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第9章 その後の世界 / 新しい仲間と遊びの話
デート(7)
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なんとなく、「馬車が進んでいるのが坂道だな」と思いながら三〇分ほど揺られて、地面の音が変わって更に五分ほど。
「ライト様、どうぞ」
馬車が停まって、ローズウェルさんが扉を開けてくれた。
「ありがとう……え? うわ!」
馬車を降りてすぐ、魔王さんがどこに連れてきてくれたのかわかった。
正確な場所はわからないんだけど、狙いというか……
「魔王さん! すごい! すごくキレイ!」
目の前に広がっていたのは、いわゆる「夜景」だった。
美術館を出た時に薄暗かった空はもう真っ暗で、「夜」と言ってもいい時間。当然あたりは真っ暗で……いつもお城にいるから気がつかなかったな。この国の城下町、大きな建物が少なくて、小さな家や店が密集しているからか、明かりの数が多い。すごく明るい。
街灯や店の看板を照らす明かりもあるのかな?
元の世界の「一〇〇万ドルの夜景」なんかには負けるかもしれないけど……いや、光量がやや少ないだけで結構いい勝負?
とにかくキレイな夜景を見下ろしていた。
この世界でこんなにもキレイな景色が見られるとは思わなかった!
「喜んでもらえてよかった。だが、あまり柵に近づかないでくれ。もたれるためのものではないんだ」
「うん、わかった」
二メートルほど先に鉄製の柵があるから近づきかけたけど、俺の腕は馬車から降りてきた魔王さんの腕に絡めておいた。
そういえば、ここどこだろう?
んー……少し遠いけど斜め左にお城が見えるということは、城下町の西側にある岩山の上の要塞?
魔王さんが「城下町と城に結界を貼るための小規模な要塞だ。町と城、街道の見張り台や有事の際の拠点も兼ねている」って言っていた、四角くて装飾の少ない建物だと思う。下から見ると小さそうだったけど、登ってみると、元の世界のちょっと郊外にあるようなショッピングモールくらい大きいな。屋上に馬車で上がれるのも、それっぽい。
……暗くて全体はよくわからないんだけど。
「少し、二人きりにしてくれ」
「はい。一階で待機しております」
魔王さんがローズウェルさんや騎士団長さんたちに声をかけて……広い屋上には俺と魔王さんだけになった。
魔王さん、俺と仲がいいところを他人に見せびらかすの、好きなのに。
「……ずっと、ライトにこの景色を見せたかった」
「うん。キレイな景色で感動した。魔王さんもこの景色好き?」
夜景を嫌いな人も少なそうだけど、こんなデートの定番みたいな場所を魔王さんが選んでくれたの、嬉しいな。
魔王さんと「デートしている」って気分が高まる。
「あぁ、この明かりの一つ一つが大事な国民の営みだと思うと、とても好きな景色だ」
「へぇ……」
なるほど。魔王さんにとってはただ視覚的にキレイなだけじゃないんだ。
愛すべき国民の明かりで、魔王さんが守って、発展させている国の明かりということか。
「さすが王様だね。その考え方、ますますこの景色が好きになる」
「ライトのおかげだ」
「え?」
なんで俺?
夜景から魔王さんの方へ視線を向けると、魔王さんもじっと、穏やかな笑顔で俺のことをみつめてくれていた。
「ライトが、引きこもりがちな俺を外に連れ出してくれて、普通の国民のように過ごす機会をくれたからだ。改めて我が国の魅力を知り、国民の笑顔を見ることで、この景色が一層好きになれた」
「魔王さん……」
今日のデートのこと、そんな風に感じていたんだ? えらいなぁ……
「きっとライトのことだ。俺に『デートプランを考える』という楽しい課題をくれたのは、そうやって国民目線でこの町の魅力や営みを再確認しろということでもあったのだろう?」
ん?
「折角ライトの好きな場所に行ける機会なのに、俺に決めさせるなんてなぜだろうと思ったのだが、考えているうちにお前の狙いに気がついたんだ」
えーっと……
「ライトはなんて思慮深いのだと」
どうしよう。
魔王さん、すっごく深読みして、勝手に俺のこと評価してくれているけど、そんなこと全く考えていなかった。
ただの「魔王さんの頭の中を俺でいっぱいにしてもらおう! 行先のわからないデートって楽しみ」くらいのノリだった。
「最終的には、ライトを楽しませたい、ライトと共に行きたい、という考えで場所を選びはしたが、ここに至るまでにこの町の、この国の魅力をたくさん思い出せた。ありがとう、ライト」
「……」
魔王さんが優しく体を抱きしめてくれる。
私服だから、いつもの詰襟の軍服風のときよりも距離が近い気がしてドキドキするけど……どうしようかな。
このまま素直に「実はそうなんだ。そこに自力で気がつく魔王さん天才!」なんて返しておく?
いい方向に勘違いしてくれているならお得だよね。
ホストやヒモの俺ならノっておくと思う。
でもなぁ……
俺と魔王さん、これから何百年も一緒にいるんだよ?
