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第一部 決闘大会編

百二十二話

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 俺は、さっそくの決意を宣言出来て、爽快な気分だった。
 しかも、イノリも「待ってるね」って言ってくれてさ。それがまた、嬉しい。
 頑張って、はやく期待に応えなきゃな!


「うおおおお!」

 俺は、マットの上を円を描くように走り回った。
 相対するげんそくん4号との距離を、用心深くはかる。

「我が身に宿る風の元素よ、我が身をはやてのごとくせよ!」

 キンッ! と頭の中で音が鳴り、体が軽くなる。

――よし、まず詠唱出来たぞ!

 これで、闘う準備はバンタンだ。俺は4号に真っすぐ突っ込む。

「たあっ!」

 拳を振りかぶり、白いボディにパンチを食らわせた。
 ポカ、とまともに入る。
 が、4号もすぐに、反撃のキックをかましてくる。俺は間一髪、飛びのいた。
 4号の顔面には、「風・土」が点灯してる。「風」だけじゃ、打撃が弱いのかもしれない。――なら。
 俺はマットを強く蹴った。

「おりゃああ!」

 一発でダメなら、連発すりゃいいんだ!
 懐に飛び込んで、ポカスカと連続パンチを浴びせる。 
 4号は俺の拳を受け、右に左に踊った。――ついに、4号の顔面が「水」に切り替わる。「水」は回復の元素。つまり、4号は守勢だ。
 このままラッシュで、押し込むぜ!

「吉村! 元素を転換し、とどめをさせ!」

 横から、葛城先生が激を飛ばす。
 元素を転換?
 えっと、風より強そうなやつ。拳を振りかぶりながら、俺は詠じた。

「えっと、えーと。我が身に宿る火の元素よ、躍動せよっ」

 元素が切り替わり、全身がカッと熱る。
 火の玉みてえになった俺は、4号に向かって腕をブウンとしならせる。

 ドカッ!
 
 思いきり頬をぶっ叩くと、4号は膝から崩れ落ちる。
 顔の点灯が消えて、のっぺらぼうになった。

「そこまで!」

 葛城先生が、手を上げた。
 俺は、ファイティングポーズを解く。汗が大量に流れ出て、浅く息が弾んだ。
 先生は、呆れ顔で言う。

「吉村、「火」でも否とは言わんが。あの場合は「土」が妥当だぞ」
「あっ! そっか……」

 確かに、火は水より弱いか……。ぽりぽり頬をかくと、葛城先生は腰に手を当てた。

「元素の選択は、バトルの基本。まずバトルでは、相手の狙いを封じることが肝心なんだ。――今一度、四元素がどのようにかみ合い、作用しているか復習するように」
「う、うす!」
「だが、今日の足運びは良かった。前回からよく学んだな」
「うす! ありがとうございます」

 ピョン、と頭を下げて、マットから下りた。葛城先生の指示で、次の生徒が入れ替わりに上がって行く。
 やったぞ、イノリ! 
 いやぁ、前回は詠唱出来なくてえらい目みたからな。
 どうしたら、詠じれるんかなって思って、いろいろ考えてみたんだ! 上手くいってよかった~!
 ぎゅっと拳を握ると、ピリッと肌を刺す気配。
 気がつくと、どうも空気がおかしい。
 じろじろと見られている気がする。

「ええと、何?」

 近くの奴にこそっと尋ねると、顔を背けられる。

「……うるさいな」
「えっ」
「思い上がってんじゃねーよ」

 憎々し気に吐き捨てられて、あっけにとられる。
 なんか、だいぶ刺々しくねーか。前からこんなんだっけ? それとも、テスト前でイライラMAXだとか……。
 結局、妙な空気はチャイムが鳴るまで続いた。

「では、お疲れ。各自、今日の反省点を意識し、鍛錬を積んでくること」
「ありがとうございました!」

 がやがやする下足場で靴を履いていると、肩を強く掴まれる。
 振り向けば、鳶尾が立っていた。

「来い」
「へっ?」

 ぶっきらぼうに言うが早いか、俺の腕を掴んで歩き出した。

「ちょ、なんだよ?!」
「うるさいな。黙ってついて来いよ」
「あたた、お前オーボーすぎ!」

 鳶尾は、ぎゃいぎゃいいう俺を無視して、倉庫裏に引きずり込んだ。

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