魔王さんのガチペット

メグル

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番外編2 ○○が好きなメイドと、誕生日祝いの話

困ったな……

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 魔王さんのお誕生日に、毎年一応「おめでとう」と声はかけていた。
 でも、この世界は誕生日を祝う習慣があまりないらしく、一〇年ごと……一の位が〇になった時の誕生日だけ、少ししっかりお祝いするようだった。時間の流れが違うからかな? 二〇〇〇歳以上生きるのに、毎年祝っていたら忙しいよね?
 俺の三〇歳の誕生日も、特別にパーティーをするほどではないけど、魔王さんやお城のみんな、イルズちゃんやミチュチュちゃん、人間の村の村長さん、新聞社の担当さん、導王様たちからプレゼントもらったし、国民のみんな、諸外国の人からはメッセージカードをたくさんもらった。
 魔王さんがくれたのは、「ライトも一緒に式典に出てくれることが増えただろう?」と、式典用の豪華なティアラ……ミニ王冠? そんな感じの金に赤い宝石のはまった宝飾品。
 これをくれるってことは、これからも重要なシーンで魔王さんの横にいつでも立てるんだなって思えて嬉しかった。
 お城のみんなからは、「ライト様、いつもご自身には青系より赤系が似合うとおっしゃっているので……」と言いながら、部屋のカーテンとカーペットを赤に変えてくれた。
 青系の部屋、正直気に入ってなかったんだけど、質が良いし、まだまだ使えるし、我儘言えないと思っていたから……みんなの配慮がすごく嬉しかった。
 イルズちゃんは化粧品で、ミチュチュちゃんはイユリちゃんやギルドマスターさんと連名で「そろそろ効果が切れるころだと思うので」と、俺と魔王さんお揃いのネックレス用の新しい石……ケルベロスの牙の加工品をくれた。
 他の人たちからは、いくらあっても困らないような、お酒や織物が多かった。

 ホスト時代のように賑やかなパーティーで祝ってもらう派手な誕生日ではなかったけど、プレゼントはどれも、この世界でできた新しい大切な人たちとの絆を感じるし、沢山届いたメッセージカードも、全部俺への愛を感じて嬉しかった。……全部読み終わるのに一週間以上かかったけど。
 もちろん、魔王さんやお城のみんなは俺の顔を見るたびに「お誕生日おめでとう」と言ってくれる。
 祝ってくれた人数なら、今までで一番。
 俺、愛してもらえているなぁ。生まれてきてよかったな。
 そう思える誕生日だった。

 だから、大好きな魔王さんの誕生日も、しっかり祝ってあげないと……と思った。


      ◆


「どうしよう」

 俺がこの世界にやってきて六年。
 魔王さんの六四〇歳の誕生日が近づいてきた。

「思ったより、盛大に祝うんだな……」

 ソファの背もたれにだらしないくらい凭れながら、眉間にしわを寄せつつ考える。
 魔王さんの誕生日は、祝賀会が開催されたり、俺の時よりも公的な感じで多くの献上品が届いたり、国全体でお祝いムードになるようだった。
 王様だから当然なのかもしれないけど、多分、「黒髪」って生まれてくることをすごく喜ばれる存在だからというのもあるんだと思う。

「何あげよう」

 プレゼントに何をあげるか、めちゃくちゃ迷う。
 正直、お金はある。
 新聞への日記の掲載、人間の村から無期限のペットになる時にもらった報酬、様々な商品の権利料……。
 使い切れないから「お菓子の売り上げ分の権利料は孤児院に寄付する」と言ったら「なんてお優しい! かわいい!」「その優しさに賛同いたします!」と、お菓子の売り上げが倍増しちゃったんだよね……沢山寄附できて嬉しいけど。
 とにかく、お金はあるからある程度高価なものでも買ってあげられるんだけど……。

「魔王さん、王様だからなぁ……」

 質実剛健ではあるけど、きちんと質の良い物に囲まれて生活していると思う。
 それにプラスしてアクセサリーとかあげてもいいんだろうけど……すでに俺と魔王さんはおそろいの指輪と腕時計とネックレスを肌身離さず身に着けているからなぁ。たまにつけるお揃いのブローチやタイもあるし……。
 これ以上って何? ブレスレット? イヤリング? ピアスの文化は無いらしい。

「実用品、家具、便利グッズ、仕事道具……」

 魔王さん、何が欲しい?
 生活には困っていないだろうし、仕事に関しては俺は無知だし……。
 そうなると、趣味とか嗜好品……好きなものだけど……。

「魔王さんが好きなの、どう考えても俺……」

 香ばしい焼き菓子とかバラの花も好きなの知っているけど、一番は絶対に俺。
 リリリさんにも聞いてみたけど「ライト様ですね」って即答された。

「俺をどうプレゼントするか……」

 俺そっくりのぬいぐるみや絵を渡す?
 ……写真はもう渡したし、いつも俺が一緒なのに意味ないな。
 俺がお祝いの歌とか踊りとかを披露する?
 ……アリといえばアリだけど……祝賀会にはプロの劇団が来るらしいのに? 俺、素人だよ?
 俺がなにかしてあげる券……「肩たたき券」「なんでもいうこときく券」とか?
 ……魔王さん、勿体ないって言って使わなさそう。

「やっぱり、アレしかないか……」

 リリリさんに冗談半分で言った時、めちゃくちゃ反応良かったし、この世界には無い文化みたいだし。

「かわいい格好でプレゼントは俺……うん。これだな」

 よし、魔王さんの気持ちが上がりそうな「かわいい格好」を考えるか。
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