35 / 58
第35話 ピロートーク
しおりを挟む
ショッピングモールから帰った、ヒート一週間前の夜。
「ミチくん、大丈夫?」
「はい……アキヤさん、良かったですか?」
「あぁ。すごく良かったよ」
コンドームの処理を終えたアキヤさんが、優しく俺の体を抱きしめてくれる。
今日は横を向いて片足をアキヤさんの肩にかける体位で、結合は深かったけど体が少し離れていたから、改めて肌が触れ合うのが気持ちいいし、フェロモンもしっかり感じてほっとする。
「もう中イキも上手にできるようになったね。ミチくん天才だね」
「ん……アキヤさんも、どの体位でもできるようになって、すごいです」
今日まで何度もセックスをした。
未経験から始めた俺も、今ではもう自分の感じる場所がちゃんとわかるし、結腸で感じることも中イキすることも一回のセックスで五回くらいイくこともできるようになった。前や後ろ、上や下、色々な体位のセックスも経験して、それぞれの体位での楽しみ方も練習した。
……後ろからの体位は、アキヤさんの方が俺の項のフェロモンを感じすぎて、興奮しすぎて、慣れるまでちょっと大変だったけど……それももう、アキヤさんは上手くできるようになった。
「来週、楽しみだね」
「はい。ヒートが楽しみなんて……俺、初めてです」
ヒートは苦しいものとしか思っていなかったけど、きちんと準備をして運命の相手と迎えるヒートは、今まで感じていた不安や嫌悪感は微塵もない。
「俺も楽しみだよ。ミチくんのヒートに合わせて巣ごもりするのも……番になるのも……楽しみだけど……」
「……? アキヤさん?」
アキヤさんが俺を抱きしめる腕の力を強くする。
俺を求めてくれているんだなと思うけど……なぜか顔はちょっと不安そうだ。
「ねぇミチくん。本当に俺が番で大丈夫?」
「……え?」
アキヤさんの不安そうな顔と、自信なさげな言葉にドキっとした。
「ミチくんみたいなオメガの中のオメガって感じの素敵な子に、俺なんか……ミチくんなら、もっとレベルの高いアルファだって捕まえられると思うのに……」
「アキヤさん……」
いつも優しく俺への愛情を向けてくれるアキヤさんが、こんなに自信のない、不安そうな態度をとるのは珍しい。
でも、俺、これ知ってる。
「アキヤさん……もしかして番ブルー?」
「……え? え? ……あ、あー……そうか。そういうのあるんだっけ? でも、番ブルーとか関係なく、客観的に考えて俺ってミチくんに釣り合ってないというか……」
うん。
すっごい既視感。
番ブルーはオメガが特になりやすいけど、アルファでなる人も珍しくはないんだよね……。
「ふ、ふふっ」
「ミチくん……?」
思わず笑ってしまうと、アキヤさんは益々不安な顔をする。
あぁ、ごめんなさい。そうじゃないんです。
「アキヤさん。俺も少し前に、友達に『俺ってアキヤさんみたいな素敵な人に釣り合わない』って言っていました」
「は? どこが? 俺の方が……あ、でも……番ブルーってそういうことか」
「そうなんです。俺も友達に『番ブルーだよ』って指摘されて、気付いたんです。それと……」
番ブルーと自覚してから、考え方に気を付けたり、番ブルーについてたくさん調べた。
大切な友人たちのアドバイスを生かすためにも。
それで、すごく素敵なことを知ったんだ。
「アキヤさん知っています? 番ブルーになりやすい人の特長」
「特長? えっと……相手に対して劣等感があるとか、格差があるとか……だっけ?」
「はい。それもあるんですけど、最近の研究ではそれ以上に……」
アキヤさんのまだ不安そうな顔に両手を添える。
ちょっと情けない感じのこの顔もュンと来るけど、やっぱり俺はアキヤさんの笑顔が好きだから……。
「相手のことが好きなほど、なりやすいらしいですよ」
「好きなほど……?」
「はい。好きすぎて、相手の幸せを願い過ぎて、なっちゃうんだってバース医の研究結果が最近出たんです」
「じゃあ……」
アキヤさんの不安そうで強張った顔が少し緩んだ。
「はい。俺、番ブルーになっちゃうくらいアキヤさんが大好きです」
「ミチくん……」
「アキヤさんも、番ブルーになってしまうくらい俺が好きなんですね? 嬉しい」
「あ……」
