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第4話 枕営業/本番(2)

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「あぁ……」

 すぐにでも入りたそうなペニスの先端が、俺のアナルに触れて……って、え?
 うそ、ちょっと……!

「あ! コンドーム……つけてもらえますか? あの、明日、仕事なんです」

 いきなり生はマナー違反! でも、それを強く指摘できる立場ではないから、「仕事があるのにお腹を下しでもしたらまずい」でお願いするしかない。
 別に妊娠はしないし掻き出せばいいんだけど……遊びまくっているモテ男のペニスを生で入れたくはない。

「あー……俺、付けるの苦手なんだよね」

 一応サイドボードの引き出しに手を伸ばして、コンドームの箱を取り出してはくれるけど……えぇー……生がいいとか最低だな。
 他の人とは生でしてる感じ? それならますますつけてほしいんだけど。

「だから、付けてくれない?」

 コンドームの箱が俺の顔の横に置かれる。
 あぁ、そういうことか。
 俺にさせるための言い訳か。
 慣れているモテ男のずるいテクニックだな。

「わかりました。じゃあ、苦手なのに頑張ってくれるから……俺も頑張ります」

 やられっぱなしは悔しいので、コンドームの封を開けた後……唇で精液溜まりの部分を挟む。

「え?」
「んっ……ぐ……」

 コンドーム越しに、先端にキスをするように唇を付けて……唇と手を使って硬くなったものにコンドームを被せる。

「うっ……わ」

 根元まで下ろしたころには、少し大きめのそこが更に大きくなった。
 あまり触っていないのに完勃ち? サービスしたつもりではあるけど、反応がよすぎるな。
 しかも、間近で見るとこのペニス、色があまり擦れていないキレイなピンク……あれ?

「ありがとう、アオくん」
「わっ!?」

 不思議に思いながらも顔を上げると、すぐにベッドに押し倒された。

「でも、そんなことされたら俺、理性持たないよ。ひどくしちゃったらごめんね?」

 確かに下半身は入れたくてたまらないって感じだけど、俺の頬を優しく撫でる余裕はあるのに?
 あぁ、これはそうか。
 途中で好き勝手に腰を振ることの予防線? 自分勝手な独りよがりのセックスするタイプ?
 まぁ、何でもいいけどプライドを傷つけないようにだけしてあげよう。

「いいですよ。伊月さんが激しく俺を求めてくれるの、嬉しくなっちゃうと思うので」

 遠慮なくどうぞ。 
 目の前の伊月さん……その後ろのドラマの主演に向けて大きく手を広げてほほ笑んだ。

「きて、伊月さん」
「アオくん……はぁ……いくよ」

 コンドーム越しに先端が俺のアナルに触れて……上半身を倒しながら伊月さんが俺の中に入ってくる。

「ん……っ、ん!」

 大きいから苦しいけど……まぁ、慣れているから痛いほどではない。
 あ、もう括れまで入って来た。これで楽に……ん?

「ん……ぐ……え?」
「はぁ……アオくん……中、すごい……」

 あれ?
 まだ、中に進むんだ?
 ちょっと馴染ませるとか……しない?

「う、く……はぁ……っ!」

 息を吐いて圧迫感を逃がすけど、時々腰を引いてはくれるけど……

「あ、あぁん!」

 前立腺で少し大げさに喘いでみるけど……伊月さんの腰が止まらない。

「あ、い、いつき、さん……?」
「はぁ、アオくん……はぁ……」

 いきなり全部入れる気?
 いいけど……正直、もう少し前立腺とか刺激して、体の力が抜けてからにして欲しいのに……

「う、ぐ……っ!」

 あ、奥当たった。
 あまり馴染んでない時に結腸を押し上げられても……苦しい。遠くの方に、微かに快感もある気がするけど、苦しさが勝つ。

「はぁ……もう少し……!」
「う、うぅ、ぐ……」

 結腸に当たってから数センチ。ぐっと腰が密着するまで押し付けられた。
 押し開かれる鈍い痛み。内臓を押し上げられる気持ち悪さ。
 まずいな。

 この人、大きいうえに独りよがり。つまり……下手かも。

「ふぅ……全部入ったよ」
「あ、本当、だ……伊月さんの大きいから、すごく……入っているの、わかります」

 相手を喜ばせるようなことを言ったつもりだけど、苦しくて顔も声も引き攣った……のに、伊月さんは蕩けそうな笑顔になる。
 え? なに? 苦しそうな顔に悦び感じる人?

「うん。俺、アオくんの中に入っているね。嬉しいなぁ。本当に嬉しい」

 嬉しそう、楽しそうでなによりだけど……なんだろう。
 目元は前髪で半分隠れているのに、満面の笑みを浮かべていることがよくわかる。
 声も弾みすぎ。
 この異様な喜びかた、なに?
 俺が戸惑っていると、伊月さんの笑顔が今日一番近くなった。

「大好きな子で童貞卒業できるなんて、夢みたいだよ」
「は?」

 なんて言った?
 童貞?
 卒業?
 え?

「うそ……?」

 イケメンのお金持ちで、三十歳で、ここまでの駆け引きだって堂々として余裕があって……

「本当だよ。ごめんね? アオくんとの初エッチだから気持ちよくしてあげたいんだけど、テクも余裕もない童貞で」

 枕営業だから、必ずしも俺を気持ちよくしなくていいんだけど……俺が接待する立場で、気持ちよく楽しくなってもらうためだから、いいんだけど……
 でも……

「アオくんに気持ちよくなってもらう方法は、これから覚えていくから許して。だって、俺とアオくんは両想いの特別な関係だからね?」
「あ……?」
「アオくんの恋人になれるなんて夢みたいだな」

 両想い? 恋人?
 好きって言われて、俺も好きとは言ったけど……
 親密な関係とは言ったけど……恋人?
 違う! それは違う!
 どうしよう。これ、なんかやばくないか?
 やばい。
 絶対にやばい。
 逃げ、抜いて、逃げないと……!

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