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第10章 位相編

人外 2

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「くそっ!」

 良くないな。
 やはり、ここは俺が出るべきか。

「一度退くんだ、武上」

「たあ!」

 制止の声が耳に入る直前、さらなる一撃に力を込める武上。
 空間異能者がそれを紙一重で躱し。
 カウンター気味に放った拳が……。

「うぐぅ」

 やられた。
 武上のみぞおちに入ってしまった!

「武上君!」

「……」

 一撃を入れてなお、無言のまま拳を振るう空間異能者。
 なかなかの威力だ。

「ちっ!」

 武上から余裕が消えている。
 まずいぞ。
 この拳を立て続けに食らうと、強化した武上の体でもただじゃ済まない。

 シュッ!!

 躱しきれなかった敵の右拳が武上の顔面に入る。
 その寸前。

「!?」

 俺の手のひらが空間異能者の右拳を掴み取ることに成功。

「……」

 変身後、初めて顔色を変える空間異能者。

「……!?」

 こちらの手のひらから逃れようと力を入れてくる手に、さらなる圧力をかけてやる。

「ッ!」

 おっ、声が出るじゃないか。

「ッ、ゥゥ!」

 手を掴まれたまま暴れる空間異能者。

「!?」

 無駄だ。
 どうやっても逃がしはしない。


「怪我は大丈夫?」

 俺が敵の手を掴んでいるすぐ傍では、古野白さんが武上に駆け寄っている。

「はっ! こんなの、何ともねえ」

「ほんとに?」

「おう」

 骨も内臓も大丈夫そうだな。

「助かったぜ、有馬」

「おまえは突っ走り過ぎだ。もう少し様子を見て動け」

 特に今回のような、正体不明の敵相手の時はな。

「分あったよ。で、こっからどうする?」

 それはまあ、倒すしかないだろ。

「あいつは放置できないわ。多少手強くても……有馬君?」

「ああ、任せてくれ」

「……ありがと」

 この状況で恐縮する必要はないぞ、古野白さん。
 敵が何者であれ倒すつもりだからな。

「オレもやるぞ!」

「あなたは少し休んでなさい」

「平気……」

「いいから!」

「……」

「申し訳ないけど、有馬君」

「了解だ」

 今なお俺から逃れようと必死に足掻いている空間異能者、確かに強者の気配を漂わせているが、それでも俺が脅威を感じる程じゃない。やろうと思えば、すぐにでも意識を刈り取れるだろう。

 ただ……。

 どういうわけか、鑑定が通らないんだ。

「ゥゥゥ!」

 それに、こいつが幸奈の言うところのバケモノだとしたら?
 もう一段階強くなる可能性も考えられる?

「有馬君、またこの空間から飛ばされないように気を付けて」

「そうだった! 危ないんじゃねえのか?」

「いや……多分、平気だ」

 おそらく、今の状態ではあの異能を使えないだろう。
 仮に使われたとしても、すぐに戻って来れるはず。

「そんなこと分かんのかよ?」

「何となくな」

「……」

 とはいえ、油断するつもりはない。
 こいつがただの空間異能者だとしても、異形だとしても、バケモノだったとしても、やることは同じ。

 が、その前に。


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