背伸びしすぎは、よくないか。
「ライト様、どうぞ」
馬車が停まって、ローズウェルさんが扉を開けてくれた。
「ありがとう……え? うわ!」
馬車を降りてすぐ、魔王さんがどこに連れてきてくれたのかわかった。
正確な場所はわからないんだけど、狙いというか……
「魔王さん! すごい! すごくキレイ!」
目の前に広がっていたのは、いわゆる「夜景」だった。
美術館を出た時に薄暗かった空はもう真っ暗で、「夜」と言ってもいい時間。当然あたりは真っ暗で……いつもお城にいるから気がつかなかったな。この国の城下町、大きな建物が少なくて、小さな家や店が密集しているからか、明かりの数が多い。すごく明るい。
街灯や店の看板を照らす明かりもあるのかな?
元の世界の「一〇〇万ドルの夜景」なんかには負けるかもしれないけど……いや、光量がやや少ないだけで結構いい勝負?
とにかくキレイな夜景を見下ろしていた。
この世界でこんなにもキレイな景色が見られるとは思わなかった!
「喜んでもらえてよかった。だが、あまり柵に近づかないでくれ。もたれるためのものではないんだ」
「うん、わかった」
二メートルほど先に鉄製の柵があるから近づきかけたけど、俺の腕は馬車から降りてきた魔王さんの腕に絡めておいた。
そういえば、ここどこだろう?
んー……少し遠いけど斜め左にお城が見えるということは、城下町の西側にある岩山の上の要塞?
魔王さんが「城下町と城に結界を貼るための小規模な要塞だ。町と城、街道の見張り台や有事の際の拠点も兼ねている」って言っていた、四角くて装飾の少ない建物だと思う。下から見ると小さそうだったけど、登ってみると、元の世界のちょっと郊外にあるようなショッピングモールくらい大きいな。屋上に馬車で上がれるのも、それっぽい。
……暗くて全体はよくわからないんだけど。
「少し、二人きりにしてくれ」
「はい。一階で待機しております」
魔王さんがローズウェルさんや騎士団長さんたちに声をかけて……広い屋上には俺と魔王さんだけになった。
魔王さん、俺と仲がいいところを他人に見せびらかすの、好きなのに。
「……ずっと、ライトにこの景色を見せたかった」
「うん。キレイな景色で感動した。魔王さんもこの景色好き?」
夜景を嫌いな人も少なそうだけど、こんなデートの定番みたいな場所を魔王さんが選んでくれたの、嬉しいな。
魔王さんと「デートしている」って気分が高まる。
「あぁ、この明かりの一つ一つが大事な国民の営みだと思うと、とても好きな景色だ」
「へぇ……」
なるほど。魔王さんにとってはただ視覚的にキレイなだけじゃないんだ。
愛すべき国民の明かりで、魔王さんが守って、発展させている国の明かりということか。
「さすが王様だね。その考え方、ますますこの景色が好きになる」
「ライトのおかげだ」
「え?」
なんで俺?
夜景から魔王さんの方へ視線を向けると、魔王さんもじっと、穏やかな笑顔で俺のことをみつめてくれていた。
「ライトが、引きこもりがちな俺を外に連れ出してくれて、普通の国民のように過ごす機会をくれたからだ。改めて我が国の魅力を知り、国民の笑顔を見ることで、この景色が一層好きになれた」
「魔王さん……」
今日のデートのこと、そんな風に感じていたんだ? えらいなぁ……
「きっとライトのことだ。俺に『デートプランを考える』という楽しい課題をくれたのは、そうやって国民目線でこの町の魅力や営みを再確認しろということでもあったのだろう?」
ん?
「折角ライトの好きな場所に行ける機会なのに、俺に決めさせるなんてなぜだろうと思ったのだが、考えているうちにお前の狙いに気がついたんだ」
えーっと……
「ライトはなんて思慮深いのだと」
どうしよう。
魔王さん、すっごく深読みして、勝手に俺のこと評価してくれているけど、そんなこと全く考えていなかった。
ただの「魔王さんの頭の中を俺でいっぱいにしてもらおう! 行先のわからないデートって楽しみ」くらいのノリだった。
「最終的には、ライトを楽しませたい、ライトと共に行きたい、という考えで場所を選びはしたが、ここに至るまでにこの町の、この国の魅力をたくさん思い出せた。ありがとう、ライト」
「……」
魔王さんが優しく体を抱きしめてくれる。
私服だから、いつもの詰襟の軍服風のときよりも距離が近い気がしてドキドキするけど……どうしようかな。
このまま素直に「実はそうなんだ。そこに自力で気がつく魔王さん天才!」なんて返しておく?
いい方向に勘違いしてくれているならお得だよね。
ホストやヒモの俺ならノっておくと思う。
でもなぁ……
俺と魔王さん、これから何百年も一緒にいるんだよ?
背伸びしすぎは、よくないか。
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