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第6章 二人の話
第124話 退位(3)
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恐る恐る手を外すと、イルズちゃんは残念そうにため息をついている。
これ……あぁ。
そう……なんだ?
「……あ……そう、なの?」
ずっと考えないようにしていたけど、二人の話を聞いた瞬間、もしかして魔族と人間もどちらかが合わせられるんじゃないかと淡い期待はした。
だけど、その期待は……俺が甘かったようだ。
「え? あ、えっと……」
イルズちゃんはどうやら、俺がそのことを知っていると思っていたようで、珍しく焦りながら俺、そして俺の後ろへと視線を向ける。
後ろ……そうだ。
「ローズウェルさん……」
イルズちゃんの言っていることって本当? と口に出さなくてもローズウェルさんは解ってくれたようで、公の場にしては珍しく、寂しそうな笑顔で答えてくれた。
「ライト様は私や魔王様の本来の姿を見たことがありますよね? 姿を似せることができたとしても、根本的に存在が異なるんです」
「……そう……なんだ……」
なれないんだ。
なってもらえないんだ。
なーんだ。
やっぱり考えるだけ無駄じゃないか。
もう一度、意識の奥に押し込もうとした瞬間、森の王様が不思議そうに首をひねる。
「魔族が人間にと言うのは無理だろうが、人間が魔族に近づくことはできるんじゃなかったか?」
「え!? 本当!?」
そんな方法あるの!?
だったら俺……!
「魔族になることは無理だが、魔族が個人的に……」
森の王様の言葉を、身を乗り出して聞いていると……俺の後ろから上がった大きな声が言葉を遮った。
「森の王様!」
!?
ビックリした。
騎士団長さんの声だ。
ここまでずっと護衛につとめていて、必要最低限の挨拶以外は一歩引いて見守ってくれていた騎士団長さんが、急に大きな……ほぼ怒鳴り声を上げた。
「そのような非人道的なこと、魔王様の代になってからは法律で禁止しております!」
え? あ、そうか。よく解らないけど魔王さん関連?
騎士団長さんって魔王さん大好きだからついつい熱くなっちゃった?
……と思っていると、ローズウェルさんまで声を荒げる。
「現代の魔族は、昔と違って野蛮なことはしておりません! 無礼を承知で言わせて頂きます。森の王様、発言をお控えください!」
二人ともどうしちゃったの?
怒っているというか……悔しそう? ちょっと泣きそう?
えー……?
って言うか……え、これ、どっちが無礼なのか俺には判断しにくいけど、国際問題にならない? 大丈夫?
戸惑いながら後ろの二人と森の王様を見比べていると、一瞬ひるんだ森の王様の方が素直に頭を下げてくれた。
「あ……そう……だったな。すまない。私が悪かった。ただ、最近東の国では……」
森の王様が何か言いかけて、また頭を下げる。
「いや、違うな。アレを最初に禁じた魔王だから国交を持とうと思ったんだ。私の筋が通らない。今の発言は取り消す。ライト様もどうか忘れてくれ」
森の王様が俺に真摯な視線を向けた瞬間、後ろの二人もすぐに深々と頭を下げた。
「私どもも、失礼を致しました。申し訳ございません」
「森の王様の寛大なお言葉、感謝いたします」
……これで、解決?
国際問題にならない? これから大事な儀式に参加するのに……っていうか、色々気になることもこれじゃあ聞けない雰囲気だし……どうしようかな……。
「話がそれたな。実は……」
俺が戸惑っていると、森の王様はもう先ほどまでの笑顔に戻って話を続けようとしていた。
とりあえず、よかった。
よかったけど……後で必ずローズウェルさんに聞かないといけないことができてしまったな。
これ……あぁ。
そう……なんだ?
「……あ……そう、なの?」
ずっと考えないようにしていたけど、二人の話を聞いた瞬間、もしかして魔族と人間もどちらかが合わせられるんじゃないかと淡い期待はした。
だけど、その期待は……俺が甘かったようだ。
「え? あ、えっと……」
イルズちゃんはどうやら、俺がそのことを知っていると思っていたようで、珍しく焦りながら俺、そして俺の後ろへと視線を向ける。
後ろ……そうだ。
「ローズウェルさん……」
イルズちゃんの言っていることって本当? と口に出さなくてもローズウェルさんは解ってくれたようで、公の場にしては珍しく、寂しそうな笑顔で答えてくれた。
「ライト様は私や魔王様の本来の姿を見たことがありますよね? 姿を似せることができたとしても、根本的に存在が異なるんです」
「……そう……なんだ……」
なれないんだ。
なってもらえないんだ。
なーんだ。
やっぱり考えるだけ無駄じゃないか。
もう一度、意識の奥に押し込もうとした瞬間、森の王様が不思議そうに首をひねる。
「魔族が人間にと言うのは無理だろうが、人間が魔族に近づくことはできるんじゃなかったか?」
「え!? 本当!?」
そんな方法あるの!?
だったら俺……!
「魔族になることは無理だが、魔族が個人的に……」
森の王様の言葉を、身を乗り出して聞いていると……俺の後ろから上がった大きな声が言葉を遮った。
「森の王様!」
!?
ビックリした。
騎士団長さんの声だ。
ここまでずっと護衛につとめていて、必要最低限の挨拶以外は一歩引いて見守ってくれていた騎士団長さんが、急に大きな……ほぼ怒鳴り声を上げた。
「そのような非人道的なこと、魔王様の代になってからは法律で禁止しております!」
え? あ、そうか。よく解らないけど魔王さん関連?
騎士団長さんって魔王さん大好きだからついつい熱くなっちゃった?
……と思っていると、ローズウェルさんまで声を荒げる。
「現代の魔族は、昔と違って野蛮なことはしておりません! 無礼を承知で言わせて頂きます。森の王様、発言をお控えください!」
二人ともどうしちゃったの?
怒っているというか……悔しそう? ちょっと泣きそう?
えー……?
って言うか……え、これ、どっちが無礼なのか俺には判断しにくいけど、国際問題にならない? 大丈夫?
戸惑いながら後ろの二人と森の王様を見比べていると、一瞬ひるんだ森の王様の方が素直に頭を下げてくれた。
「あ……そう……だったな。すまない。私が悪かった。ただ、最近東の国では……」
森の王様が何か言いかけて、また頭を下げる。
「いや、違うな。アレを最初に禁じた魔王だから国交を持とうと思ったんだ。私の筋が通らない。今の発言は取り消す。ライト様もどうか忘れてくれ」
森の王様が俺に真摯な視線を向けた瞬間、後ろの二人もすぐに深々と頭を下げた。
「私どもも、失礼を致しました。申し訳ございません」
「森の王様の寛大なお言葉、感謝いたします」
……これで、解決?
国際問題にならない? これから大事な儀式に参加するのに……っていうか、色々気になることもこれじゃあ聞けない雰囲気だし……どうしようかな……。
「話がそれたな。実は……」
俺が戸惑っていると、森の王様はもう先ほどまでの笑顔に戻って話を続けようとしていた。
とりあえず、よかった。
よかったけど……後で必ずローズウェルさんに聞かないといけないことができてしまったな。
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