「俺、アキヤさんと一緒にいるのが幸せです。だから、俺の番はアキヤさん以外考えられません。アキヤさんが良いです」
「あ……あ、あぁ。俺も!」
俺の言葉にアキヤさんの顔が一気に笑顔になった。
すごいなぁ。
アルファらしいアルファなのに、俺の言葉一つで、不安にも笑顔にもなっちゃうんだ。
なんかもう……愛しくてたまらない。
「ふふっ。アキヤさん」
「ん、ミチくん」
俺から軽いキスをすると、アキヤさんからは軽いキスを三回も返された。
来週はいよいよヒート。
そして番契約。
俺もアキヤさんも、もう不安はない。
「ミチくん、大丈夫?」
「はい……アキヤさん、良かったですか?」
「あぁ。すごく良かったよ」
コンドームの処理を終えたアキヤさんが、優しく俺の体を抱きしめてくれる。
今日は横を向いて片足をアキヤさんの肩にかける体位で、結合は深かったけど体が少し離れていたから、改めて肌が触れ合うのが気持ちいいし、フェロモンもしっかり感じてほっとする。
「もう中イキも上手にできるようになったね。ミチくん天才だね」
「ん……アキヤさんも、どの体位でもできるようになって、すごいです」
今日まで何度もセックスをした。
未経験から始めた俺も、今ではもう自分の感じる場所がちゃんとわかるし、結腸で感じることも中イキすることも一回のセックスで五回くらいイくこともできるようになった。前や後ろ、上や下、色々な体位のセックスも経験して、それぞれの体位での楽しみ方も練習した。
……後ろからの体位は、アキヤさんの方が俺の項のフェロモンを感じすぎて、興奮しすぎて、慣れるまでちょっと大変だったけど……それももう、アキヤさんは上手くできるようになった。
「来週、楽しみだね」
「はい。ヒートが楽しみなんて……俺、初めてです」
ヒートは苦しいものとしか思っていなかったけど、きちんと準備をして運命の相手と迎えるヒートは、今まで感じていた不安や嫌悪感は微塵もない。
「俺も楽しみだよ。ミチくんのヒートに合わせて巣ごもりするのも……番になるのも……楽しみだけど……」
「……? アキヤさん?」
アキヤさんが俺を抱きしめる腕の力を強くする。
俺を求めてくれているんだなと思うけど……なぜか顔はちょっと不安そうだ。
「ねぇミチくん。本当に俺が番で大丈夫?」
「……え?」
アキヤさんの不安そうな顔と、自信なさげな言葉にドキっとした。
「ミチくんみたいなオメガの中のオメガって感じの素敵な子に、俺なんか……ミチくんなら、もっとレベルの高いアルファだって捕まえられると思うのに……」
「アキヤさん……」
いつも優しく俺への愛情を向けてくれるアキヤさんが、こんなに自信のない、不安そうな態度をとるのは珍しい。
でも、俺、これ知ってる。
「アキヤさん……もしかして番ブルー?」
「……え? え? ……あ、あー……そうか。そういうのあるんだっけ? でも、番ブルーとか関係なく、客観的に考えて俺ってミチくんに釣り合ってないというか……」
うん。
すっごい既視感。
番ブルーはオメガが特になりやすいけど、アルファでなる人も珍しくはないんだよね……。
「ふ、ふふっ」
「ミチくん……?」
思わず笑ってしまうと、アキヤさんは益々不安な顔をする。
あぁ、ごめんなさい。そうじゃないんです。
「アキヤさん。俺も少し前に、友達に『俺ってアキヤさんみたいな素敵な人に釣り合わない』って言っていました」
「は? どこが? 俺の方が……あ、でも……番ブルーってそういうことか」
「そうなんです。俺も友達に『番ブルーだよ』って指摘されて、気付いたんです。それと……」
番ブルーと自覚してから、考え方に気を付けたり、番ブルーについてたくさん調べた。
大切な友人たちのアドバイスを生かすためにも。
それで、すごく素敵なことを知ったんだ。
「アキヤさん知っています? 番ブルーになりやすい人の特長」
「特長? えっと……相手に対して劣等感があるとか、格差があるとか……だっけ?」
「はい。それもあるんですけど、最近の研究ではそれ以上に……」
アキヤさんのまだ不安そうな顔に両手を添える。
ちょっと情けない感じのこの顔もュンと来るけど、やっぱり俺はアキヤさんの笑顔が好きだから……。
「相手のことが好きなほど、なりやすいらしいですよ」
「好きなほど……?」
