魔王さんのガチペット

メグル

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第9章 その後の世界 / 新しい仲間と遊びの話

お泊り会(3)

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「うーん……俺の世界のものではあるけど、俺の発明ではないし、俺は作れないし……再現する手間暇をかける気は俺にはなかったから、その労力をかけたオファちゃんの料理でいいと思うけど? 俺は恩恵にあずかっていつでも好きなだけ食べさせてもらえる約束だからラッキーだし」

 オファちゃんに気を使っているなんてことはなくて、本音。
 この世界には豚も牛もいないから、豚に近い家畜、牛に近い家畜、おそらく元の世界とそう変わらない鶏なんかから頑張ってスープを作って……なかなか上手くいかないから、飼料にこだわったり脂肪を多くつけるような飼い方を試したり、麺の方も麦を品種改良したとか……
 再現度としてはオファちゃんと一緒に食べた有名博多系豚骨ラーメンチェーンのスープの……六割くらい?
 だけど、豚骨ラーメンもいろいろあるから、これはこれで、別物として、濃厚クリーミーですっごく美味しい!
 俺の中のラーメン欲は十分満たされるレベルだし、「ライト様のおかげで知った食べ物なので」ということで、俺は好きな時に好きなだけ食べさせてもらえるし、遠慮せず食べに行っている。
 ラッキー、大満足、ありがとうとしか思わない。

「ですが……あの料理を目当てに導王の国に訪れる人も増えていますし、監修料だけでも取ればいいのに……と」

 イユリちゃんの言いたいこともわからなくはない。
 商売人的な考えならそうだと思う。
 それと俺は、俺がいる「魔王の国」とか「魔王さん」の利益になるようにすべきだもんね?
 でも……

「あの料理でオファちゃんの懐が豊かになって、人間として活躍してくれたら俺は嬉しいよ。人間の地位向上? 印象UP? そういうのに繋がるから、広い目で見れば俺も得しちゃうし」

 オファちゃん、元の世界から持ち帰ったタブレットでめちゃくちゃ勉強しているからなぁ。
 タブレットに大量の電子書籍をダウンロードして、ソーラーパネルと充電器も一緒に持たせてあげたんだけど「タブレットは数年で使えなくなるから」と注意したら中に入っている電子書籍、全部紙に書き移して、何度も何度も読んで勉強しているらしい。
 オファちゃんのリクエストで小中高校の教科書や医療系と農林水産系の本、あと、料理の本が中心なんだけど……「この本で得た知識を、この世界に当てはめてまとめなおした本を出せればと思っています。この本に書かれていることは、魔法を使わずにできることばかりなので、人間にも役に立ちますし」なんて言っていた。
 えらいよね?
 本当なら異世界から転移してきた俺が、そういうことをすべきだと思うのに。
 オファちゃん、第一印象は最悪だったのに、今は大事で尊敬できる友達の一人になっちゃったな。

「ライト様……」

 俺が大事な友達のことを思い浮かべていると……イユリちゃんはなぜか、初対面の時のように思い切り目を輝かせながら俺を見ていた。

「なに?」
「やっぱりライト様ってすごいです! すべての人間の地位向上、魔族に対する意識改革を目指し、それでいて最終的にはご自身も必ず得をする考え方、やり方、立ち回り……」

 自分や自分の周囲の人、特に魔王さんとの幸せのためにしているだけだから立派でもなんでもないんだけど……イユリちゃんが興奮した様子でまくしたてて、ソファから立ち上がり、テーブルに手をつきながら身を乗り出す。
 キラッキラの瞳が近い。

「やっぱり僕も、ライト様みたいになりたいです!」
「ふふっ、ありがとう」
 
 憧れられて、悪い気はしないな。

「僕……初めてライト様にお会いした時にいただいたアドバイスを、ずっと実践してきました」

 五年間ずっと? よかった……あの時、変に濁さずにちゃんと本気のアドバイスをしておいて。
 
「大好きな人が喜ぶ顔を想像する、そして、自分のことを好きになる……これって、飼い主であるハレアザート様を大切に思って、真心をもって接しながらも、自分自身の魅力や尊厳を忘れてはいけないということですよね?」
「うん。そう。愛されることと、自分を押し殺して消費されることはイコールじゃダメだからね。伝わっていてよかった」

 賢い子だな。
 それになんか……

「やっぱり僕、間違っていなかったんですね! この五年間、ずっとライト様を目標に頑張ってきたんです。ハレアザート様や魔族に好かれるように外見を磨いて、勉強も頑張って……ライト様のように異世界の知識がない分、この世界のことは魔族の高等学校の卒業レベルまで勉強しました! あと、折角ハレアザート様という素晴らしい商売人のもとにいるので、商売に関することは特にたくさん教えていただきました。商売人としてなら、その辺の魔族にも負けないと思います!」

 うん。いいね。
 外見も、俺に近いようできちんと自分の髪質や肌質、体形に合わせて磨いているのがよくわかるし、勉強に関しても俺の真似だけじゃない。自分の強みがわかっていていいな。

「だから僕……もうすぐ一六歳で成人を迎えたら……」

 人間の村で暮らすんじゃなくて、ミチュチュちゃんのようにギルドの職員になるのかな?
 活躍しそうだよね。手伝えることがあれば……

「魔王様のペットになりたいです!」

 ……ん?

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