で用意できるので、結構です」

 わたしは、即座に創造魔法クリエイトマジックで椅子を精製。適当な椅子が思い浮かばなかったので、とりあえず魔王が座っているもの(いかにも魔王が座っていそうな金の椅子)と同じものを用意。

 すると、魔物たちがザワザワと騒ぎ出していた。

 あれ? なんかわたし、やばいことやっちゃったのかな?

「ビルマ殿、試しにその椅子に座ってみてくれないか?」
「は、はぁ……」

 よく意味は分からないけれど、言われた通りその椅子へ腰を下ろした──その瞬間、突然椅子が虹色の輝きを放ち始めた。

(ひえぇーっ!)

 そして、目が眩むほどの眩い閃光が空間全体に広がっていき、わたしは咄嗟に目を閉じる。

 それから数秒ほど経って……あれ。

(……なにも、起きてない?)

 一体、今わたしどういう状態なんだろう?

「ビルマ殿、目を開けてみるといい」

 と、魔王にそう言われたら開けるしかないよね。わたしはゆっくりと、目を開く。風景はなにも変わってない。手もあるし、どうやら爆破エンドはまぬがれたみたいだけど……って、あれ?

「な、なにこれ……」

 わたしは、目を疑った。
 というのも、わたしの服装が変わっていたのだ。

 黒い生地のドレスで、裾は赤い羽毛のようなものが生えている。また、上等そうな濃い紫色のマントを羽織っていた。

「えっと……これはどういう、」
「それは、魔装神器ゴッズと呼ばれるものだ」
魔装神器ゴッズ……って、えぇええ⁉︎」

 魔装神器ゴッズ──確か、神話の時代から受け継がれているとされ、その製造法も素材も未知とされているオーパーツだ……って、まさかこの椅子がその魔装神器ゴッズなの⁉︎ 

「今のビルマ殿の状態は、魔装神器ゴッズに眠る真の力を解放状態と思ってもらったらいい。だがしかし、よもや我の力を持ってしても解放できなかった 深淵ノ理アビスを、こうもあっさり解いてみせるとは……」

 魔王が驚いている。いや、一番驚いているのはわたしなんですけどね⁉︎

(それになんか……全身から、もの凄い魔力の圧を感じる……)

 ちなみに、わたしは自分で創造クリエイトした創造物の情報を確認できるんだけど──

=====
深淵ノ理アビス
レア度:★★★★★★★★

 体力:⁇⁇
攻撃力:⁇⁇
防御力:⁇⁇
 魔力:⁇⁇
俊敏性:⁇⁇
 知性:⁇⁇

・耐性
物理:⁇⁇
 火:⁇⁇
 水:⁇⁇
 雷:⁇⁇
 土:⁇⁇
 闇:⁇⁇
 光:⁇⁇
 
<⁇??>
鳳凰黒龍ダークドラゴニクス】※権限により使用不可
処刑少女アイアンメイデン】※権限により使用不可
希望ト絶望ノ獣ヴァナル・ガンド】※権限により使用不可
貪ル王蟲グレイプニル】※権限により使用不可

<エクストラスキル>
叛逆ノ翼ブラックリベリオン】※使用不可

・特殊能力:
【浮遊】
【魔導の心得】
【心眼】
【魔眼】
【薬学王】
【魔香】

・概要
 初代魔王テスラ・ラフレシアの創り出した魔装神器ゴッズ。かつて世界を滅ぼしかけた伝説の魔獣クリーチャー【四災厄】の魂が封印されている。魔を引き寄せる特殊なフェロモンを発しているため、魔族と仲良くなれる予感⁉︎ 魔族に好かれたい女子なら絶対抑えておきたい、時代性を問わない幻のトレンドアイテム! レッツ、魔王系女子!
=====

 いやいや、いろいろとツッコミどころ満載なんですけど!?
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