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好機は思いのほか早くやって来た。
いや、これが好機になるかどうかは分からないか。
すべては私次第なのだから。
ゴゴォォォ!!
さあ、扉が開かれた。
勝負だ!
今度は闇雲に体当たりするだけじゃないぞ。
しっかりとバケモノの弱点を狙ってやる。
弱点は、そう。
ある程度目星を付けてあるんだ。
頭部にある平板な角。
あれこそがバケモノの弱点のはず。
前回の攻防で僅かに角を庇う仕草をとったのを、はっきりと見たのだからな。
バケモノが入ってきた!
今回は5つ首!
「っ!?」
異形を目にして、また体が震え始めている。
けど、大丈夫。
これなら十分動ける。
気持ちも負けていない。
いける!
5つ首はゆっくりと室内を横切り、新参の2人の前に。
「えっ! えっ?」
「なっ?」
2人は5つ首を目にして言葉を失っている。
おそらく、今初めて異形の姿を直視したのだろう。
この2人が標的なのか?
なら、襲い掛かる時を狙って角を打ってやる!
と、5つ首は2人の令嬢を無視するように通り過ぎてしまった。
「メローネ、こちらに来る!」
「はい、ククミス様はお下がりください」
「……うむ」
バケモノの標的はグリーン家の2人だ。
よし、後ろから攻撃するぞ。
ここだぁ!
「何!?」
避けられた。
そして、そのまま信じられない速さで、空を飛ぶような速度でグリーン家の2人に襲い掛かり。
「あっ!」
ククミス嬢を庇ったメローネ嬢を絡め捕ってしまった。
あの凶悪な5つ首で。
「メローネ!」
「ク、クミス様……どうか、ご無事、で……」
さらに速度を上げた5つ首が扉に向かい。
「メローネぇぇ!!」
メローネ嬢とともに扉の外へ。
去って行った。
「メローネ……。私の代わりに……」
「……」
「……」
「……」
私はまた……。
何もできなかった。
メローネ嬢が連れ去られた後。
残されたククミス嬢、ナナ嬢、新参令嬢の2人は口を開くこともなく。
ただ、床に座りこんでいるだけ。
私も……。
これまでで最悪の空気が室内を満たしていく。
寒さなど忘れてしまうほどの居心地の悪さ。
ほんと、どうしようもない。
この極限の状況下で、メローネ嬢の存在がいかに大きかったことか。
失って初めて気づくとはこのことだ。
「……」
いつも笑顔をたたえ、優しく気遣ってくれたメローネ嬢。
彼女はもうここにはいない。
いないだけじゃない。
おそらくは、命も……。
そんな最悪の想像ばかりが頭の中に何度も浮かんでくる。
「はぁぁ……」
彼女を護れなかった。
助けることができなかった。
本当に情けない。
無力な自分が嫌になってしまう。
「……」
エージェントでありながら何もできなかった私と同様。
メローネ嬢に庇ってもらう形で生き残ったククミス嬢の落ち込み様も酷い。
最前までの凛とした雰囲気を完全に失っている。
「メローネ……」
「……」
「メローネ……」
「……」
うわごとのように何度も呟く彼女の思いが通じたのか。
信じられない奇跡が起こったのは、この直後のことだった。
何と、メローネ嬢が戻って来たのだ!!
「ああ、メローネ! 本当に! 本当に生きているのね!」
「ぅぅ……はい、ククミス様」
ただし、体に大きな怪我を負っている。
見るも無残な酷い傷だ。
5つ首か2つ首の仕業に違いない。
いや、これが好機になるかどうかは分からないか。
すべては私次第なのだから。
ゴゴォォォ!!
さあ、扉が開かれた。
勝負だ!
今度は闇雲に体当たりするだけじゃないぞ。
しっかりとバケモノの弱点を狙ってやる。
弱点は、そう。
ある程度目星を付けてあるんだ。
頭部にある平板な角。
あれこそがバケモノの弱点のはず。
前回の攻防で僅かに角を庇う仕草をとったのを、はっきりと見たのだからな。
バケモノが入ってきた!
今回は5つ首!
「っ!?」
異形を目にして、また体が震え始めている。
けど、大丈夫。
これなら十分動ける。
気持ちも負けていない。
いける!
5つ首はゆっくりと室内を横切り、新参の2人の前に。
「えっ! えっ?」
「なっ?」
2人は5つ首を目にして言葉を失っている。
おそらく、今初めて異形の姿を直視したのだろう。
この2人が標的なのか?
なら、襲い掛かる時を狙って角を打ってやる!
と、5つ首は2人の令嬢を無視するように通り過ぎてしまった。
「メローネ、こちらに来る!」
「はい、ククミス様はお下がりください」
「……うむ」
バケモノの標的はグリーン家の2人だ。
よし、後ろから攻撃するぞ。
ここだぁ!
「何!?」
避けられた。
そして、そのまま信じられない速さで、空を飛ぶような速度でグリーン家の2人に襲い掛かり。
「あっ!」
ククミス嬢を庇ったメローネ嬢を絡め捕ってしまった。
あの凶悪な5つ首で。
「メローネ!」
「ク、クミス様……どうか、ご無事、で……」
さらに速度を上げた5つ首が扉に向かい。
「メローネぇぇ!!」
メローネ嬢とともに扉の外へ。
去って行った。
「メローネ……。私の代わりに……」
「……」
「……」
「……」
私はまた……。
何もできなかった。
メローネ嬢が連れ去られた後。
残されたククミス嬢、ナナ嬢、新参令嬢の2人は口を開くこともなく。
ただ、床に座りこんでいるだけ。
私も……。
これまでで最悪の空気が室内を満たしていく。
寒さなど忘れてしまうほどの居心地の悪さ。
ほんと、どうしようもない。
この極限の状況下で、メローネ嬢の存在がいかに大きかったことか。
失って初めて気づくとはこのことだ。
「……」
いつも笑顔をたたえ、優しく気遣ってくれたメローネ嬢。
彼女はもうここにはいない。
いないだけじゃない。
おそらくは、命も……。
そんな最悪の想像ばかりが頭の中に何度も浮かんでくる。
「はぁぁ……」
彼女を護れなかった。
助けることができなかった。
本当に情けない。
無力な自分が嫌になってしまう。
「……」
エージェントでありながら何もできなかった私と同様。
メローネ嬢に庇ってもらう形で生き残ったククミス嬢の落ち込み様も酷い。
最前までの凛とした雰囲気を完全に失っている。
「メローネ……」
「……」
「メローネ……」
「……」
うわごとのように何度も呟く彼女の思いが通じたのか。
信じられない奇跡が起こったのは、この直後のことだった。
何と、メローネ嬢が戻って来たのだ!!
「ああ、メローネ! 本当に! 本当に生きているのね!」
「ぅぅ……はい、ククミス様」
ただし、体に大きな怪我を負っている。
見るも無残な酷い傷だ。
5つ首か2つ首の仕業に違いない。
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