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第9章 推理編

攻防 1

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 膜の中へ侵入する手段。
 壬生伊織なら知っているはず。

「有馬さん、あれを認識できるんですね?」

「ああ。だが、入る方法が分からない」

「凄い! 本当に凄いなぁ。普通じゃないですよ!」

「……」

「あいつの空間を認識できるなんて! さすがです、有馬さん」

 確かに、一般人が知覚できるもんじゃない。
 魔力を眼に集中させないと、俺だって見ることができないのだから。
 そうは言っても。

「君も認識できるんじゃないのか?」

「まあ、何となくですけどね。で、有馬さんはどんな風に知覚してるんです? 教えてくださいよ」

「……」

 これは、詳しく伝えない方が良さそうだな。

「こっちも漠然と知覚しているだけだ」

「漠然って、どんな感じなんです?」

「君と同じだと思うぞ」

「……そうなんですね」

 なぜ気落ちする?
 いや、そんなことより。

「君は侵入方法を知っているのか?」

「どうでしょうねぇ」

 やはり、知っているな。

「知っているなら教えてくれ」

「うーん、困るなぁ。ぼくにも家との関係がありますから、そう簡単にはねぇ」

「家とは敵対しているんだろ?」

「敵対まではしてませんよ」

 簡単には教えられないと。

「……」

 壬生少年の立場を考えたら当然のことか。
 とはいえ、こっちも譲れない。
 時間もない。
 いつまで結界がもつのか分からないのだから。

 どうすれば……?

 っ!?

 あれは!
 結界に亀裂が?

 まずい!
 もう交渉してる場合じゃない。

「借りは必ず返す。知っているなら教えてくれ!」




********************

<古野白楓季視点>



 ドン!
 ガン!
 ドガッ!

 結界表面に打ちつけられる異能。
 その激しさは増すばかり。

「武志君、結界は大丈夫!?」

「まだまだ平気ですよ」

「……助かるわ」

 この余裕。
 結界持続時間の心配はなさそうね。
 あとは、敵の攻撃にどこまで耐えることができるか?

「武志、本当に平気なの? 無理してない?」

「大丈夫だって。結界は使い慣れてるからさ。さっき姉さんに説明しただろ」

「そうだけど。武志が異能を使えるなんて知らなかったし……」

「それは、ごめん。ちょっと話せなかったんだよ」

 和見家には色々と問題がある。
 このふたりの関係も複雑だ。
 それでも、このふたりなら大丈夫。
 そう信じている。


「こっちは準備万端だぜ! いつ結界解除してくれてもいいからな」

「でも、姉さんが」

「問題ねえ。オレが護ってやらぁ」

「武上君、甘く見ちゃだめよ。敵は5人いるのだから」

 ドガン!
 ガン!

「こんな攻撃、今までと変わらねえって」

 確かに、そう。
 結界に対する異能攻撃は、これまで見てきた異能と変わりはない。

「まったく問題ねえな。5人いても同じだぜ」

 私たちふたりだけで複数の異能者を捕らえた経験もある。
 この壬生家相手にも……。

 ただ、今回は容易くないのよ。


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