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第1章 『俺この異世界ベルハイムで、第二の人生を送る!』-始まりの異世界とジョーカー
3話 生きるってのも案外楽じゃねーな
しおりを挟む「まぁまぁ、あまり難しく考え過ぎないで。時間はたっぷりあるんですから、これからゆっくり考えていきましょう…ま、デスゲームで生き抜くことが出来ればですけどね?」
「最後の言葉は余計だぞ」
でも確かにアンヘルの言う通りだ。
現状俺にはどうすることはできない。混乱している今、ない頭でウジウジ考えたってどうしようもないわけで、事態が好転することはまずないわけだ。
だったら今はただこの異世界ベルハイムでの生活に慣れること、あとはそのデスゲームとやらで生き残ること、そこだけを考えるべきだろう。
折角の二度目の人生なんだ、生前どんなことして死んだかは知らねーが、俺の事だからろくな死に方はしてないだろーし…
それに、何故かは知らんが生前死んだ時にあじわった死の痛みだけはしっかりと覚えてやがる。何で消してくれなかったんだよ…いやマジで切実にそう思うよ。
『もう二度と、あんな思いはゴメンだ』
あんな痛みを知ってしまったら、口が裂けても死にたいだなんて言えねーよ。
死にたくない、絶対に死にたくない。
『生きたい』
デスゲームかなんか知らねーが、生き残るために誰かを殺さなきゃならねーのなら俺は間違いなく殺人を選ぶよ。
その件に関して誰かに後ろ指さされたって知るもんかよ。生き残る為に殺人が必要てなだけ、そうだろ?
そうしないと俺が死ぬ。またあの痛みを感じることになる。それだけは絶対に嫌だ。
だったらやる事は一つ、俺が生きる事に誰かの死が必要なのであれば俺はその事に引け目なんて感じねー、どんな手が血に染まろうが、殺して殺して殺しまくる…ただ、それだけだ。
「貴方、今、すごく良い顔してますよ」
「…そうか?因みにどんな顔なんだ?」
アンヘルは頭から人差し指を生やす仕草のままには言った。
「鬼、ですかね?」
「鬼か…」
実際に鬼を見たことはねーが、生前の知識での鬼とは人から畏怖の対象として恐れろれる化け物だ。
つまり俺はそれ程に恐い顔をしてるってわけか?
「まぁ、鬼にでもならなきゃデスゲームは生き残れない。そうだろ、アンヘル?」
「その通りです。過酷な殺しあいとなる事でしょうね」
…やっぱりか。デスゲームと聞いて生易しいとは思っちゃいなかったが、ちょっとだけ恐いな。
「…はぁ、でも俺にはどうする事もできねーからな。今こうして新しい命を与えられたことにだけは感謝することにするよ」
「その意気です、頑張って下さい!」
さて、ではこれからについてを考えることにしよう。
まずはこの世界についてもっと詳しく知る必要があるな。後は生活の基盤も作らなきゃならねーし、戦いになるってんなら武器も必要だ。イメージがいつどのタイミングで発揮されるかも分からねーわけだから、少なくとも身を守るだけの武装はしておくべきだろう。食と金と武器と…、こうして言葉にして並べてみると結構大変そうだな。
「…生きるってのも案外楽じゃねーな」
「はい、でもそれが人生というものなので」
「分かってるよ。ただこれからやる事が多すぎて何から手をつけていいかさっぱりだ。そこんとこアンヘル的にはどうしたらいいと思う?」
「そう言った事に口出しする事はデスゲームのルール上禁止されていますので、詳しくはこちらをお読み下さい」
そう言って小さな冊子を取り出したアンヘル。
俺はそれを受け取ると、冊子の表紙に目を向けた。
「なになに、『剣と魔法とデスゲーム』の説明書?」
何だこれ、まるでゲームの説明書みてーだな。
「この世界で必要な最低限の知識とデスゲームの適当なルールが記されています。後でザッとで言いので目を通しておいて下さいね。よく分からないまま死ぬのは貴方も嫌でしょう?」
違いない。ただ適当なルール、そこだけ良い加減にしろまじで。
「…まぁ、いいや。色々と有難うなアンヘル。助かったよ」
「とんでもございません!むしろ感謝したいのは私の方です!この度はデスゲームに参加して頂き誠に有難うございました!デスゲームスタッフ一同に変わりまして、私からお礼させて頂きます。では、手を出してもらってもいいですか?」
は?何で?まぁいいけど。
「ん、こうか?」
「有難うございます。では…」
アンヘルは俺の手を両手で掴むと、そのまま力強くは手を握りしめた。
これがまた超痛い。
握力の痛みではないのだが、手から伝わるはビリビリとした神経を伝う痛み。次第に強く、痺れを伴って…いやマジ洒落にならない程痛くなってきた。
「あ、アンヘル?」
「はい、なんでしょう?」
「これ何か意味あるのか?」
「もちろんです!今貴方の体に最後の仕上げとして、デスゲームに於ける貴方の役割とそのメソッドをダウンロードしております。暫しお待ちを…」
役割にメソッドだと?
また意味の分からないことを…
「くっそ…頭が超痛い…やべぇ…意識が…」
「ご安心を。次貴方が目覚めたとき、貴方はこの街『ルコンド』の郊外にある貴方専用の主屋に転送されていることでしょう。それからを貴方の異世界転生の始まりとして、デスゲームのスタートとします。後は先程申した通り説明書をお読み下さい」
何だよそれ、親切なんだか不親切なんだかはっきりしろよ。
どっちつかずが一番人を混乱させるって昔誰かが言ってたぞ…誰かはやっぱり思い出せねーけど。
あー、駄目だ…本気で意識が飛びそうだ。なんかこんなんばっかだな…
寝たり起きたり、本当忙しい世界だなここは…
意識が完全に遠のく寸前、アンヘルは囁くように、そっと言葉を残した。
『ご健闘を…』
俺はただどうすることもでぎず、薄れゆく意識の中でただ思っていた。
『生きるってのも案外楽じゃねーな…』
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