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第6話 邂逅

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 もう駄目だ。頭がどうにかなってしまいそうだ。
 これ以上、意識を保つ自信がない。
 どうしてこうなった?
 俺はただ、普通に生きたかった、ただそれだけなのに。
 
 なぁ、お前たちは、今どこにいるんだ?
 今もそっちで、仲良くやってんのか?

 いいな…いいな…
 何で俺だけ、こんな目に合わなきゃならないんだよ…

 こんな事なら、お前らを助けるんじゃなかった。
 畜生、畜生畜生畜生畜生…

◆◇◆◇

 俺は小屋の中で蠢くそいつを、ジッと見つめていた。
 そして、剣を構えては、そいつが出てくるのを待つ。

「おい、お前がエルフ族の里を襲っているのは知っている!早く出て来い!」

 返事は、なかった。
 ただ代わりに、何かがギラッと光って、俺に向け飛んでくるのが分かった。

 短剣だった。

「うわっ!?」

 俺は飛んできた短剣を、眼前すれすれのところで避けた。

 あっぶねー!?死ぬところだったぞ!?

「おい、卑怯者!そんな小細工なしに、かかってこい!」

 俺が叫んだ、すると、小屋の中のそいつは、のそり、のそりと、こちらへ近付いてきた。

 俺は後ずさり、距離をとって、そいつを待った。

 そいつが近付くにつれ、鼻につく、異様な臭気の正体に気付いた。

 この臭気は、そいつから漂ってきていた。

 つまり、そいつは臭い!風呂に入ってないに違いない!

 全く、何で俺がそんな不潔な奴と、闘わなければならない?

「ま、約束だからな。サクッとやっつけて、リリーナの元に帰るんだッ!」

 俺は決意を固め、そいつが月光の光に照らされるまでを待つ。

 今夜は満月だ。外に出れば、そいつの醜く汚い顔が、よく見えることだろう。

 さぁ、出てこい!その正体を見せてみろ!

 そして、遂にそいつは姿を露わにした。

 漆黒の鎧を着た、白髪のそいつを、俺は見てしまった。

「……は?」

 俺は、見てしまった。

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