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第9章 推理編
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<壬生伊織視点>
咆哮を上げ、ようやく動きを取り戻した吾妻。
そんな彼が。
「伊織!」
珍しく憤怒の表情で睨みつけてくる。
「えっ?」
「やってくれたな!」
「……ぼくは何もしてませんよ」
「動きを止めるなんていう芸当、おまえ以外に誰ができるというんだ?」
「吾妻さんも、できるじゃないですか」
「何だと!」
西洋人を思わせる彫りの深い面貌を持っていながら、たいていは無表情。
滅多なことでは変化を見せないその端正な顔が歪んでいる。
「……」
悪くないなぁ。
「ふざけるなよ!」
「……ふざけてませんって。ぼくも驚いているんですからね」
これは本当。
正直、かなり驚いている。
有馬さんの幼馴染が魂系の異能を使えるなんて全くの想定外なのだから。
少しばかり呆けてしまったよ。
しかし、有馬さんもひとが悪い。
こんな重要なことを隠していたとはねぇ。
はは……。
面白い。
面白いですよ、有馬さん。
あなたに加えて和見姉もですか。
「伊織……まさか、おまえじゃない?」
「さっきからそう言ってるでしょ」
「……」
「吾妻さん、伊織君は何もしていないと思いますよ」
ようやく聞く耳を持ち始めた吾妻に念押しするのは空間異能者。
「隣にいる私にも異能発動の気配は感じませんでしたし」
「……間違いないんだな?」
「はい」
「そうか……伊織、すまなかった」
「いえいえ、誰にでも勘違いはありますから。失敗もあれば敗戦もある。それが吾妻さんのような超常の異能者でもね」
「ちょっと伊織君、そう煽らないで」
「んん? 煽ってないけど?」
ただの事実にすぎない。
「つまり、奴らの中に私を止めた者がいる。そういうことか?」
「ええ。ただ、まだ上手くは使えていませんね」
「それでこの効果が……。やはり、見逃せる相手じゃないな」
そう考えるのも当然。
で。
「どうします?」
「……続けるとしよう」
「怪我は平気なんですか? 一度あっちに戻って治療した方が良いのでは?」
「不要だ」
「それ、結構な火傷でしょ」
「……」
「本当に大丈夫ですかぁ? 敵には停止能力者もいるのに?」
「問題ない」
「……そうですか。そこまで言うなら、もう任せますよ。ただし、無理は禁物ということで」
「ああ」
こちらに一瞥くれて、すぐに駆け出す吾妻。
ほんと、タフな男だ。
「吾妻さん、平気なんでしょうか?」
「さあ、どうなんだろ?」
「そんな……」
情けない顔と声で訴えかけてくるなって。
「伊織君……」
はぁ~。
「本人がやれるって言うんだから大丈夫、かな」
「心から思ってます?」
「……まあね」
「……」
「吾妻さんの異能は凄いからさ」
「そうですけど……でも、あれですよね。いざとなったら伊織君が何とかしてくれますよね?」
「えっ? ぼくは何もしないよ」
「またまたぁ」
「ほんとに何もしないから。そういう約束だしね」
「……本気ですか?」
「もちろん。そもそも、助けるのはそっちの仕事でしょ」
おまえが助ければいいんだよ。
咆哮を上げ、ようやく動きを取り戻した吾妻。
そんな彼が。
「伊織!」
珍しく憤怒の表情で睨みつけてくる。
「えっ?」
「やってくれたな!」
「……ぼくは何もしてませんよ」
「動きを止めるなんていう芸当、おまえ以外に誰ができるというんだ?」
「吾妻さんも、できるじゃないですか」
「何だと!」
西洋人を思わせる彫りの深い面貌を持っていながら、たいていは無表情。
滅多なことでは変化を見せないその端正な顔が歪んでいる。
「……」
悪くないなぁ。
「ふざけるなよ!」
「……ふざけてませんって。ぼくも驚いているんですからね」
これは本当。
正直、かなり驚いている。
有馬さんの幼馴染が魂系の異能を使えるなんて全くの想定外なのだから。
少しばかり呆けてしまったよ。
しかし、有馬さんもひとが悪い。
こんな重要なことを隠していたとはねぇ。
はは……。
面白い。
面白いですよ、有馬さん。
あなたに加えて和見姉もですか。
「伊織……まさか、おまえじゃない?」
「さっきからそう言ってるでしょ」
「……」
「吾妻さん、伊織君は何もしていないと思いますよ」
ようやく聞く耳を持ち始めた吾妻に念押しするのは空間異能者。
「隣にいる私にも異能発動の気配は感じませんでしたし」
「……間違いないんだな?」
「はい」
「そうか……伊織、すまなかった」
「いえいえ、誰にでも勘違いはありますから。失敗もあれば敗戦もある。それが吾妻さんのような超常の異能者でもね」
「ちょっと伊織君、そう煽らないで」
「んん? 煽ってないけど?」
ただの事実にすぎない。
「つまり、奴らの中に私を止めた者がいる。そういうことか?」
「ええ。ただ、まだ上手くは使えていませんね」
「それでこの効果が……。やはり、見逃せる相手じゃないな」
そう考えるのも当然。
で。
「どうします?」
「……続けるとしよう」
「怪我は平気なんですか? 一度あっちに戻って治療した方が良いのでは?」
「不要だ」
「それ、結構な火傷でしょ」
「……」
「本当に大丈夫ですかぁ? 敵には停止能力者もいるのに?」
「問題ない」
「……そうですか。そこまで言うなら、もう任せますよ。ただし、無理は禁物ということで」
「ああ」
こちらに一瞥くれて、すぐに駆け出す吾妻。
ほんと、タフな男だ。
「吾妻さん、平気なんでしょうか?」
「さあ、どうなんだろ?」
「そんな……」
情けない顔と声で訴えかけてくるなって。
「伊織君……」
はぁ~。
「本人がやれるって言うんだから大丈夫、かな」
「心から思ってます?」
「……まあね」
「……」
「吾妻さんの異能は凄いからさ」
「そうですけど……でも、あれですよね。いざとなったら伊織君が何とかしてくれますよね?」
「えっ? ぼくは何もしないよ」
「またまたぁ」
「ほんとに何もしないから。そういう約束だしね」
「……本気ですか?」
「もちろん。そもそも、助けるのはそっちの仕事でしょ」
おまえが助ければいいんだよ。
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