961 / 1,157
第9章 推理編
離脱
しおりを挟む
<壬生伊織視点>
瘴気漂う和見家の地下室を離れ玄関に向かう足は軽い。
「ふふ……」
今回も悪くなかったな。
いや、むしろ想定以上か。
こんな場所で有馬に貸しを作ることができたし、その能力の一端を垣間見ることもできたのだから。
「……」
有馬功己。
異能者ではない超越者。
橘の瞬間移動や銃撃を一蹴してしまう程の身体能力に加え、揺魂にも耐えうる精神力。耐えるだけじゃない、揺魂に近いものを使うことさえできる。
さらには、位相の空間を正確に知覚する能力。
おそらく、まだ見せていない力も……。
いったい、どれだけの力を隠し持っている?
本当に恐ろしい男だよ。
「……」
諦められるわけがないな。
あんな可能性の塊のような素材を見逃すことなどできるわけがない。
ならば、手に入れるのみ。
有馬功己本人もその力も。
今すぐは無理でも、いつかは必ず。
「……」
幸いなことに、時間は私の味方だ。
その時をゆっくり待てばいい。
今はそう。
有馬があの空間にどう対処するのか?
「……」
位相侵入など普通はできるものではない。
もちろん、私にも不可能なこと。
有馬といえども、さすがに侵入は……。
いや、彼ならやってしまうかもしれない。
その可能性も低くはない、か。
ふふ……。
興味深いことだ。
「しかし……」
今位相に入れば、吾妻と遭遇するはず。
となると、衝突は避けられない。
あの2人がここでぶつかるのか。
「……」
現時点での衝突は想定外。
とはいえ、予定が早まるのは……。
そうだな。
悪いことばかりじゃない。
何より。
この対決には、どうやっても心が惹かれてしまう。
位相の中に入りたくなるというもの。
ただ、今は予定が入っている。
彼女との約束を破るわけにもいかない。
それに、独力での位相空間侵入は不可能だ。
中の様子を見ることもできない。
何にしても、空間異能者の能力が必要になるだろう。
面倒なことだ。
が……。
場合によっては力を借りればいい。
「ふふ、ふふふ……」
有馬さん。
ぼくは期待してますよ。
いろいろとね。
そんなことを考えながら廊下を抜け、玄関を出たところで。
「あら、屋敷の中に入っていたのね?」
「……ええ」
玄関先に立っていたのは壬生の姉と、配下の異能者数人。
「姉さんは、いつこちらに?」
「少し前に到着したのだけれど、和見の家にはあまり足を踏み入れたくないのよ」
「……」
「伊織君は平気だったのかしら?」
「まあ、何とか」
確かに、和見の家に漂う空気は気持ちいいものじゃない。
とはいえ、この暑さの中を外で待つのも辟易する。
瘴気漂う和見家の地下室を離れ玄関に向かう足は軽い。
「ふふ……」
今回も悪くなかったな。
いや、むしろ想定以上か。
こんな場所で有馬に貸しを作ることができたし、その能力の一端を垣間見ることもできたのだから。
「……」
有馬功己。
異能者ではない超越者。
橘の瞬間移動や銃撃を一蹴してしまう程の身体能力に加え、揺魂にも耐えうる精神力。耐えるだけじゃない、揺魂に近いものを使うことさえできる。
さらには、位相の空間を正確に知覚する能力。
おそらく、まだ見せていない力も……。
いったい、どれだけの力を隠し持っている?
本当に恐ろしい男だよ。
「……」
諦められるわけがないな。
あんな可能性の塊のような素材を見逃すことなどできるわけがない。
ならば、手に入れるのみ。
有馬功己本人もその力も。
今すぐは無理でも、いつかは必ず。
「……」
幸いなことに、時間は私の味方だ。
その時をゆっくり待てばいい。
今はそう。
有馬があの空間にどう対処するのか?
