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第9章 推理編

治療 9

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「セレス様、私は……ゴホッ……幸せです」

「何言ってるの、ディアナ!」

「セレスティーヌ様に……お仕えできて……私は……」

「駄目です! まだ、あなたには……」

「ゴホッ、ゴホッ!!」

「ディアナ、ディアナ!!」

「ユーフィリア……ありがとう。ユーフィリアがいてくれたから私は……」

「ディアナ、しっかりして、ディアナ!」

「そうです。祝福で治してあげますから!」

 祝福と魔法薬で好転しかけていたディアナの容態が、今は……。
 やはり、ニレキリ毒は解毒できないのか!

 流れ始める陰々たる空気。
 そんな重い雰囲気の中。

「コーキさん、姉さんが! 姉さんの様子がおかしい!!」

 なっ!?
 シアが?

 無事に治療を終えていたはずなのに、何が?
 アルの言葉に焦るまま、振り向くと。

「はあ、はあ……」

 さっきまで穏やかな表情で眠っていたシアが目を覚ましている。
 苦しそうな息を漏らしながら。

「姉さん、大丈夫か? 姉さん!」

「シア、どうした?」

 呼吸が浅い。
 顔の色も真っ白。

 明らかに容態が悪化している。
 急にどうして?

「さ、む……」

「寒いのか、シア」

「寒いんだな、姉さん」

「さむ、い……」

「これを!」

 アルが運んできた掛け布団をシアの体の上に。

「はあ、はあ……」

「もう寒くないか、姉さん?」

「さむい……」

 これでも寒い。
 なら。

「シア、すぐに治癒魔法を使うからな」

「……せん、せい」

 原因が何であれ、俺にできるのは治癒魔法とそして。

「魔法の前に、これを飲んでくれ」

 魔法薬だけ。
 ふたつしかない。

 このふたつを続けるのみ。
 魔法薬を口にするシアに、治癒魔法を発動。


「コーキさん、シアは?」

 俺の後ろで祝福を続けているセレス様。
 ディアナの治療で手一杯なのに。

「ゴホッ、ゴホッ」

 そのディアナの容態は……。
 治療の効果が薄れてきたのか、悪化の一途をたどっている。

「シアの様子は?」

「……良くはありません。ですが、外から見る限り傷口は塞がっていますので」

「傷はない? ということは、体の中で何かが起こっているのですね?」

「そうだと思います」

 シアの蒼白の顔色。
 浅い呼吸に寒さを感じる状態。
 傷口が塞がっているのに、このような症状が表れている。

 俺の乏しい知識からでも導き出せる答えは……出血性ショック。
 断言はできないものの、おそらくその症状だと思う。
 やはり、あの失血量が問題だったのだろう。

「はあ、はあ……」

「シア!」

 ここで何とかしなければ、大変なことになってしまう。

「ディアナの治療が終わったら、シアに祝福を使います。それまで、コーキさん、お願いします。何とかシアを!」

「分かりました」

 治癒魔法と魔法薬による治療しかできないが、やるしかない。
 セレス様も俺も、今はもう全力を尽くすだけ。

「ゴホッ、ゴホゥ!!」

「はあ、はあ……」

 シア、ディアナともに、まったく油断できない状況、予断を許さない容態なのだから。


「コーキ、頼む!」

「コーキさん、姉さんを!」

「了解だ」

 シアの胸のあたり、患部周辺に治癒の光を照射する。

「はあ、はあ……」

 魔力残量など無視した最高の治癒光。
 今できる最良の治癒をシアに。


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