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第11章

衛兵

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「こいつぁ、本格的にマズいぜ」

 ピイィィィィ!!

 ジンクの声をかき消すように響き渡る警笛。
 鋭く伸びる無機質な高音が、事態の深刻さを告げてくる。

 俺の腕の中では、もがいていたギリオンも嘘のように動きを止め。

「コーキ」

 振り向いた目の中には、滅多に見せない動揺さえ感じ取れる。
 そういう状況だ。


 ピイィィィィ!!

 警笛とともに聞こえる足音。
 野次馬の後ろから近づいてきた。

「兄さん、衛兵だぞ」

「……みたいですね」

 今はもう、はっきりと視認できる。
 衛兵たちの姿が。

「どうする、コーキ?」

 ここで取れる選択は?
 最善手は?

「……」

 さっきの広場とは状況が違う。
 大人数の観衆に囲まれ姿を捉えられていなかった広場からの逃走に対して、今は完全に捕捉されている。その上、ギリオンの素性を知る目撃者も多数……。

「逃げっか?」

「兄さん、逃げるなら今だぜ」

 ギリオンもジンクも逃走を提案してくるが。

「おまえたち、逃げても無駄だぞ」

 その通り。
 身元は割れているんだ。
 ここで逃げても、いずれ衛兵に見つかるだろう。
 本気で逃げるなら、白都を出るしかない。

「潔く裁かれるべきだな」

「裁かれんのは、そっちの剣士とおめえだ」

「ふふ、愚かなことを」

「黙りやがれ!」

 ただ、白都を脱したとしても、レイリュークさんが衛兵にギリオンの素性を告げれば、オルドウまで手が伸びる可能性は高い。さらには、逃走という事実が事態を悪化させることも。

 なら、ここは取り調べに応じるべき?

「……」

 そうだな、ギリオンが手を出したと言っても素手の1発のみなんだ。
 これまでの経緯を踏まえれば、大きな問題はないはず。
 いや、それどころか、ギリオンが広場で斬りつけられた事実を証明できれば……。

 ピイィィィィ!!

「時間がないぞ、兄さん」

「コーキ!」

「……私たちはここに残ります」

「おい、残んのかよ」

「ああ、そうしよう」

「……ちっ」

 それで。

「ジンクさんは?」

「……この後も仕事があるんだわ」

 できれば、一緒に残って証言してほしいが。
 レイリュークさん同様、衛兵からも仲間認定される可能性が高いか。
 だったら、まあ……。

「なもんで、失礼させてもらうぜ」

「分かりました。気をつけて」

「兄さんたちこそな」

「おめえだけ、逃げんのかよ」

「ああ、悪いが、ここまでだ」

 その言葉を残し、走り去っていくジンク。
 入れ替わるように、現れたのが衛兵。

「動くな!」

 結構な人数だな。



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