「……」
位相侵入など普通はできるものではない。
もちろん、私にも不可能なこと。
有馬といえども、さすがに侵入は……。
いや、彼ならやってしまうかもしれない。
その可能性も低くはない、か。
ふふ……。
興味深いことだ。
「しかし……」
今位相に入れば、吾妻と遭遇するはず。
となると、衝突は避けられない。
あの2人がここでぶつかるのか。
「……」
現時点での衝突は想定外。
とはいえ、予定が早まるのは……。
そうだな。
悪いことばかりじゃない。
何より。
この対決には、どうやっても心が惹かれてしまう。
位相の中に入りたくなるというもの。
ただ、今は予定が入っている。
彼女との約束を破るわけにもいかない。
それに、独力での位相空間侵入は不可能だ。
中の様子を見ることもできない。
何にしても、空間異能者の能力が必要になるだろう。
面倒なことだ。
が……。
場合によっては力を借りればいい。
「ふふ、ふふふ……」
有馬さん。
ぼくは期待してますよ。
いろいろとね。
そんなことを考えながら廊下を抜け、玄関を出たところで。
「あら、屋敷の中に入っていたのね?」
「……ええ」
玄関先に立っていたのは壬生の姉と、配下の異能者数人。
「姉さんは、いつこちらに?」
「少し前に到着したのだけれど、和見の家にはあまり足を踏み入れたくないのよ」
「……」
「伊織君は平気だったのかしら?」
「まあ、何とか」
確かに、和見の家に漂う空気は気持ちいいものじゃない。
とはいえ、この暑さの中を外で待つのも辟易する。
40
お気に入りに追加
527
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
辺境で魔物から国を守っていたが、大丈夫になったので新婚旅行へ出掛けます!
naturalsoft
ファンタジー
王国の西の端にある魔物の森に隣接する領地で、日々魔物から国を守っているグリーンウッド辺境伯爵は、今日も魔物を狩っていた。王国が隣接する国から戦争になっても、王国が内乱になっても魔物を狩っていた。
うん?力を貸せ?無理だ!
ここの兵力を他に貸し出せば、あっという間に国中が魔物に蹂躙されるが良いのか?
いつもの常套句で、のらりくらりと相手の要求を避けるが、とある転機が訪れた。
えっ、ここを守らなくても大丈夫になった?よし、遅くなった新婚旅行でも行くか?はい♪あなた♪
ようやく、魔物退治以外にやる気になったグリーンウッド辺境伯の『家族』の下には、実は『英雄』と呼ばれる傑物達がゴロゴロと居たのだった。
この小説は、新婚旅行と称してあっちこっちを旅しながら、トラブルを解決して行き、大陸中で英雄と呼ばれる事になる一家のお話である!
(けっこうゆるゆる設定です)
俺を追い出した元パーティメンバーが速攻で全滅したんですけど、これは魔王の仕業ですか?
ほーとどっぐ
ファンタジー
王国最強のS級冒険者パーティに所属していたユウマ・カザキリ。しかし、弓使いの彼は他のパーティメンバーのような強力な攻撃スキルは持っていなかった。罠の解除といったアイテムで代用可能な地味スキルばかりの彼は、ついに戦力外通告を受けて追い出されてしまう。
が、彼を追い出したせいでパーティはたった1日で全滅してしまったのだった。
元とはいえパーティメンバーの強さをよく知っているユウマは、迷宮内で魔王が復活したのではと勘違いしてしまう。幸か不幸か。なんと封印された魔王も時を同じくして復活してしまい、話はどんどんと拗れていく。
「やはり、魔王の仕業だったのか!」
「いや、身に覚えがないんだが?」
チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします
寿司
ファンタジー
28才、彼女・友達なし、貧乏暮らしの桐山頼人(きりやま よりと)は剣と魔法のファンタジー世界に"ヨリ"という名前で魔王を倒す勇者として召喚される。
しかしそこでもギフトと呼ばれる所謂チート能力がなかったことから同じく召喚された仲間たちからは疎まれ、ついには置き去りにされてしまう。
「ま、良いけどね!」
ヨリはチート能力は持っていないが、お金無限増殖というバグ能力は持っていた。
大金を手にした彼は奴隷の美少女を買ったり、伝説の武具をコレクションしたり、金の力で無双したりと自由気ままに暮らすのだった。
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。
彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。
父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。
わー、凄いテンプレ展開ですね!
ふふふ、私はこの時を待っていた!
いざ行かん、正義の旅へ!
え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。
でも……美味しいは正義、ですよね?
2021/02/19 第一部完結
2021/02/21 第二部連載開始
2021/05/05 第二部完結
チートスキルで無自覚無双 ~ゴミスキルばかり入手したと思ってましたが実は最強でした~
Tamaki Yoshigae
ファンタジー
北野悠人は世界に突如現れたスキルガチャを引いたが、外れスキルしか手に入らなかった……と思っていた。
が、実は彼が引いていたのは世界最強のスキルばかりだった。
災厄級魔物の討伐、その素材を用いてチートアイテムを作る錬金術、アイテムを更に規格外なものに昇華させる付与術。
何でも全て自分でできてしまう彼は、自分でも気づかないうちに圧倒的存在に成り上がってしまう。
※小説家になろうでも連載してます(最高ジャンル別1位)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる