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第9章 その後の世界 / 新しい仲間と遊びの話
デート(8)
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「魔王さん……」
「ん?」
魔王さんの腕の中に納まったまま、片手を魔王さんの頬に伸ばす。
「折角、俺のことを褒めてくれたのに、がっかりさせちゃうかもしれないけど……俺、そこまで考えていなかった」
「え?」
「俺、普通に……魔王さんが俺のために考えてくれたら嬉しいなって、魔王さんとのデート楽しみだなって、思っていただけ」
「……そう、なのか? なんの理由もなく、俺に決めさせてくれたのか?」
「だって、好きな人が俺のためにいっぱい考えてくれるの嬉しいから。魔王さんの頭の中が俺とのデートのことでいっぱいになったら嬉しいから……それだけ。全然賢い理由じゃないよ。ごめん」
「……なっ! そ、そんな……」
魔王さんの声が震える、呆れちゃった?
それとも……
「そんなかわいい理由だったのか!?」
あ、よかった。すっごく嬉しそう!
「そうか……まさか、そんな……そんなかわいい考え方があるなんて……!」
「賢くなくてごめんね?」
「なにを言っているんだ! 賢いライトも大好きだが、かわいいライトの方が大好きだ! いや、ライトは全部好きだ!」
「ふふっ、よかったぁ」
魔王さんが俺を抱きしめる腕の力を強くする。
俺も、魔王さんの首筋に手をまわして嬉しそうな魔王さんの顔を見上げた。
「でも、楽しいデートの時でも国民のことに結び付けられる魔王さんは素敵な王様だね。これからももっともっといい国になっていきそう」
「ライトにそう言ってもらえると嬉しいが……そうか……もっと頭の中をライトでいっぱいにすべきだった。ライトとのデートなのに、ライトの飼い主で伴侶であるだけでなく、王としての考えがどうしても出てきてしまった。ライト、今日は楽しめたか?」
「うん。楽しいデートだった。魔王さんと何をするのも、どこに行くのも楽しい」
首に回した指先に触れる黒髪を梳くと、魔王さんがほっとしたのがわかった。
「俺のこと大好きなんだな~って感じられる魔王さんの王様以外の顔が見られたし、かっこよくて尊敬できる王様らしい顔も見られた。今日しか見られない魔王さんをたくさん見られたからいいデートだったよ」
暗いから見えにくいかもしれないけどできるだけ優しく笑顔を向けると、魔王さんも俺の頭をそっと撫でてくれた。
「ライト……俺はどんな時でも王であることをやめられない。ライトを優先できない時もある。だが……」
魔王さんの顔が、視線がぐっと近くなった。
「ライトを誰よりも愛していることだけは信じてほしい」
そんなの、疑うわけがないのにね。
魔王さんのこと信じている。
でも……改めて言われるの、いいな。
「うん。大丈夫、王様しているときの魔王さんも『かっこいい! 大好き』ってなるから安心して。それに、こんなにたくさんいる国民のみんなの中の誰よりも俺か……嬉しいなぁ」
チラっと夜景に視線を向ける。
この光、城下町だけで一〇〇万人はいるんじゃなかったかな?
国全体だと何千万人?
他の国の国民も入れたら、何億人?
その中で一番だよね?
「魔王さん、俺も世界一……この世界と、元の世界と、全部あわせた世界一、大好きだよ」
「ライト……」
あぁ、魔王さんが俺のこと好きって顔してる。
俺も、しているはず。
だって、今、すっごく魔王さんのこと好きだなぁって思う。
好きだなぁ。
好きな人と気持ちを伝えあって、抱きしめあって、幸せだなぁ……幸せだけど……好きだから……もっと。
「……魔王さん」
首筋にまわしている腕に少し力を込めて、目を閉じる。
わかるよね?
「ライト……」
魔王さんが大きな体を屈めて……唇を重ねてくれた。
「んっ……」
重なるだけで一度離れて……でも、すぐにまた、角度が変わって重なって……
「……ふっ……」
唇を食むように動かすと、魔王さんの唇も同じように動いて、お互いの唇の感触を確かめあって、でもそれだけじゃ足りなくて、舌も、いつの間にか絡めあっていて……
あぁ、どうしよう。
ここ、外なのに。
薄く開けた視界の端に、すごくキレイな夜景が広がっているのに。
こんなロマンチックな場所で、こんな深いキス……
「ん、ふふっ、こんなロマンチックな場所でキスするの……いいね」
「特別な感じはするが、屋外だと慣れない」
そう言いながら、魔王さんの唇はまだ俺の頬や額にキスをする。
「……ライト、もっと触れたい」
「俺も」
俺を抱きしめる魔王さんの腕は、大人しくぎゅっとしているだけでなく、俺の腰や背中を撫でて……もっと、決定的なことをしたいのに我慢しているのがバレバレだ。
求められているなぁ……いいなぁ。
顔が緩んじゃうな。
「ここで、しちゃう?」
「こ、ここで、か? いや、それは……それも、刺激的だが……」
こんなに我慢できなさそうなのに、魔王さんは慌てて俺の両肩を掴んで距離を取る。
たぶん魔王さん、屋外でなんてしたことがないんだろうな。
ベッド以外でしたのも、俺とが初めてみたいだったし。
「ライトのことは、いつでも大事に抱きたい」
「ふふっ。そっかぁ」
照れと、俺への愛情がいっぱいの表情で俺の顔を覗き込んで……
「んっ……」
もう一回、優しくキスをしてくれてから、魔王さんの体が離れた。
「城に戻ろう」
「うん」
「ん?」
魔王さんの腕の中に納まったまま、片手を魔王さんの頬に伸ばす。
「折角、俺のことを褒めてくれたのに、がっかりさせちゃうかもしれないけど……俺、そこまで考えていなかった」
「え?」
「俺、普通に……魔王さんが俺のために考えてくれたら嬉しいなって、魔王さんとのデート楽しみだなって、思っていただけ」
「……そう、なのか? なんの理由もなく、俺に決めさせてくれたのか?」
「だって、好きな人が俺のためにいっぱい考えてくれるの嬉しいから。魔王さんの頭の中が俺とのデートのことでいっぱいになったら嬉しいから……それだけ。全然賢い理由じゃないよ。ごめん」
「……なっ! そ、そんな……」
魔王さんの声が震える、呆れちゃった?
それとも……
「そんなかわいい理由だったのか!?」
あ、よかった。すっごく嬉しそう!
「そうか……まさか、そんな……そんなかわいい考え方があるなんて……!」
「賢くなくてごめんね?」
「なにを言っているんだ! 賢いライトも大好きだが、かわいいライトの方が大好きだ! いや、ライトは全部好きだ!」
「ふふっ、よかったぁ」
魔王さんが俺を抱きしめる腕の力を強くする。
俺も、魔王さんの首筋に手をまわして嬉しそうな魔王さんの顔を見上げた。
「でも、楽しいデートの時でも国民のことに結び付けられる魔王さんは素敵な王様だね。これからももっともっといい国になっていきそう」
「ライトにそう言ってもらえると嬉しいが……そうか……もっと頭の中をライトでいっぱいにすべきだった。ライトとのデートなのに、ライトの飼い主で伴侶であるだけでなく、王としての考えがどうしても出てきてしまった。ライト、今日は楽しめたか?」
「うん。楽しいデートだった。魔王さんと何をするのも、どこに行くのも楽しい」
首に回した指先に触れる黒髪を梳くと、魔王さんがほっとしたのがわかった。
「俺のこと大好きなんだな~って感じられる魔王さんの王様以外の顔が見られたし、かっこよくて尊敬できる王様らしい顔も見られた。今日しか見られない魔王さんをたくさん見られたからいいデートだったよ」
暗いから見えにくいかもしれないけどできるだけ優しく笑顔を向けると、魔王さんも俺の頭をそっと撫でてくれた。
「ライト……俺はどんな時でも王であることをやめられない。ライトを優先できない時もある。だが……」
魔王さんの顔が、視線がぐっと近くなった。
「ライトを誰よりも愛していることだけは信じてほしい」
そんなの、疑うわけがないのにね。
魔王さんのこと信じている。
でも……改めて言われるの、いいな。
「うん。大丈夫、王様しているときの魔王さんも『かっこいい! 大好き』ってなるから安心して。それに、こんなにたくさんいる国民のみんなの中の誰よりも俺か……嬉しいなぁ」
チラっと夜景に視線を向ける。
この光、城下町だけで一〇〇万人はいるんじゃなかったかな?
国全体だと何千万人?
他の国の国民も入れたら、何億人?
その中で一番だよね?
「魔王さん、俺も世界一……この世界と、元の世界と、全部あわせた世界一、大好きだよ」
「ライト……」
あぁ、魔王さんが俺のこと好きって顔してる。
俺も、しているはず。
だって、今、すっごく魔王さんのこと好きだなぁって思う。
好きだなぁ。
好きな人と気持ちを伝えあって、抱きしめあって、幸せだなぁ……幸せだけど……好きだから……もっと。
「……魔王さん」
首筋にまわしている腕に少し力を込めて、目を閉じる。
わかるよね?
「ライト……」
魔王さんが大きな体を屈めて……唇を重ねてくれた。
「んっ……」
重なるだけで一度離れて……でも、すぐにまた、角度が変わって重なって……
「……ふっ……」
唇を食むように動かすと、魔王さんの唇も同じように動いて、お互いの唇の感触を確かめあって、でもそれだけじゃ足りなくて、舌も、いつの間にか絡めあっていて……
あぁ、どうしよう。
ここ、外なのに。
薄く開けた視界の端に、すごくキレイな夜景が広がっているのに。
こんなロマンチックな場所で、こんな深いキス……
「ん、ふふっ、こんなロマンチックな場所でキスするの……いいね」
「特別な感じはするが、屋外だと慣れない」
そう言いながら、魔王さんの唇はまだ俺の頬や額にキスをする。
「……ライト、もっと触れたい」
「俺も」
俺を抱きしめる魔王さんの腕は、大人しくぎゅっとしているだけでなく、俺の腰や背中を撫でて……もっと、決定的なことをしたいのに我慢しているのがバレバレだ。
求められているなぁ……いいなぁ。
顔が緩んじゃうな。
「ここで、しちゃう?」
「こ、ここで、か? いや、それは……それも、刺激的だが……」
こんなに我慢できなさそうなのに、魔王さんは慌てて俺の両肩を掴んで距離を取る。
たぶん魔王さん、屋外でなんてしたことがないんだろうな。
ベッド以外でしたのも、俺とが初めてみたいだったし。
「ライトのことは、いつでも大事に抱きたい」
「ふふっ。そっかぁ」
照れと、俺への愛情がいっぱいの表情で俺の顔を覗き込んで……
「んっ……」
もう一回、優しくキスをしてくれてから、魔王さんの体が離れた。
「城に戻ろう」
「うん」
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