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第1章 ゴブリンキング
終末歴1805年 8月31日
しおりを挟む地下迷宮で目が覚めて十年。
当時5歳だったキングは地下2階層にいましたが、今では15歳となり、地下8階層に到達していました。
魔物に年齢など関係ないと思いながらも、キングは日々たくましくなっていく自身の身体を見ながら、「成長したな」としみじみ感じるのです。
キングは右手に銀色のショートソードを、左手に太陽の紋章が刻まれた盾を構えています。
銀色のショートソードは一年前、地下7階層にて偶然見つけたもの。
切れ味は鋭く、なかなかに刃こぼれしないその剣を、キングは直ぐにも気に入りました。
その日もまた、キングはお気に入りのショートソードを握り締め、細長い迷宮の廊下を、奥へ奥へと進んでいきます。
異変に気付いたのは、それから数時間ぐらい彷徨った後でした。
悲鳴のような叫び声が、迷宮内に響き渡ったのです。
遠くから鳴ったようですが、聴覚の優れたキングにははっきりとその声を聞き取ることができました。
キングは直ぐにも踵(きびす)を返し、声の発信源へと駆け出します。
強靭な足腰に物をいわし、驚異的な俊敏力にて現場へと急行。
数分と掛からず、キングはその場へと辿り着きました。
そこは、地下迷宮では珍しい開けた空間。
まずキングの目に飛び込んできたのは、巨大な魔物の姿でした。
百足(ムカデ)のような姿をした、これまで一度も見たことのない巨大な魔物でした。
体長5メートルはあるだろうか、何百本とあるだろう足を怪しく蠢かせ、深紅色の甲殻に纏われた体をしならせています。
この階層の主と言っても過言ではないだろう、キングはそう思いました。
そして、次に目に飛び込んできたのは人間の女の姿でした。
長い金髪を後ろで一つに結った、色白の女。
淡い赤色の鎧を身に纏い、膝下程あるグレーのスカートをひらひら揺らし、必死に魔物から逃げ惑っていました。
一応手にレイピアを握っていますが、先端が折れており、あれでは使い物にならないことでしょう。
その装いから、キングはすぐにも彼女が冒険者と呼ばれる存在だろうと判断しました。
また、その冒険者は時期に死ぬだろうと予想したのです。
キングが冒険者を見るのは、これが初めてではありません。
それこそ、地下迷宮のとこかしこで何度も冒険者の姿を目撃してきました。
ただ、一度も声を掛けたことはありません。
何故か、それはキングがこれまで遭遇した冒険者たちとは皆死んでいたからです。
この地下迷宮は弱肉強食の世界。
弱きは強きに屈し、敗者の扱いは勝者の自由。
食うも嬲(なぶ)るも、勝者にだけ与えられる権利。
故に、彼女がこの地下迷宮にて初めて遭遇する生きた冒険者であろうとも、わざわざ危険を犯してまで助ける義理はない。
そのまま俯瞰的(ふかんてき)に眺めていると、ついに冒険者の動きに乱れが生じてきました。
その隙を、魔物は見逃しません。
魔物の口元から生えた大きな牙が、冒険者の胴体を切断せんと迫っていました。
冒険者の顛末が、死へと傾きます。
なれど、キングは同情などしません。
生がある以上、死もまた等しく存在する。
生きとし生けるもの者、他者の命を喰らい、そうして次世代へと生を紡ぐ。
人間も魔物も、そこに変わりはない。
だからこれでいい。
キングは戦闘の決着を待たずして、再び迷宮の奥へと足を進めようと背を向けました。
「い、いやぁあああああああああああ」
ドクンッ……。
冒険者の悲鳴が、キングの胸に響きました。
また身体が硬直し、足が動かないのです。
途端、キングに押し寄せる疑問。
(何故、身体が動かぬ……それに、この胸の高鳴りはなんだ)
ドクンッ、ドクンッ、ドクンッ。
キングは顰めた表情のまま、コンマ数秒程考えます。
そして、
「ギィィィィィィィィィィィィィィィィッ!」
魔物が金切り声を発したのと、同時でした。
ガキンッ!