「はい。好きすぎて、相手の幸せを願い過ぎて、なっちゃうんだってバース医の研究結果が最近出たんです」
「じゃあ……」
アキヤさんの不安そうで強張った顔が少し緩んだ。
「はい。俺、番ブルーになっちゃうくらいアキヤさんが大好きです」
「ミチくん……」
「アキヤさんも、番ブルーになってしまうくらい俺が好きなんですね? 嬉しい」
「あ……」
「俺、アキヤさんと一緒にいるのが幸せです。だから、俺の番はアキヤさん以外考えられません。アキヤさんが良いです」
「あ……あ、あぁ。俺も!」
俺の言葉にアキヤさんの顔が一気に笑顔になった。
すごいなぁ。
アルファらしいアルファなのに、俺の言葉一つで、不安にも笑顔にもなっちゃうんだ。
なんかもう……愛しくてたまらない。
「ふふっ。アキヤさん」
「ん、ミチくん」
俺から軽いキスをすると、アキヤさんからは軽いキスを三回も返された。
来週はいよいよヒート。
そして番契約。
俺もアキヤさんも、もう不安はない。
141
お気に入りに追加
1,913
あなたにおすすめの小説
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
二人の公爵令嬢 どうやら愛されるのはひとりだけのようです
矢野りと
恋愛
ある日、マーコック公爵家の屋敷から一歳になったばかりの娘の姿が忽然と消えた。
それから十六年後、リディアは自分が公爵令嬢だと知る。
本当の家族と感動の再会を果たし、温かく迎え入れられたリディア。
しかし、公爵家には自分と同じ年齢、同じ髪の色、同じ瞳の子がすでにいた。その子はリディアの身代わりとして縁戚から引き取られた養女だった。
『シャロンと申します、お姉様』
彼女が口にしたのは、両親が生まれたばかりのリディアに贈ったはずの名だった。
家族の愛情も本当の名前も婚約者も、すでにその子のものだと気づくのに時間は掛からなかった。
自分の居場所を見つけられず、葛藤するリディア。
『……今更見つかるなんて……』
ある晩、母である公爵夫人の本音を聞いてしまい、リディアは家族と距離を置こうと決意する。
これ以上、傷つくのは嫌だから……。
けれども、公爵家を出たリディアを家族はそっとしておいてはくれず……。
――どうして誘拐されたのか、誰にひとりだけ愛されるのか。それぞれの事情が絡み合っていく。
◇家族との関係に悩みながらも、自分らしく生きようと奮闘するリディア。そんな彼女が自分の居場所を見つけるお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※作品の内容が合わない時は、そっと閉じていただければ幸いです(_ _)
※感想欄のネタバレ配慮はありません。
※執筆中は余裕がないため、感想への返信はお礼のみになっておりますm(_ _;)m
俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~
アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。
これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。
※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。
初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。
投稿頻度は亀並です。
噂好きのローレッタ
水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。
ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。
※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです)
※小説家になろうにも掲載しています
◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました
(旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる