185 / 398
第7章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話
19~21日目
しおりを挟む
魔王さんが遠征に出かけて一九日目。
やっと一点の迷いもなく「元気」と言える体調になった。
違和感もないし、しんどさもない。
「魔王さんも全快ってことだよね。よかった……」
安心だし、食欲があるからご飯が美味しいし、無理しない程度の筋トレもできたし、まだ俺の中の魔王さんの魔力の枯渇は感じないし、絶好調。
ただ……先日もそうだったけど、体の心配がなくなると……
「魔王さん……」
寂しい。
早く会いたい。
恋しい。
魔王さん……。
そんなことばかり考えてしまった。
◆
魔王さんが遠征にでかけて二〇日目。
夕方ごろに連絡が入って、魔王さんは導王様のお城を出て、明日からお仕事の続きを始めるらしい。
体調で解っていたけど、お仕事できるくらい元気なのは嬉しいし、お仕事が終われば帰って来てくれるんだから、会える日へのカウントダウンだと思うと一層嬉しい。
でも……
「魔王さん……」
寂しい。
早く会いたい。
恋しい。
魔王さん……。
昨日も同じことを想っていたけど……。
「魔王さん……魔王さん……」
なんだろう。
昨日よりも……。
もっと寂しい。
もっと早く会いたい。
もっと恋しい。
魔王さん……魔王さん……魔王さん……!
◆
魔王さんが遠征に出かけて二一日目。
もう気のせいじゃない。
朝、起きた瞬間から頭の中が魔王さんでいっぱいだった。
「魔王さん……」
身体がしんどいわけじゃないからベッドから起き上がって、毎日のルーティンはこなすんだけど……。
「魔王さん……」
食事中も。
「魔王さん……」
筋トレをしていても。
「魔王さん……」
新聞を読んでいても。
「魔王さん……」
体調の経過観察をしてもらっていても。
ずっとずっと頭の中は魔王さんでいっぱいだった。
「ライト様……もしかして……」
夕食を運んできてくれたローズウェルさんに、普段通りの笑顔を向けたつもりだったけど……どうやら態度にも出ていたらしい。
「魔王様の魔力が、枯渇して……?」
心配そうに言われた言葉で、諦めがついた。
やっぱりそうだよね。
これ、気のせいじゃない。
寂しいからだけじゃない。
そういうことだよね。
「魔王さんが恋しい……」
会いたい。
顔が見たい。
声が聴きたい。
……それ以上に、体液注がれたい。
「っ、ライト様……!」
ローズウェルさんがなぜか顔を赤くする。
「そのお顔は……っ……そんなお顔は、見せては……」
「……? なに? 俺、変な顔してる?」
魔王さんに見せられないような、変な顔してる?
だったら嫌だな……でも、表情なんて気にする余裕ない。
どんな顔か自分で解らないけど、勝手にこの顔になるのに。
「……ご主人様が恋しくて、欲しくてたまらない、最高に……その……かわいい、ペットの顔、です……」
……?
じゃあ、いいんじゃないの?
なんで?
俺、なにか悪い?
戸惑いながら首をかしげると、ローズウェルさんは唇を噛みながら上を向いてしまう。
「っ……ライト様、普段はご自身がかわいすぎる自覚をもってらっしゃるのに……!」
「……俺、今、かわいすぎ?」
「はい。私だからギリギリ会話ができていますが、他の者だとかわいすぎて『かわいい』しか言えなくなるレベルです。しかもかわいいのに、かわいそうで……でも私が助けてあげられることが無くて……正直、心臓が色々な意味で痛いです」
なんか……あれ?
ローズウェルさんの言っていることがあまり頭に入らない。
とにかく俺のせいで辛いんだよね?
「ごめん……」
「うっ……あ、あやまらないで……ください。更にかわいそうかわいい……一番お辛いのは、ライト様なのに……くっ……少々、失礼します」
ローズウェルさんが一度俺に背を向けて、何度か深呼吸をする。
「ふぅーーーー……失礼いたしました」
あ、執事らしい顔に戻ってる。
プロだな。
「ライト様、気休め程度かもしれませんが、魔王様に魔力を込めた体液を送って頂くように手配します」
いいの!?
欲しい!
……っと、一瞬思ったけど……。
「欲しいけど、いいよ。我慢する。魔王さん、ただでさえ魔力を回復したてで大きなお仕事しないといけなくて大変なのに。俺に分けなくていい」
結解張るのって魔力の消費量多いらしいし……。
俺のために魔力使って魔王さんがしんどくなるの嫌だし。
「しかし……」
「魔王さん欲しいけど、迷惑かけるの嫌。それに、俺に魔力送ってもらう分、作業が遅れて帰ってくるの遅くなったら嫌。だから……ごめん。当分俺、こんなのかもしれないけど、ごめん」
「ライト様……うっ、ぐっ、か、か、か、かわ、くぁ、いい、かわいい……! こんなに欲しがっているのに、魔王様の、心配……こんな、いじらしい、かわいい、なんてかわいい、かっわいいい……!」
ローズウェルさんがここまでなるの、珍しい。
俺、もしかして想像よりやばい?
でも……魔王さんが帰ってくる予定まであと四日くらい?
耐えるしかない。
耐えるしかないけど……早く会いたい。
会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。
やっと一点の迷いもなく「元気」と言える体調になった。
違和感もないし、しんどさもない。
「魔王さんも全快ってことだよね。よかった……」
安心だし、食欲があるからご飯が美味しいし、無理しない程度の筋トレもできたし、まだ俺の中の魔王さんの魔力の枯渇は感じないし、絶好調。
ただ……先日もそうだったけど、体の心配がなくなると……
「魔王さん……」
寂しい。
早く会いたい。
恋しい。
魔王さん……。
そんなことばかり考えてしまった。
◆
魔王さんが遠征にでかけて二〇日目。
夕方ごろに連絡が入って、魔王さんは導王様のお城を出て、明日からお仕事の続きを始めるらしい。
体調で解っていたけど、お仕事できるくらい元気なのは嬉しいし、お仕事が終われば帰って来てくれるんだから、会える日へのカウントダウンだと思うと一層嬉しい。
でも……
「魔王さん……」
寂しい。
早く会いたい。
恋しい。
魔王さん……。
昨日も同じことを想っていたけど……。
「魔王さん……魔王さん……」
なんだろう。
昨日よりも……。
もっと寂しい。
もっと早く会いたい。
もっと恋しい。
魔王さん……魔王さん……魔王さん……!
◆
魔王さんが遠征に出かけて二一日目。
もう気のせいじゃない。
朝、起きた瞬間から頭の中が魔王さんでいっぱいだった。
「魔王さん……」
身体がしんどいわけじゃないからベッドから起き上がって、毎日のルーティンはこなすんだけど……。
「魔王さん……」
食事中も。
「魔王さん……」
筋トレをしていても。
「魔王さん……」
新聞を読んでいても。
「魔王さん……」
体調の経過観察をしてもらっていても。
ずっとずっと頭の中は魔王さんでいっぱいだった。
「ライト様……もしかして……」
夕食を運んできてくれたローズウェルさんに、普段通りの笑顔を向けたつもりだったけど……どうやら態度にも出ていたらしい。
「魔王様の魔力が、枯渇して……?」
心配そうに言われた言葉で、諦めがついた。
やっぱりそうだよね。
これ、気のせいじゃない。
寂しいからだけじゃない。
そういうことだよね。
「魔王さんが恋しい……」
会いたい。
顔が見たい。
声が聴きたい。
……それ以上に、体液注がれたい。
「っ、ライト様……!」
ローズウェルさんがなぜか顔を赤くする。
「そのお顔は……っ……そんなお顔は、見せては……」
「……? なに? 俺、変な顔してる?」
魔王さんに見せられないような、変な顔してる?
だったら嫌だな……でも、表情なんて気にする余裕ない。
どんな顔か自分で解らないけど、勝手にこの顔になるのに。
「……ご主人様が恋しくて、欲しくてたまらない、最高に……その……かわいい、ペットの顔、です……」
……?
じゃあ、いいんじゃないの?
なんで?
俺、なにか悪い?
戸惑いながら首をかしげると、ローズウェルさんは唇を噛みながら上を向いてしまう。
「っ……ライト様、普段はご自身がかわいすぎる自覚をもってらっしゃるのに……!」
「……俺、今、かわいすぎ?」
「はい。私だからギリギリ会話ができていますが、他の者だとかわいすぎて『かわいい』しか言えなくなるレベルです。しかもかわいいのに、かわいそうで……でも私が助けてあげられることが無くて……正直、心臓が色々な意味で痛いです」
なんか……あれ?
ローズウェルさんの言っていることがあまり頭に入らない。
とにかく俺のせいで辛いんだよね?
「ごめん……」
「うっ……あ、あやまらないで……ください。更にかわいそうかわいい……一番お辛いのは、ライト様なのに……くっ……少々、失礼します」
ローズウェルさんが一度俺に背を向けて、何度か深呼吸をする。
「ふぅーーーー……失礼いたしました」
あ、執事らしい顔に戻ってる。
プロだな。
「ライト様、気休め程度かもしれませんが、魔王様に魔力を込めた体液を送って頂くように手配します」
いいの!?
欲しい!
……っと、一瞬思ったけど……。
「欲しいけど、いいよ。我慢する。魔王さん、ただでさえ魔力を回復したてで大きなお仕事しないといけなくて大変なのに。俺に分けなくていい」
結解張るのって魔力の消費量多いらしいし……。
俺のために魔力使って魔王さんがしんどくなるの嫌だし。
「しかし……」
「魔王さん欲しいけど、迷惑かけるの嫌。それに、俺に魔力送ってもらう分、作業が遅れて帰ってくるの遅くなったら嫌。だから……ごめん。当分俺、こんなのかもしれないけど、ごめん」
「ライト様……うっ、ぐっ、か、か、か、かわ、くぁ、いい、かわいい……! こんなに欲しがっているのに、魔王様の、心配……こんな、いじらしい、かわいい、なんてかわいい、かっわいいい……!」
ローズウェルさんがここまでなるの、珍しい。
俺、もしかして想像よりやばい?
でも……魔王さんが帰ってくる予定まであと四日くらい?
耐えるしかない。
耐えるしかないけど……早く会いたい。
会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。会いたい。
153
お気に入りに追加
3,511
あなたにおすすめの小説
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
押し付けられたのは年上の未亡人
三ノ宮 みさお
ライト文芸
結婚が王命で決められた、だが相手の女性が自分よりも年上、それだけではない未亡人と知って男は落胆した。
自分には若い恋人がいる、だが平民だ。
悩んだ末、男は妻となった女性に白い結婚をて提案する。
妻となった女性は受け入れ、彼女からもある条件を申し出る。
それは男に取っては好条件の筈だった。
婚約破棄されたけど前世が伝説の魔法使いだったので楽勝です
sai
ファンタジー
公爵令嬢であるオレリア・アールグレーンは魔力が多く魔法が得意な者が多い公爵家に産まれたが、魔法が一切使えなかった。
そんな中婚約者である第二王子に婚約破棄をされた衝撃で、前世で公爵家を興した伝説の魔法使いだったということを思い出す。
冤罪で国外追放になったけど、もしかしてこれだけ魔法が使えれば楽勝じゃない?
異世界転移したら獣人しかいなくて、レアな人間は溺愛されます。
モト
BL
犬と女の子を助ける為、車の前に飛び出した。あ、死んだ。と思ったけど、目が覚めたら異世界でした。それも、獣人ばかりの世界。人間はとてもレアらしい。
犬の獣人は人間と過ごした前世の記憶を持つ者が多くて、人間だとバレたら(貞操が)ヤバいそうです。
俺、この世界で上手くやっていけるか心配だな。
人間だとバレないように顔を隠して頑張って生きていきます!
総モテですが、一途。(ビッチではないです。)エロは予告なしに入ります。
所々シリアスもありますが、主人公は頑張ります。ご都合主義ごめんなさい。ムーンライトノベルズでも投稿しています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
ふざけんな!と最後まで読まずに投げ捨てた小説の世界に転生してしまった〜旦那様、あなたは私の夫ではありません
詩海猫
ファンタジー
こちらはリハビリ兼ねた思いつき短編の予定&完結まで書いてから投稿予定でしたがコ⚪︎ナで書ききれませんでした。
苦手なのですが出来るだけ端折って(?)早々に決着というか完結の予定です。
ヒロ回だけだと煮詰まってしまう事もあるので、気軽に突っ込みつつ楽しんでいただけたら嬉しいですm(_ _)m
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゚・*
顔をあげると、目の前にラピスラズリの髪の色と瞳をした白人男性がいた。
周囲を見まわせばここは教会のようで、大勢の人間がこちらに注目している。
見たくなかったけど自分の手にはブーケがあるし、着ているものはウエディングドレスっぽい。
脳内??が多過ぎて固まって動かない私に美形が語りかける。
「マリーローズ?」
そう呼ばれた途端、一気に脳内に情報が拡散した。
目の前の男は王女の護衛騎士、基本既婚者でまとめられている護衛騎士に、なぜ彼が入っていたかと言うと以前王女が誘拐された時、救出したのが彼だったから。
だが、外国の王族との縁談の話が上がった時に独身のしかも若い騎士がついているのはまずいと言う話になり、王命で婚約者となったのが伯爵家のマリーローズである___思い出した。
日本で私は社畜だった。
暗黒な日々の中、私の唯一の楽しみだったのは、ロマンス小説。
あらかた読み尽くしたところで、友達から勧められたのがこの『ロゼの幸福』。
「ふざけんな___!!!」
と最後まで読むことなく投げ出した、私が前世の人生最後に読んだ小説の中に、私は転生してしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる