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第10章 位相編

異形 1

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 武上、里村の両少年と合流後、渋る古野白さんを説き伏せ向かった先は鷹郷さん指定の住宅街。

「おい、おい、こいつぁ、ヤバいんじゃねえか?」

「ええ、危険な状況ね」

 その住宅街に着いた途端、周囲の雰囲気が一変。
 明らかに異常な空気で溢れている。

「……」

 和見家で感じた瘴気や魔落のそれとも違う。
 ぞわぞわと軽く肌が撫でられるような嫌な空気だ。

「けど、鷹郷さんたち、もう始めているわ」

「……みてえだな」

 前方50メートル程度先に人影が3つ。
 鷹郷さんと異能者だろう。

 ただ、異形らしきモノの姿は見えてこない。

「武上君、急ぎましょ」

「ああ」

「大志君、楓季ちゃん、ボクも」

「里村は後ろでサポートに回ってくれ」

「でも、ここはボクの家の近くだから。地理に詳しいボクが行った方がいいよ」

「おめえが活躍すんのは戦闘後だ。今は無理する時じゃねえ」

「武上君の言う通りよ。大人しくしてなさい」

「……」

 里村の持つ異能は記憶消去。
 考えるまでもなく、戦闘には向いていない。
 ここは2人の指示に従うべきだろう。
 それと。

「幸奈もここで待機だ」

「分かりました」

「里村君、彼女をお願いできるかな?」

「それは、まあ……」

 非戦闘員とはいえ、里村も訓練を受けた異能者。
 幸奈を守ることもできるはず。
 もちろん、何かあるようなら俺がすぐに戻って来るつもりだが。

「里村君、いいわね?」

「……分かったよ。ボクはここで待機してる」

 よし。
 あとは、異形を倒すだけだな。

「功己さん?」

 ん?
 幸奈が俺の袖を掴んで?

「……」

 そうだよな、やっぱり不安になるよな。

「あの、功己さんも化け物と?」

「戦うかもしれないな。けど、心配は無用だ。これまで同様、任せてくれればいい」

 さっきからずっと感じている嫌な空気。
 明らかに不穏な空気だが、今の俺が脅威を覚える類のものじゃない。
 おそらく、今回の異形の力は常夜の森に生息する平均的な魔物の力より下。
 何も問題などないだろう。

「……無理はしないでくださいね」

「ああ」




「この先にいるのは、かなりの大物よ。やっぱり、有馬さんはやめた方がいいわ」

「大物なら、なおのこと。君たちだけに任せるわけにはいかないな」

「でも、あなたは……」

 幸奈といい、古野白さんといい、この期に及んでもまだ心配してくれるのか。

「古野白、もういいって」

「武上君?」

「この兄さんの腕は間違いねえんだからよ」

「……」

「んなことより、接近すんぞ」

 まだ納得していない表情の古野白さんを置いて、武上少年が歩き出した。
 もちろん、俺も後に続く。
 こうなると、古野白さんも付いて来るしかない。


「はは、やっぱり大物だぜ」

「……そうね」

「……」

 鷹郷さんまでの距離は15メートル。
 古野白さんと武上はしっかりと異形を視認できているようだ。

 対して俺は、異形の姿をはっきりとは確認できない。
 ぼんやりと何かが存在しているような曖昧な感覚のみ。

「……」

 まあ、こういう場合の対処法は十分理解している。
 そう、魔力を眼に集めればと……。
 ほら、見えてきたぞ。

 これはまた……。
 文字通り大物。
 巨大な化け物じゃないか。


「古野白、武上、まだこっちに来るな!」

「「了解です!」」

 鷹郷さんの指示で立ち止まるふたり。
 当然、俺だけが進むわけにもいかないので足を止める。

 仕方ない。
 ここで鷹郷さんの腕を見せてもらおう。

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