魔王さんのガチペット

メグル

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番外編3 一番の●●

一番という男(5)

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「……! なんだ次王、お前も好きなんじゃないか! 俺はな、この中のモデルならユーユちゃんの体が一番好きだ」
「ぽっちゃり系人気ナンバーワンでこの本の表紙も担当しているんだから当然だろう」
「ふーん。では、お前もユーユちゃんか?」
「……顔だけで言うと、エミリフェちゃんだ。素朴な感じのかわいい子がいい。これでユーユちゃんくらい腰回りがむっちりしていれば最高だと思う」
「解るな。俺も顔だけなら……ジヌーちゃんだな。整ってキレイな子が良い。これでおっぱいがユーユちゃんのようにもう少し柔らかそうなら完璧だと思う」
「……微妙に合わないな。よかった」
「はは! そうだな! よかったな! 俺とお前ならかわいいこを取り合いにならないから喧嘩をしなくて済むな!」

 そういう意味ではなかったのだが……まぁいい。

「だが、話せるじゃないか! 今度俺の国に来た時は良い男娼を付けてやるぞ? ぽっちゃりでちょっと素朴な感じの肉も表情も柔らかいかわいい子がいるんだ」
「お前と穴兄弟になるのは嫌だが……まぁ、考えて置く」

 私の立場上、こういう話を同年代と気軽に話すなど考えたことも無かった。
 いや、同年代だとしても、普通は初対面でここまで話すものなのか?
 解らないが、目の前の一番の距離の詰め方は、正直……悪くない。
 立場が同じで、気が合うのに好みが少し違う……共感もでき、刺激にもなる。
 友だちとして、悪くない。
 いや、悪くないどころか……

「一番様、恐れながら、騎士団長はもう武器屋で次の式典用の剣の算段を付けておりますので……」
「あぁ、そうだ。そっちの用事もあるんだった」

 ん?
 騎士団長?
 ここに騎士はすでに三人もいるのに、更に連れてきているのか?
 移動用魔法陣を発動させるために、魔法石が何個必要か解っているのか?
 私たちは最低限の人数に絞ってきているのに。

「それと、一番様、またお忘れです」
「いや……それ、重いだろう?」

 ウエンダと呼ばれていた騎士が、跪いたまま一番に向けてネックレスを差し出した。
 ネックレスには、恐らく身を護るための大きな魔法石がついていた。

「身に着けて頂かないと、外出できない決まりです」
「……はぁ。お前たちのような優秀な騎士がついているんだから構わないだろう? ほら、次王にも『過保護な騎士だなぁ』と呆れられているぞ」
「いえ、次王様はきっと、『不用心な次期王だ』と呆れていらっしゃいます」

 二人とも、私をダシに使って……だが、私はどちらの言うことも思っていなかった。

「はぁ……仕方ない」

 一番はため息をつきながらネックレスを首にかけ、詰襟の内側に魔法石を入れる。
 大きいが平たく加工しているからか、服の上からでは大きさが解りにくい。
 しかし……あの大きさはどう見ても……。
 私の首にかかって、ローブの下に隠しているものよりも、大きかった。
 大きくて、不純物が少なそうで……つまり……私が身に着けているものより、桁が一つ違うほど高価であろう質の良い物だった。

「それでは次王、後のパーティーで」
「……あぁ」

 一番が屈託のない笑みで手を振り、護衛の騎士たちも恭しく頭を下げてくれる。
 なんとか笑顔を返せたと思う。

 だが……。

 チラっと、私についてくれている護衛の騎士の顔を見た。
 騎士らしい真面目な顔で敬礼をしていたが、若干……悔しそうなのか、情けないのか、唇を引き結んでいた。

 そうだな。

 悔しい。
 それに、情けない……いや、恥ずかしい、のか?

 知識としては知っていた。解っているつもりだった。

 魔王の国は国土が広く、麦が良く育つ豊かな土地で、魔法石が採掘できる場所も多い。
 豊かな土地なので人口も増える。
 食べるものも、エネルギーも、人手も多い。
 仕事も多い、余裕も多い、活気のある国。
 ……つまり、金持ちの国だ。

 導王の国だって、国民を食わしてやるだけの麦も肉もとれる。
 自然に恵まれ、絹や綿と言った織物、金をはじめとする金属や鉱物がよくとれる。
 国民は勤勉で、魔法や魔法道具に関する研究は他国よりも進んでいると思う。

 ただ……ただ、魔法石だけが……魔力系の国づくりに欠かせず、魔族の生活を豊かにする魔法石だけが……ほんのわずかしか採掘できない。
 魔王の国や山の国に比べれば、一〇〇分の一も無い。
 輸入や、国間にある複数国の共同採掘場で取れる魔法石でなんとかしのいでいるが……それを手に入れるには金がかかる。

 認めたくはなかったが……導王の国は、魔王の国に比べれば……貧しい国だった。
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