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第5章 旅の話
第115話 お土産の後日談(2)
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「俺は別に構わないけど……」
ボリッツとボリッキーの会社に怒られる? でも、許可の取りようがないしなぁ。
「ちょうど城の売店に、新しいお菓子が欲しかったんです!」
「このお城、売店なんてあったっけ?」
俺が首をかしげると、少し後ろで会話を聞いていたローズウェルさんがフォローしてくれる。
「ございますよ。外壁の一部が店になっています。中からは行けませんね」
「そうだったんだ……」
「城へ提出する書類や手続きの窓口を兼ねているので、にぎわっています。それに、魔王様御用達品として城の特製石鹸やその日の焼き立てパンを販売しているのですが、質が良い割には安いと結構人気なんです。魔王様の『国民にも良い物を知って欲しい』というご配慮ですね」
「へー……魔王さん、本当国民思いだなぁ」
観光地かと思ったけど、役所みたいな感じ?
王室御用達っていうとハードル高そうなのにね。
俺が感心している間、料理長さんもうんうんと得意げに頷いていたのに……困ったようにため息を吐く。
「しかし、ここ一〇〇年ほど、魔王様が新しくお好みになる品物や食品が無くて……国民も飽きる……とは言いませんが、定番化していて……」
「あぁ……確かに魔王さんって自分から新しい物探しに行くタイプじゃないもんね」
服は同じ形ばっかり着るし。
スキンケアはメイドさんの言う通りだし。
「そこで、ライト様にご相談です」
「俺に?」
「はい! ライト様は三年を過ぎてもこの城にずっとずっといらっしゃると伺いました! そこで、ライト様御用達、ライト様オススメ、ライト様特性のラインナップを増やしてはどうかと」
「……俺、ペットだけど?」
王族じゃないよ?
商品開発のプロでもないし……。
まぁ……元の世界でも有名なペットはグッズやカレンダー、写真集になることもあったか……。
「そこがまたいいんです! ライト様は様々なパーティーでの功績や、魔王様の心身の支えとしてご活躍されていることは国民の間でも有名です」
「え? そうなんだ?」
確かに、たまに新聞で書かれているなとは思っていたけど。
俺の存在ってそんなに認知されているんだ?
「そしてこの誰よりもかわいいルックス! 例えばですが、こちらのお菓子に『ライト様の手土産』なんて名前を付けて、箱にライト様の似顔絵を描いて販売するなどいかがでしょう!? 絶対に売れますよ!」
「え、えー……?」
俺が苦笑いになると、じっと話をきいていたローズウェルさんが口を挟む。
「それ、売れそうですね。もし発売されたら、今後の各国への手土産は全部それにしたいです」
俺の顔を手土産に?
えぇー……?
しかも、リリリさんまで……
「うちの母や妹がニコニコしながら買って、食べ終わっても箱をアクセサリー入れか裁縫道具入れにしている姿が目に浮かびます!」
「私の父の工具入れにもなりそうですね」
「自分用にも手土産にもぴったりですよね!」
お菓子の箱が裁縫道具や工具入れに再利用されるって異世界も共通なんだな……っていうか……箱に俺の顔? うーん……元の世界でも女性の顔が書かれたクッキー缶とかあったからアリか?
俺ってペットだし、犬や猫の絵のパッケージと思うと……ジャケ買いもあるのか……な?
「俺、どういうのがいいか解らないからみんなに任せるよ。でも、出来上がったら販売前に一応確認させて欲しいかな?」
「はい! もちろんです! ライト様が教えてくださった異世界風新味、ライト様御用達、ライト様監修と書かせて頂くので!」
料理長さんとローズウェルさんが頷くと、その横でリリリさんがうっとりと語り始める。
「これで人気が出たら、ライト様が愛用されている『魔王さん大好きTシャツ』や、時々差し入れされる『かわいいライトの天才パン』も売りたいですね」
「絶対に売れますね。私はライト様が時々お作りになる紙細工を国民に見てもらいたいです」
サンドイッチの名前、やっぱりそれでいくんだ……。
それに、紙細工?
折り紙のこと?
それは流石に……
「あんなの遊びだよ?」
「いえ、芸術品です。販売するとすれば高値が付きますよ」
ローズウェルさんはきっぱりと言うけど……上手い方だと思うけど……売るようなレベルじゃない。
「じゃあ……とりあえず、飾るくらいなら」
みんな、俺のことを買いかぶりすぎじゃない?
親の欲目ならぬ、飼い主……世話係の欲目だと思うよ?
自分の容姿に自信のある俺ですら、流石にそう思う。
◆
後日、城の売店にできた「お城の新しい仲間! ペットのライト様コーナー」で、お菓子を販売し、ちょっと良い紙で作った折り紙も飾られた。
お菓子は毎日完売。
折り紙は問い合わせが多く毎週数を決めて販売することになった。
どう考えても恥ずかしいんだけど……。
「ライト様、今月の売店の売り上げ、歴代一位です!」
「ライト様に権利料をお支払いして、残りで厨房の設備を新しくできます!」
「ライト様、先日隣国へのあいさつにお菓子を持って行ったところ、大変喜ばれました! ライト様のお陰で水源の権利交渉が上手くいきました!」
「ライト様、感想のお手紙やライト様のファンになったというお手紙が沢山とどいています!」
嬉しい報告が続々届く。
「……あぁ、そう」
上手くいきすぎなんだよなぁ……絶対にこれ、俺の力よりも優秀な料理長さんやローズウェルさん、お城のみんなのお陰。
でもまぁ、
「ライト様が来てくださって、良かった~!」
お城の色んな人に満面の笑みでこんなことを言われたら……。
喜ばれるって、一層好かれるって思ったら……。
悪い気は、しないな。
ボリッツとボリッキーの会社に怒られる? でも、許可の取りようがないしなぁ。
「ちょうど城の売店に、新しいお菓子が欲しかったんです!」
「このお城、売店なんてあったっけ?」
俺が首をかしげると、少し後ろで会話を聞いていたローズウェルさんがフォローしてくれる。
「ございますよ。外壁の一部が店になっています。中からは行けませんね」
「そうだったんだ……」
「城へ提出する書類や手続きの窓口を兼ねているので、にぎわっています。それに、魔王様御用達品として城の特製石鹸やその日の焼き立てパンを販売しているのですが、質が良い割には安いと結構人気なんです。魔王様の『国民にも良い物を知って欲しい』というご配慮ですね」
「へー……魔王さん、本当国民思いだなぁ」
観光地かと思ったけど、役所みたいな感じ?
