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第9章 推理編
根拠
しおりを挟む異空間の中が見えているという事実。
それを知られても、情報を得るべきなのか?
「……」
いや、違うな。
引き換えにするなら、侵入方法だろ。
中に入りさえすれば、鑑定も使える。
ここで無理して異能者の情報を得る必要もない。
「侵入方法と交換だ。それなら教えてやる」
「はは、そうきましたか」
「空間に入ることが何より重要だからな」
「まあ、そうでしょうね。でも、異能者の情報はあった方がいいですよ」
「5人の情報など、この空間に入れないのなら意味はない」
「なるほど、なるほど。有馬さんは、5人だと認識しているんですね」
「……」
失言だ。
壬生少年のペースに乗せられてしまった。
状況は何も変わっていないのに、これは良くないぞ
こちらも、あちらの空間も……っ!?
「有馬さん?」
結界が。
膜の向こうで武志の結界が。
砕け散っている!
********************
<古野白楓季視点>
パリーーン!!
耳を貫くような破裂音が鋭く響き渡る。
と同時に鼻腔をつく強烈な臭気。
武志君の結界の中では感じることのなかった瘴気ともえいる不快な空気がまとわりついてくる。
「「「「……」」」」
僅かな沈黙。
そして。
「武上君?」
「おう、行くぞ!」
気合いの声を上げ走り出す武上君。
強化済みの体が高速で飛び出していく。
さっき話したのに、作戦なんてあったもんじゃない。
「……」
仕方ないわね。
フォローするわよ。
「「古野白さん!」」
「幸奈さん、武志君、少しだけ耐えてちょうだい」
「はい」
「分かりました」
ふたりを残して前に出るのは不安だけれど。
ここは何としても先制を決めたい。
だから、少しだけお願い。
「こちらは何とかします」
幸奈さんの言葉を背に先行した武上君の後ろを追いかけ……接敵。
「やっと出てきたな」
私の前に立ち塞がるのは壬生の長兄。
「あなたこそ、どうやって出てきたの?」
研究所に捕らえられていたはずなのに。
「ふっ、どこにでも抜け道は存在する」
「……」
「一枚岩なんて幻想なのだよ」
壬生と繋がっている者が機関にいると言うの?
「残念ながらな」
考えたくなかったけど、そうなのね。
「おまえたちが何をしても無駄ってことだ」
「……」
「大人しく降参した方がいい」
無駄?
降参?
「今なら命だけは助けてやるぞ」
馬鹿らしい。
ほんと、馬鹿らしい。
そうよね、武上君。
「おらぁ!」
ドゴン!
「たぁ!」
ガン!
「……」
あなたたちを倒せば問題ないのに。
「だぁ!!」
ドカン!
「おりゃ!!」
前方で戦う武上君を見ていると、根拠のない自信が湧いてくる。
ふふ、今まで馬鹿にしてきたけれど……。
根拠がないって強いことなのね。
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