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第4章 日常と過去とこれからの話
第78話 契約変更
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魔王さんに「ずっとそばにいて欲しい」と言ってもらってから三日後、ローズウェルさんやファイさん、ドーラルさん、騎士団長さん、他にもお城の人が何人かと、髪の色を変えた時に立ち会ってくれたエンラキさん、更に人間の村の村長さんにも立ち会ってもらって、ペット契約書の変更手続きをした。
魔王さんと最初に会った謁見の間で、王座の前に置かれたテーブルの上でサインをし直す。
……内容的には婚姻届けを記入するような感覚に近いはずなんだけど、厳かな雰囲気と見守る人たちの真剣な視線が、国の重要書類にサインしている気分だ。
「……これで契約変更、完了だ」
魔王さんがペンを置くと同時にほっとしたのが解る。
ちょっと文字を書き換えてサインをするだけのことだったけど……これで、期限の「三年」は無期限になった。
再度変更するには、俺と魔王さん、二人の承諾が必要だ。一方的には破棄できない。
……やっぱり婚姻届けっぽいな。
「おめでとうございます、魔王様!」
「おめでとうございます、ライト様!」
周りが祝ってくれるのもそれっぽい。
あ、ついでに……。
「今までよりもお城のみんなと仲良くできるようになったから。どうぞよろしくね」
期限の変更と共に、「お城の敷地内は自由に移動できる」ことになった。
さすがに何十年も部屋の中だけはちょっとね……。
「こちらこそ、よろしくお願い致します!」
「ぜひ私共のお部屋にも遊びに来てください!」
お城の人たちも俺が三年ではなくこれからずっといることをとても喜んでくれた。
よかった。魔王さんに好かれるのが一番だけど、毎日顔を合わせるお城の人たちにもやっぱり好かれたいよね。
そして……
「ライト様、ありがとうございます! 誠に、誠にありがとうございます!」
村長さんが深々と……床に膝をついて頭を下げる。
「大げさだよ。村長さんも色々考えてくれているし……これからも困ったときは相談させてね?」
「もちろんです!」
村長さんとは昨日、魔王さんも交えて話をしている。
最初は何度も何度も謝られた。
村長さんたちとしては、魔王さんへの感謝の気持ちを表すためにペットを献上していたのに、自分たちが力不足だったこと。俺一人に重役を任せてしまうこと。「情けない」と泣きながら謝ってくれた。
謝られても困るから、それよりも感謝して欲しいって言うと、その後一〇〇回くらいお礼を言われたけど。
あと、俺がいる間は村からペットを献上しなくて良い分税金を払わせて欲しいとか、俺に当初言っていた報酬を払わせてもらうとか。そういう話も。
税金はともかく、報酬をもらうことは、ビジネスっぽくなって魔王さん嫌がるかなと思ったんだけど……。
「ライトにはもらう権利がある。もらえるものはもらっておいたほうがいい。何かやりたいことができるかもしれないだろう? もちろん、その時には俺もいくらでも援助をするが……ライトも自分の資産がある方が気が楽じゃないか?」
「……じゃあ、お言葉に甘えようかな」
魔王さん、ちゃんと俺を個人として尊重してくれているんだって解って嬉しかった。
俺のここでやりたいことの一番は魔王さんと愛し合うことだけど、それ以外に……いや、もっと魔王さんと二人で楽しく暮らすためにやりたいことが見つかるかもしれない。
だって、俺と魔王さんの時間はこれからたっぷりあるんだから。
「魔王さん、これからいっぱい楽しく過ごそうね」
「あぁ」
みんなの前で魔王さんの頬にキスをすると、自然と周りから拍手が沸き起こった。
俺も魔王さんも普段着だし、祝いの歌や披露宴も指輪の交換も何もないけど……なんか、やっぱり結婚式みたいだな。
俺、こんな生き方だから結婚式には一生縁が無いだろうなって諦めと憧れがあるんだけど……。
「……」
まだ止まない拍手の中、ちょっとだけでも憧れが体験できたみたいで嬉しかった。
魔王さんと最初に会った謁見の間で、王座の前に置かれたテーブルの上でサインをし直す。
……内容的には婚姻届けを記入するような感覚に近いはずなんだけど、厳かな雰囲気と見守る人たちの真剣な視線が、国の重要書類にサインしている気分だ。
「……これで契約変更、完了だ」
魔王さんがペンを置くと同時にほっとしたのが解る。
ちょっと文字を書き換えてサインをするだけのことだったけど……これで、期限の「三年」は無期限になった。
再度変更するには、俺と魔王さん、二人の承諾が必要だ。一方的には破棄できない。
……やっぱり婚姻届けっぽいな。
「おめでとうございます、魔王様!」
「おめでとうございます、ライト様!」
周りが祝ってくれるのもそれっぽい。
あ、ついでに……。
「今までよりもお城のみんなと仲良くできるようになったから。どうぞよろしくね」
期限の変更と共に、「お城の敷地内は自由に移動できる」ことになった。
さすがに何十年も部屋の中だけはちょっとね……。
「こちらこそ、よろしくお願い致します!」
「ぜひ私共のお部屋にも遊びに来てください!」
お城の人たちも俺が三年ではなくこれからずっといることをとても喜んでくれた。
よかった。魔王さんに好かれるのが一番だけど、毎日顔を合わせるお城の人たちにもやっぱり好かれたいよね。
そして……
「ライト様、ありがとうございます! 誠に、誠にありがとうございます!」
村長さんが深々と……床に膝をついて頭を下げる。
「大げさだよ。村長さんも色々考えてくれているし……これからも困ったときは相談させてね?」
「もちろんです!」
村長さんとは昨日、魔王さんも交えて話をしている。
最初は何度も何度も謝られた。
村長さんたちとしては、魔王さんへの感謝の気持ちを表すためにペットを献上していたのに、自分たちが力不足だったこと。俺一人に重役を任せてしまうこと。「情けない」と泣きながら謝ってくれた。
謝られても困るから、それよりも感謝して欲しいって言うと、その後一〇〇回くらいお礼を言われたけど。
あと、俺がいる間は村からペットを献上しなくて良い分税金を払わせて欲しいとか、俺に当初言っていた報酬を払わせてもらうとか。そういう話も。
税金はともかく、報酬をもらうことは、ビジネスっぽくなって魔王さん嫌がるかなと思ったんだけど……。
「ライトにはもらう権利がある。もらえるものはもらっておいたほうがいい。何かやりたいことができるかもしれないだろう? もちろん、その時には俺もいくらでも援助をするが……ライトも自分の資産がある方が気が楽じゃないか?」
「……じゃあ、お言葉に甘えようかな」
魔王さん、ちゃんと俺を個人として尊重してくれているんだって解って嬉しかった。
俺のここでやりたいことの一番は魔王さんと愛し合うことだけど、それ以外に……いや、もっと魔王さんと二人で楽しく暮らすためにやりたいことが見つかるかもしれない。
だって、俺と魔王さんの時間はこれからたっぷりあるんだから。
「魔王さん、これからいっぱい楽しく過ごそうね」
「あぁ」
みんなの前で魔王さんの頬にキスをすると、自然と周りから拍手が沸き起こった。
俺も魔王さんも普段着だし、祝いの歌や披露宴も指輪の交換も何もないけど……なんか、やっぱり結婚式みたいだな。
俺、こんな生き方だから結婚式には一生縁が無いだろうなって諦めと憧れがあるんだけど……。
「……」
まだ止まない拍手の中、ちょっとだけでも憧れが体験できたみたいで嬉しかった。
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