王室御用達っていうとハードル高そうなのにね。
俺が感心している間、料理長さんもうんうんと得意げに頷いていたのに……困ったようにため息を吐く。
「しかし、ここ一〇〇年ほど、魔王様が新しくお好みになる品物や食品が無くて……国民も飽きる……とは言いませんが、定番化していて……」
「あぁ……確かに魔王さんって自分から新しい物探しに行くタイプじゃないもんね」
服は同じ形ばっかり着るし。
スキンケアはメイドさんの言う通りだし。
「そこで、ライト様にご相談です」
「俺に?」
「はい! ライト様は三年を過ぎてもこの城にずっとずっといらっしゃると伺いました! そこで、ライト様御用達、ライト様オススメ、ライト様特性のラインナップを増やしてはどうかと」
「……俺、ペットだけど?」
王族じゃないよ?
商品開発のプロでもないし……。
まぁ……元の世界でも有名なペットはグッズやカレンダー、写真集になることもあったか……。
「そこがまたいいんです! ライト様は様々なパーティーでの功績や、魔王様の心身の支えとしてご活躍されていることは国民の間でも有名です」
「え? そうなんだ?」
確かに、たまに新聞で書かれているなとは思っていたけど。
俺の存在ってそんなに認知されているんだ?
「そしてこの誰よりもかわいいルックス! 例えばですが、こちらのお菓子に『ライト様の手土産』なんて名前を付けて、箱にライト様の似顔絵を描いて販売するなどいかがでしょう!? 絶対に売れますよ!」
「え、えー……?」
俺が苦笑いになると、じっと話をきいていたローズウェルさんが口を挟む。
「それ、売れそうですね。もし発売されたら、今後の各国への手土産は全部それにしたいです」
俺の顔を手土産に?
えぇー……?
しかも、リリリさんまで……
「うちの母や妹がニコニコしながら買って、食べ終わっても箱をアクセサリー入れか裁縫道具入れにしている姿が目に浮かびます!」
「私の父の工具入れにもなりそうですね」
「自分用にも手土産にもぴったりですよね!」
お菓子の箱が裁縫道具や工具入れに再利用されるって異世界も共通なんだな……っていうか……箱に俺の顔? うーん……元の世界でも女性の顔が書かれたクッキー缶とかあったからアリか?
俺ってペットだし、犬や猫の絵のパッケージと思うと……ジャケ買いもあるのか……な?
「俺、どういうのがいいか解らないからみんなに任せるよ。でも、出来上がったら販売前に一応確認させて欲しいかな?」
「はい! もちろんです! ライト様が教えてくださった異世界風新味、ライト様御用達、ライト様監修と書かせて頂くので!」
料理長さんとローズウェルさんが頷くと、その横でリリリさんがうっとりと語り始める。
「これで人気が出たら、ライト様が愛用されている『魔王さん大好きTシャツ』や、時々差し入れされる『かわいいライトの天才パン』も売りたいですね」
「絶対に売れますね。私はライト様が時々お作りになる紙細工を国民に見てもらいたいです」
サンドイッチの名前、やっぱりそれでいくんだ……。
それに、紙細工?
折り紙のこと?
それは流石に……
「あんなの遊びだよ?」
「いえ、芸術品です。販売するとすれば高値が付きますよ」
ローズウェルさんはきっぱりと言うけど……上手い方だと思うけど……売るようなレベルじゃない。
「じゃあ……とりあえず、飾るくらいなら」
みんな、俺のことを買いかぶりすぎじゃない?
親の欲目ならぬ、飼い主……世話係の欲目だと思うよ?
自分の容姿に自信のある俺ですら、流石にそう思う。
◆
後日、城の売店にできた「お城の新しい仲間! ペットのライト様コーナー」で、お菓子を販売し、ちょっと良い紙で作った折り紙も飾られた。
お菓子は毎日完売。
折り紙は問い合わせが多く毎週数を決めて販売することになった。
どう考えても恥ずかしいんだけど……。
「ライト様、今月の売店の売り上げ、歴代一位です!」
「ライト様に権利料をお支払いして、残りで厨房の設備を新しくできます!」
「ライト様、先日隣国へのあいさつにお菓子を持って行ったところ、大変喜ばれました! ライト様のお陰で水源の権利交渉が上手くいきました!」
「ライト様、感想のお手紙やライト様のファンになったというお手紙が沢山とどいています!」
嬉しい報告が続々届く。
「……あぁ、そう」
上手くいきすぎなんだよなぁ……絶対にこれ、俺の力よりも優秀な料理長さんやローズウェルさん、お城のみんなのお陰。
でもまぁ、
「ライト様が来てくださって、良かった~!」
お城の色んな人に満面の笑みでこんなことを言われたら……。
喜ばれるって、一層好かれるって思ったら……。
悪い気は、しないな。
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