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第2章 宣戦布告、デイトナ戦線
第7話 マントの決意
しおりを挟む[ゾロマンティス軍]の全てを壊滅させたーーそんな全てが片付いた時だ。地上へと降りてきたアヴァロンの背からルーシェが顔を覗かせていた。
「お疲れ様ですデイトナ様」
「どうも」
「それにしても…これはやり過ぎでは?」
「そう?」
「ええ、少しぐらい生かしておけば労働力程度にはなったかと」
「まぁいいじゃないか。この程度の代わりなんてそこら中にいる…それよりも、マント、どうだ僕の力は?」
そう尋ねて、アヴァロンの背に跨ったままの呆然とするマントを見た。
「し、信じられない…まさか一人で第6兵団を潰すだなんて…」
「夢じゃないよマント、これが真実だ。そして僕はこの力を持ってして、アヴァロンをこの世界の覇者として君臨させる。この世界を征服するんだ。な、アヴァロン?」
「………ハイ…」
「…世界を…征服…」
「おかしいかい?」
「いや、違うんだ。僕以外にも、そんな馬鹿げた夢を持つ奴がこの世界にいただなんて…驚いているんだよ」
「…成る程、そういうことか」
マントはもしも僕がこうして50年の時を遡らなければ、本当に世界を征服してしまっていたことだろう。実際に僕それを見てきた。そして嫌と成る程にマントの存在に苦しめられてきたのだ。
ただ、それもなかったことなるだろう。
僕という存在が現れたことによって、本来この世界が辿る筈だった未来は大きく変化するに違いないのだから。
「マント、お前はやはり僕の仲間となるんだ。それがお前に残された世界を征服できる唯一方法だよ」
といっても、僕に加担する形での世界征服になるわけだが、そんなことマント自身がよく理解しているだろう。
「……もしも、断った場合は?」
「さっきも言っただろ…即刻殺す。お前の危険性については僕がよく知っているからね。今はまだいいが、後の世になってお前は必ず僕の脅威となる」
「……そうかい…」
「うん、そう決まってる」
「……」
「あと、もしもお前が協力してくれるんだったらさ、そこで伸びてるトカゲ野郎も生かしてやってもーー
「誰がトカゲ野郎だ馬鹿野郎が!!」
そんな叫び声を上げて、アヴァロンの背から勢いよく飛び降りた彼はーーアブゾーブである。
「ああ、起きたのかトカゲ」
「さっきからトカゲトカゲってお前なぁ!!」
「あ、アブゾーブ様!!お身体の方は大丈夫ですか!!」
「おうマント…すまねぇ、ヘマ踏んじまったな…」
と、アブゾーブは申し訳なさそうにはマントに頭を下げた。
やけに塩らしいアブゾーブに、マントは戸惑いを隠せない様子である。
「あた、頭を上げてください!違います!アブゾーブ様は何も悪くはありません!!全てはこのマントの見立てが甘かったばっかりに…」
「ちげぇよマント…ただ俺が弱かっただけさ」
「アブゾーブ様…そんなことはーー」
と、マントが何かを言いかけた瞬間のこと、
「ーーーーねぇあなた達、勝手に傷を舐め合わないでくれる。目障りなんだけど?」
マントの言葉を遮断するようにルーシェは吐き捨てて言った。
「て、てめぇ!!」
アブゾーブはルーシェの姿を見るや否や、頭に血管を浮かしては怒りを露わにしていた。
「あら、トカゲのお兄さん。どうしてそんなに怒ってるのかしら?」
「ふざけんな!!俺の尻尾をよくもこんなにしやがったなぁッ!!」
アブゾーブはプッツリとは見事に斬り落とされた尻尾の断面を指差して叫んだ。
「別にいいじゃない。どうせ生えてくるんだし」
「そういう問題じゃねぇ!!俺はな、今回の尻尾はかなり気に入ってたんだよ!!なのに…お前はそんな俺の尻尾を…」
「なによその今回のって。トカゲって毎回尻尾切られる度にそんなこと気にしてるわけ?」
「ったりめーだ馬鹿!!尻尾はトカゲにとって命の次に大切だぁーーーって、俺はトカゲじゃねぇ!!リザードマン!!」
「はぁ、どっちでもいいけどほんっとうっさいわね。デイトナ様、やっぱりこいつ始末しちゃっていいですか?」
ルーシェは呆れた顔を浮かべた。
「まぁ落ち着けルーシェ。あとアブゾーブ、お前も少し落ち着いてはくれないか?今は大事な交渉の最中なんだ…」
僕は再びマントへと視線を移して尋ねた。
「ではマント、今度こそお前の答えを聞かせてほしい。僕につくか、それともこのままアブゾーブと共に始末されるか…選べ」
「ぼ、僕は…」
マントは口を閉ざした。そうして目線をアブゾーブへ、
「マント、お前が決めろ。俺の事は気にすんな…別にここで死のうが構わねーからよ。むしろお前と共に死ねるとなりゃあ本望だ。その時はまた冥界でも地獄でも堕ちて、一緒に暴れようや、ガハハハ」
アブゾーブは楽しそうに笑っていた。
そんなアブゾーブにルーシェは囁いた。
「あなた、本当に馬鹿ね」
「うっせ!!」
「……」
マントは口を閉じたまま、なれどアブゾーブを見つめる目が引き締るのがわかった。どうやら決意は固まったらしい。
「さぁ、これで最後だ…聞かせろマント、お前の答えを…」
「僕はーーー
その時見たマントはかつてのーーいつか僕の研究を奪いにきたマントを彷彿とさせる程に、鋭い眼光を放っていた。
「あなた様に服従致します…デイトナ王子」
それがマントの答えだった。
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