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第2章 ラクスマリア城とラクシャータ王女の剣

13話 初任務

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 昼下がり午後、俺は一人城下街ルコンドを歩く。


 久々の外出、1週間ぶりに歩く城下町とはやはりと言って緊張するものだ。また色んな刺激に満ち溢れているせいかやけに気分が落ち着きない。例えば今まさに俺の横を颯爽とは歩き抜けていった冒険者風の男だとか、平然と様子では街の一風景として溶け込むトカゲ人間や猫人間などの亜人種達etc…目が奪われて仕方ない。


「やっぱり落ち着かねぇな、この場所は」


 見渡す限りの人、亜人、そして時々見たこともない異様な獣が沢山の荷物を背負い道を闊歩する…その獣は生前で言うところの牛のような姿形をしている。まるで家畜のようである。
 とにかくそんなルコンドの街並みとは圧巻の一言に尽きた。



 人混みに緊張し過ぎているせいか時間の流れがやけに早く感じていた。
 しかもずっと誰かに見られているような気がして、それは多分俺の勘違いなんだろうが、いかんせん俺は緊張しい性格だ。こんな人混みに紛れること自体慣れないわけで…うん、帰りたいな。


 俺はグインの指示に従っては城下町ルコンドへと繰り出し、覚束ない足取りのままにはへと足を進めていく。
 そうして辿り着いたとは、ルコンド城下町の中腹辺りにある一軒の鍛冶屋。
 外観からして結構歴史の古そうな建物だった。看板に至っては年季が入りすぎていて最早読み取るのさえ難しい。


「ここで…いいんだよな?」


 1週間前のあの日、武具の点検にやってきたとされるこの鍛冶屋の主人。確かに外来記録への記入は確認されていたはずなのに、何故か魔法によってその記録は隠蔽されていた。
 その理由はまだ分からないが、少なくともあの晩に起きた殺人に関わっていたと間違いはないだろうとはグインは言っていた。


「とりあえず、中に入るか…」


 鍛冶屋の扉を押して、恐る恐るは中へと足を進める。 
 中は入ってまず、俺の鼻を鉄と油の匂いが刺激していた。
 また鍛冶屋の店内はかなり薄暗く、窓から入る弱々しい太陽光だけが頼りである。そんな頼りない逆光に照らされて、乱雑には散らばった刀剣やら防具やらが目を引くーーーそんな空間。
 ざっと見た感じはそんな感じで、どうやら鍛冶屋の主人は外出しているらしい。


 にしてもだ、おいおい何だよこの場所…


『これが…鍛冶屋?』


 総じて、この鍛冶屋に対する俺の印象とは『不気味さ』そのものだった。
 どれくらい不気味かと言えば、生前引き籠っていた俺の自室並。自分で言うのも何だが、生前俺の世界の全てだった自室とは人の住むような場所ではなかった。


 それは何とも表現し辛い部屋の異臭だったり、湿気に満ちてジメジメとした悪い空気だったり、部屋中に散乱し尽くされたゴミの数々だったりと要因は幾らでもあったーーーが、元を辿ればそれら全てを生み出したのは俺自身であり、つまり俺という存在そのものが部屋を魔窟と化していたと言えるだろう。


 当時の俺は自分をそんな風には思った事はなかったけど、今こうして異世界転生を果たして、生前の自分の事をよくよく考えるようになって、うん、やっぱり俺はどうしようもない奴だっだんだなーと改めて実感できる。



 ここは鍛冶屋そんな俺の自室によく似ている気がした。何がどう似ているか、なんてはっきりとは言えないけど、雰囲気とか、雰囲気とか雰囲気とか雰囲気とか。
 要するに、この場所にはまるで得体の知れないが潜んでいる気してならないわけだ。


『嫌なとこに来ちまったな…全く』


 早くにも退散したいのが山々だが、いかんせん用を済ませないことには帰るわけにもいかない。
 ただ事件に関わっているとされる鍛冶屋の主人がいないとなると、俺に現状できる事はまずない。


 来て早々にも俺の心は挫けそうだった。
 



 
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