「え?」
冒険者の目に、予想していなかった光景が映り込みます。
なんと、紫肌をした何者かが自分を殺そうとしていた魔物の毒牙を盾で弾き返していたのです。
金色の盾。
銀色の剣。
背丈は成人男性ぐらい。
服装は軽装で、不恰好。
緋色の瞳。
漆黒の髪。
一見して、それは人なようであるが、よく見れば直ぐにも気付く。
それはーー
「……ゴブ、リン?」
冒険者は目を見開きながら、瞳を驚愕の色に染めました。
そんな冒険者の心中など露知らず、キングは自身の犯した不可解な行動に苛立ちを覚えます。
(俺は一体、なにをやっているんだ)
キング自身よく分かりません。
『冒険者を救済せよ』という、 不快な使命感に突き動かされるのみです。
魔物は怒りに満ちた奇声を発し、乱入者であるキングを激しく威嚇しました。
キングは臆することなく、盾を構え直し、剣先を魔物に向けます。
(力量さは不明。だが、動きは完全に見切っている)
キングは漠然と、その魔物に勝てると判断しました。
奴は、俺がこれまで戦闘してきた魔物の中でもトップクラスの部類に入る強さを秘めているに違いない。
だがしかし、俺とて地下迷宮で培った戦闘経験がある。
その経験上、断言できる。
俺は奴に勝てる。
キングは勝利を確信しながら、尻餅をつく冒険者へと振り返りました。
「邪魔だ」
「……ゴ、ゴブリンが喋った」
今更なにをーーキングはそう思いましたが、冒険者にとっては違います。
と言うのも、人語を話すゴブリンなど見たことも聞いたこともなかったからです。
いくら年輪(ねんりん)を重ねたとて、低俗種の魔物であるゴブリン如きが人語を理解するなどあり得ないーー冒険者はそのように思っていました。
次にキングは、なかなか動き始めない冒険者に怒声を発しました。
「失せろ!」
そんなキングの叫び声が合図となり、冒険者は急いで背を向け走り出し、魔物は牙をキングへ向け襲い掛かっていました。
戦闘の火蓋が、切って落とされたのです。
「他愛もない」
ことは一瞬にて決着を迎えました。
魔物の動きを見切ったキングの刃が、鮮やかな剣線を描き魔物の喉根を貫いたのです。
キングは剣を引き抜き、剣身に付着した真緑色の血液を乱暴に振り払います。
そんな機械的な動作を見せるキングへ、身を潜めていた冒険者は近付きます。
勇気を振り絞り声を掛けました。
「どういうつもり……」
キングはじっとりとした瞳を、冒険者へと向けます。
冒険者も負けじと、キングを睨み返しました。
また、先端の折れたレイピアを構えます。
「ゴブリンがどうして、人間である私を助けたりしたの」
疑問はそれだけじゃありません。
「大体、あなたは本当にゴブリン? 人語を解するゴブリンなど、聞いたことーー」
「キングだ」
「え?」
目を丸くさせる冒険者に、キングは再度言い放ちました。
「だから、キング。それが俺の名前だ」
「ゴブリンに、名前?」
冒険者の頭は、ますます混乱します。
一方で、キングは先程まで強烈に感じていた謎の使命感が、急激に冷めていく感覚を味わっていました。
冒険者に対する興味が途端に失せていき、キングは再び迷宮探索へと戻ろうとします。
「ちょっと、どこに行くの」
「人間になど関係ない」
「私を、生かすつもり?」
「ただ、興味を失っただけだ」
冒険者は、冷たく遇(あし)い去っていくキングの後を追いかけます。
「ねぇ、あなたはゴブリンじゃないの?」
「ゴブリンだ」
「じゃあ、どうして人語を」
「ゴブリンが人間の言葉を喋ることがそんなに変か」
「変よ。絶対に変」
「そうか。だったらーー」
キングは唐突に振り返り、冒険者の眼前へと詰め寄ります。
「ーー人間であり冒険者である貴様が、魔物でありゴブリンである俺に付いてくるのはおかしな話……そうは思わないか?」
冒険者は顔を引攣らせ、苦笑いを浮かべました。
「変な話ね。普通なら刃を交えるところだけど……」
「だったら付いてくるな」
「それが……」
冒険者は冷や汗を垂らしながら、ゆっくりと呟きました。
「帰る術を、失いまして……」
結局、キングは冒険者の同行を許していました。
普段のキングであるなら決してあり得ない行為ですが、何故か、誰かに「そうしなさい」と言われている気分だったのです。
キングと冒険者は、迷宮の途中で丁度良い空き空間を見つけ、そこで夜を明かすことにしました。
