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第5章 旅の話
第105話 兄弟(8)
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「さすがライトくん。王族に気に入られて誘拐されるなんてネットのドラマ? 少女漫画? 本当、存在がフィクションみたいだよね」
少し狭いけど都会の一等地の高層階にある無駄に豪華な弁護士事務所に行くと、解りやすいブランドスーツに身を包んだ相変わらず一見真面目そうに見える弁護士の江田さんが出迎えてくれた。
「うん。楽しい人生送っているよ」
湾岸の景色がよく見える応接室のソファで向かい合って、スーツと同じハイブランドのカップで出されたコーヒーに少しだけ口を付ける。
あー……良い豆。
相変わらず一見真面目なのに中身も事務所も成金でチャラいなぁ……そのお陰で、お金さえ払えば何でも助けてくれるし話しやすいんだけど。
「で、外国ってどこの?」
「ちょっと遠いところ」
「言えない感じ? まぁ、王様が拉致っているなんてバレたらヤバイもんね~。でも、そうか……国交ない国なんだよね? ビザとかパスポートとかどうなってるの?」
「……そこで、相談なんだよね」
「……あぁ、なるほどね」
俺がお世話になっていたホストクラブの系列には外国人の女の子を集めたエッチな店とかもあって……この江田さんが法律的にやばそうなことは色々フォローしていた。
「こっそり海外に行くからその間の諸々を上手くやれってことね。オッケー」
江田さんは軽いノリで頷いてくれた。
話が早くて助かる。
「基本は弟にお願いするつもりだから、何かあった時の代理人程度かな?」
「あぁ、セナくんか。あの子しっかりしてるよね。ライトくんと連絡付かなくて困っているって相談されてたんだけど……諸々の委任状偽造するか死んだことにしちゃう前にライトくんが見つかってよかったよ」
セナ……ナイトの源氏名か。
最終手段は確保していたんだな……怒るべきところかもしれないけど、頼もしい弟と弁護士さんだ。
「面倒かけるけどよろしくね? ちゃんとお金は払うから」
「セナくんやライトくんみたいな美人に頼られるのは気分良いから、どんどん頼って。それに……」
にこにこしていた江田さんが、伊達眼鏡を外して……ちょっと含みのある笑顔になる。
「支払い、お金じゃなくてもいいけど?」
「……江田さん……」
江田さんが体を乗り出すと、センターテーブル越しに俺の顎に手を添える。
「ライトくんさ、ちょっと見ない間にかわいくなったね? 前までは美人って感じだったのに。いっぱいかわいがってもらっているんだ? 解っちゃったよ。いいなぁ、飼い主さん」
こうなるだろうとは思っていた。
江田さんとは、ホスト時代も、ヒモ時代も、何度か体の関係を持っている。
江田さん自体が遊び人で、「後腐れなく楽しく遊ぼう」ってノリだし、お小遣いをたくさんくれるし、当時の俺には「ちょこっと稼げるいいお客さん」だった。
セックスが丁寧で、無茶はしないし、相場よりもくれる人だし、執着しないし、江田さんに誘われて断ったこと、無かったんじゃないかな。
「日本には一人で来たんでしょ? ちゃんと内緒にするし、跡つけたりなんかしないからさ……ね?」
顎をクイっと上げた後、頬を撫でる手がいやらしい。
この手、昔は解りやすく俺を欲しがってくれている感じがして好きだったけど……。
「ごめん。もう江田さんとは……ご主人様以外とはエッチできない」
笑顔のまま両手を合わせてかわいく謝ると、江田さんは少し驚きながらソファに座りなおした。
「え~? ライトくん、そういうキャラだっけ?」
「そういうキャラじゃなかったんだけど……もうね、ご主人様とのエッチ以外で満足できない体になっちゃった」
「……デカいの? 上手いの?」
「両方だし、一晩に五回以上イかせてくれるし、イってくれるし、俺のこと大好き愛してるって一〇〇回くらい言いながらエッチしてくれる」
「ははっ、何それ! 僕には絶対できないエッチだなぁ!」
江田さんは特に気分を害した様子もなく、楽しそうに笑ってくれた。
やっぱりこの人、遊び相手、お客さんとしては最高の相手だ。
「でしょ? だからごめんね」
「わかった。じゃあ、もらうものはしっかりもらうよ」
「それはもちろん。江田さん、セックスも結構上手だったけど、弁護士としても一番信用しているから」
「え~? エッチの方が褒められたいんだけど……まぁいいか」
その後、江田さんはビジネスに徹した対応をしてくれて、お互い笑顔で事務所を出ることができた。
江田さん、本当にありがとう。
これで、今後もし……もし俺が二度とこっちに帰れなくなったとしても、ナイトに迷惑をかけるのは最小限のはず。いい意味でズルい人だから、きっと上手くやってくれる。
そして……俺、魔王さん以外とエッチしたくないんだって再確認できた。
一番楽しく遊びでエッチしていた江田さんと無理なら、もうどんな遊びも無理だと思う。
