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第10章 位相編

また

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「なぜ嘘をついたの?」

「……違うんです」

「何がどう違うのかしら?」

 古野白さんの追及に言葉を返せない幸奈。
 俺に気を遣っているんだろうな。

「……」

 ここで無駄に時間を使っている場合じゃないが。
 仕方ない、俺が対応するしかないか。

「彼女は嘘をついていない」

「有馬さん?」

「俺が出掛けると言って出掛けなかっただけだ」

「……」

「ほんとかよ」

 いぶかしげにこちらを見つめる古野白さんに代わって口を開いたのは武上少年。

「ああ」

「だったら、最初からそう言やいいだろ」

「気を遣ってくれたんだ、彼女は」

「何だよ、それ」

 信じがたい気持ちはよく分かる。
 けど、今はこれで通すしかない。

「まあ、まあ、2人ともそんな顔しないで。有馬さんにも、幸奈さんにも色々と事情があるんだろうし」

「どんな事情だ、里村?」

「ボクが知ってるわけないじゃない」

「何だと?」

「だから、喧嘩腰は止めなって。結果として、こうして会えたんだし。それに、今はやることがあるんでしょ?」

「……」

「大志君」

「わあったよ」

 不承不承ながらも里村少年の言葉を受け入れたようだ。

「じゃあ、さっそく始めるぞ」

 始める?
 何を?

「早く構えろよ」

 これ、俺に言ってるんだよな?

「昨日の続きだろ」

「……」

「このためにわざわざ来たんだからよぉ、さっさと構えてくれ」

 意味が分からない。

「大志君、ほんとに約束したの? 有馬さん困ってるけど?」

「おう、再戦するって約束したぞ」

 再戦?
 模擬試合のか?

「……約束した覚えはないが?」

「はあ?」

「……」

「まあいい。さっさと始めようぜ」

 そう言って戦闘態勢に入る武上少年。
 これはもう、戦うまで解放してくれそうにないな。

「ほら!」

 正直、模擬試合なんてする気分じゃない。時間ももったいない。
 が、4時間という余裕がある今なら……。
 手短に相手した方が早い、か。

「……いつでもかかってきていいぞ」





 武上少年との模擬試合を終え、鷹郷さんの伝言を古野白さんから聞き終えた今。
 やっと遡行することができる。

「さあ」

 やむを得ないこととはいえ、想定外に時間を使ってしまったからな。ここからは急ぎで進めるとしよう。

「時間遡行!」

 世界を渡る時とはまた違う時間を遡る際の独特の感覚に包まれ……その感覚が消えると。


「アイスアロー!」

「ウォーターボール!」

 ドン!
 ドカン!

 この時間、この場面は?


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