陽のない迷宮に夜も朝も関係ありませんが、キングは睡眠時間を夜と呼んでいます。
キングは盾を裏返し、太陽の紋章を天井へと向けました。
太陽の紋章が、徐々に眩い光を放ち始めます。
「この盾が輝いている以上、魔物たちが近寄ってくる恐れはない。最もマナを消費するから、使用するのは夜だけだが」
その光景を傍(かたわら)で静かに眺めていた冒険者。
「そう、不思議な盾ね。魔蔵武具かしら」
「なんだそれは」
「知らない? 特殊な力の込められている武具のことを、地上ではそう呼んでいるの」
知る由もありませんでした。
何故なら、キングは生まれてこの方、この地下迷宮こそが世界の全てだったからです。
「それをどこで?」
「拾った」
キングは、自身の身に着けている武具の全てがこの地下迷宮にて朽ち果てた冒険者から奪ったものだと明かしました。
中でも、銀色に輝く剣は一番のお気に入りであると冒険者に語ります。
「綺麗な剣ね。よく鍛えられてある。きっと、その剣の持ち主だった冒険者は高名な人よ」
「そうなのか?」
「……そうだと、思うけど」
冒険者はキングの顔をまじまじと見つめます。
それはまるで、理解し難いものに直面した研究者のような瞳で。
「もう一度聞くけど、あなた……本当にゴブリン?」
「くどいぞ」
「でも変よ。ゴブリンが人間の言葉を理解し、それを話すなんて、聞いたことないわ。その様子だと、あなたはなにも知らないようだけど」
それから、冒険者はキングの知らない様々なことを語り始めました。
「ゴブリンはね、低俗種に分類される魔物なの。何千年も昔、異次元より召喚された精霊が瘴気で穢れ、ゴブリンが誕生したと言われているわ」
中でも、ゴブリンは低俗種最下位に位置する魔物だとも語ります。
「知能も低いの。だからね、驚いたわけよ。冒険者の武器を扱っているならまだしも、言葉まで理解している」
「そうは言われても、俺はゴブリンだ」
「そうなんだろうけどさ。そもそも深淵の墓標に棲息しているゴブリンを見たのは、あなたが初めてよ」
「深淵の墓標?」
訊ね返したキングを見て、冒険者はさらに驚きました。
「まさか、自分が今どこにいるかも知らないわけ?」
「ああ、気付いた時にはここにいた。今から十年前の話だ」
キングは記憶している限りのことを、冒険者に伝えました。
それはこの迷宮にて過ごしてきた壮絶な日々の記録。
冒険者は、興味深そうに聞き耳を立てます。
一頻り聞き終えた後で、冒険者はやっと口を開きました。
「命令を受けている、か」
「そうだ。強くなれ、強くなれと、誰かが俺にそう語りかけてくる。そうしていつか、超新星を求めよと、それが生きている理由の全てだ」
「超新星、ね……それはもしかしたら、魔王に使える側近者たちのことかも」
「なんだ、それは」
「言い方を変えれば、魔王軍の幹部とでも言うのかしら。最も、魔王は未だ復活してないとされているけど」
キングにはよく分からない話でした。
ですが、強さの果てにそれらがいるのであれば知っておいて損はないと話を聞き込みます。
冒険者の話は、キングにとって新鮮なものばかりでした。
「ところで、何故帰れない?」
「さっきの戦闘で、仲間がみんな食べられてしまった。さっきも言ったけど、ここは深淵の墓標と呼ばれていてね、高レベルの魔物がいることで有名なの。だからね、一人となった今では、もう引き返すことは出来ない」
「分からないな。俺はずっと一人だ」
その通りでした。
キングとは、ずっと一人で戦い生き抜いてきた孤高の魔物、ゴブリン。
また、それはなにもキングだけに限った話ではありません。
この迷宮に棲息する魔物の殆どが、徒党(ととう)は組まず己が力のみで生きていたのです。
それ故、キングが冒険者の心中を理解することは無理に等しい。
冒険者は難しい顔を作り、辛そうな瞳をキングに向けます。
「人間と魔物は、違うのよ。人間は魔物のように、強靭な牙もなければ鋭い爪もない。だからこそ肩を寄せ合いながら、協力しながら生きているの」
「脆弱な生き物だ」
「そうね、人間は弱い。私も、弱かった」
そう言ったきり、冒険者が口を開くことはありませんでした。
キングもまた黙ったまま、その夜は静かに過ぎていったのです。
眠り着くまでの間、キングの脳裏に様々な感情の波が押し寄せます。
自分はどうして、人間である冒険者を救ったのか。
自分はどうして、この迷宮で生きているのか。
まだ見たこともない魔王に力を貸す為か。
それとも単純に、無作為に産み落とされただけなのか。
いくら考えても、答えは出ません。
明くる朝、キングは再び迷宮の探索へと向かう為行動を開始しました。
結局のところ、キングのやることはそれだけに過ぎません。
強さを求め、迷宮の最深部へと向かう。
そこに、自身の知りたい答えが待っていると信じて進むだけです。
「もう、行くの」
「ああ」
素っ気なく言ったキングの言葉を受けて、冒険者の顔色は一気に暗くなっていきました。
キングは、そんな冒険者の顔色を伺いながら、妙な気持ちを抱いていました。
何故か、この冒険者を守らなければならないと、そのような命令を受けた気がするのです。
単なる気のせいなのか、どうなのか、キングにはよく分かりません。
ただ、この冒険者を放っておけば、彼女が今日中にも命を枯らすだろうと、キングは悟っていました。
キングは足を止め、暫し冒険者の姿をジッと見つめます。
「行かないの?」
「いや、行く。行くが……」
「?」
「お前は、どうしたい」
冒険者は首を傾げて、聞き返しました。
「どうしたいって、なにが」
「だから、この後どうしたいのかと、そう聞いている。地上へと戻りたいのか、それとも迷宮の奥へと進みたいのか、どうなのか」
冒険者は俯き、ボソボソと言いました。
「……分からない。私は、冒険者としてこの深淵の墓標に入った。この地に眠るとされる王の魂を見つけ出す……それが私たち、神託の騎士の使命だったの」
またもや、冒険者はキングには到底理解出来ない話を語り明かします。
王の魂も、神託の騎士とやらも、キングにはなんのことを言っているのかさっぱり理解できません。
キングの聞きたいことは、そういうことではありませんでした。
だからこそ、再び問います。
「俺が知りたいのは、お前の身の上ではない。生きて地上へと戻りたいのか、それともこの場で朽ち果て死にたいのか、そこだけだ」
「……私は」
冒険者は口籠もり、黙ってしまいました。
キングは黙る冒険者に目線を落としながら、いつまでも彼女の返事を待ちます。
そして、
「私は……生きたい。生きて、この迷宮を出たい。地上に、娘がいるの。あの子に生きて帰るって、そう約束したから」
娘、つまりは人の子か。
キングは冒険者が人の子の親であったことに驚きましたが、表情には出しませんでした。
背を向け、再び歩き始めます。
「だったら付いて来い。迷宮の最果てに辿り着いた暁には、地上へ送り届けることを約束しよう」
キングの突然の申し出に、冒険者は戸惑いを隠せませんでした。
ズイズイと歩き進むキングの後を追いながら、その背に疑問をぶつけます。
「あなたは、どうして私にそこまで良くしてくれるの?」
「ついでだ。それに、俺もいつか地上に出ることになる。その時多少なりとも知識を付けておいた方がなにかと便利だ」
「要するに、私の知識を教えろと?」
キングは頷きました。
「それ以外、お前に利用価値はない」
果たしてそうか。
未だ冒険者を救済する理由についてよく分からないキングとは、現状そう言うしかありませんでした。
ましてや、この行為が優しさだとは思ってすらいません。
その証拠に、キングは冒険者の気持ちなど汲み取ることなく、グングン奥へと奥へと進んでいくのです。
素っ気ないキングの背に続きながら、冒険者は安堵の気持ちを抱かせていました。
このゴブリンは、いやキングは、もしかしたら信頼に値する存在かもしれない。
魔物は人類の敵であると聞かされ育った冒険者の固定概念が、徐々に形を失い、そよ風のように吹き去っていきます。
そんなことはどうでもいいと、冒険者はそう思ったのです。
自分の生かす者が魔物であるか人間であるか、そんなことはどうだっていい。
キングはキングで、私は私、凝り固まった常識など捨ててしまえ。
冒険者はキングの隣に並び、ニッコリと微笑みました。
「私はアイル。よろしくね、キング」
「……アイル、俺はお前をそう呼ぶ」
「うん」
数奇に渡るキングの冒険が、始まったのです。
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