「ふふっ、俺、魔王さん一筋なんだな……」
江田さんの驚いた顔を思い浮かべて……すぐに、愛しい魔王さんの顔が浮かんだ。
少し狭いけど都会の一等地の高層階にある無駄に豪華な弁護士事務所に行くと、解りやすいブランドスーツに身を包んだ相変わらず一見真面目そうに見える弁護士の江田さんが出迎えてくれた。
「うん。楽しい人生送っているよ」
湾岸の景色がよく見える応接室のソファで向かい合って、スーツと同じハイブランドのカップで出されたコーヒーに少しだけ口を付ける。
あー……良い豆。
相変わらず一見真面目なのに中身も事務所も成金でチャラいなぁ……そのお陰で、お金さえ払えば何でも助けてくれるし話しやすいんだけど。
「で、外国ってどこの?」
「ちょっと遠いところ」
「言えない感じ? まぁ、王様が拉致っているなんてバレたらヤバイもんね~。でも、そうか……国交ない国なんだよね? ビザとかパスポートとかどうなってるの?」
「……そこで、相談なんだよね」
「……あぁ、なるほどね」
俺がお世話になっていたホストクラブの系列には外国人の女の子を集めたエッチな店とかもあって……この江田さんが法律的にやばそうなことは色々フォローしていた。
「こっそり海外に行くからその間の諸々を上手くやれってことね。オッケー」
江田さんは軽いノリで頷いてくれた。
話が早くて助かる。
「基本は弟にお願いするつもりだから、何かあった時の代理人程度かな?」
「あぁ、セナくんか。あの子しっかりしてるよね。ライトくんと連絡付かなくて困っているって相談されてたんだけど……諸々の委任状偽造するか死んだことにしちゃう前にライトくんが見つかってよかったよ」
セナ……ナイトの源氏名か。
最終手段は確保していたんだな……怒るべきところかもしれないけど、頼もしい弟と弁護士さんだ。
「面倒かけるけどよろしくね? ちゃんとお金は払うから」
「セナくんやライトくんみたいな美人に頼られるのは気分良いから、どんどん頼って。それに……」
にこにこしていた江田さんが、伊達眼鏡を外して……ちょっと含みのある笑顔になる。
「支払い、お金じゃなくてもいいけど?」
「……江田さん……」
江田さんが体を乗り出すと、センターテーブル越しに俺の顎に手を添える。
「ライトくんさ、ちょっと見ない間にかわいくなったね? 前までは美人って感じだったのに。いっぱいかわいがってもらっているんだ? 解っちゃったよ。いいなぁ、飼い主さん」
こうなるだろうとは思っていた。
江田さんとは、ホスト時代も、ヒモ時代も、何度か体の関係を持っている。
江田さん自体が遊び人で、「後腐れなく楽しく遊ぼう」ってノリだし、お小遣いをたくさんくれるし、当時の俺には「ちょこっと稼げるいいお客さん」だった。
セックスが丁寧で、無茶はしないし、相場よりもくれる人だし、執着しないし、江田さんに誘われて断ったこと、無かったんじゃないかな。
「日本には一人で来たんでしょ? ちゃんと内緒にするし、跡つけたりなんかしないからさ……ね?」
顎をクイっと上げた後、頬を撫でる手がいやらしい。
この手、昔は解りやすく俺を欲しがってくれている感じがして好きだったけど……。
「ごめん。もう江田さんとは……ご主人様以外とはエッチできない」
笑顔のまま両手を合わせてかわいく謝ると、江田さんは少し驚きながらソファに座りなおした。
「え~? ライトくん、そういうキャラだっけ?」
「そういうキャラじゃなかったんだけど……もうね、ご主人様とのエッチ以外で満足できない体になっちゃった」
「……デカいの? 上手いの?」
「両方だし、一晩に五回以上イかせてくれるし、イってくれるし、俺のこと大好き愛してるって一〇〇回くらい言いながらエッチしてくれる」
「ははっ、何それ! 僕には絶対できないエッチだなぁ!」
江田さんは特に気分を害した様子もなく、楽しそうに笑ってくれた。
やっぱりこの人、遊び相手、お客さんとしては最高の相手だ。
「でしょ? だからごめんね」
「わかった。じゃあ、もらうものはしっかりもらうよ」
「それはもちろん。江田さん、セックスも結構上手だったけど、弁護士としても一番信用しているから」
「え~? エッチの方が褒められたいんだけど……まぁいいか」
その後、江田さんはビジネスに徹した対応をしてくれて、お互い笑顔で事務所を出ることができた。
江田さん、本当にありがとう。
これで、今後もし……もし俺が二度とこっちに帰れなくなったとしても、ナイトに迷惑をかけるのは最小限のはず。いい意味でズルい人だから、きっと上手くやってくれる。
そして……俺、魔王さん以外とエッチしたくないんだって再確認できた。
一番楽しく遊びでエッチしていた江田さんと無理なら、もうどんな遊びも無理だと思う。
「ふふっ、俺、魔王さん一筋なんだな……」
江田さんの驚いた顔を思い浮かべて……すぐに、愛しい魔王さんの顔が浮かんだ。
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