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第8章 南部動乱編

好試合 3

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 裂帛の気合いと共に繰り出されるのは鋭い突き。
 それを躱すエレナさんは、序盤から変わることのない柔らかくしなやかな身のこなし。

「あんたこそ、観念……」

 そこから反撃とばかりに、若干崩れた体勢で剣を放とうとしている。

「しなさい!」

 打ち出されたのは、ディアナ同様の打突。
 ただ、体勢が不十分なせいか、腰が入っていない。鋭さにも欠けている。

 となると、それは悪手だぞ。
 ディアナにとっての理合になってしまう。
 ほら、ディアナの口もとが笑ってるじゃないか。

「たぁ!!」

 悪くない突きなんだが、迎え撃つディアナはそれを避けることなく。
 真っ向に見据え。
 上段から豪剣!

 カーン!!

 叩き落とされたエレナさんの打突。
 これまでにない乾いた音が広場に響き渡る。

 そこに。

「やぁ!」

 ディアナが気合一閃。
 さらなる追撃の剣がエレナさんの胸元へ。

 叩き落された木剣を胸前に戻すエレナさん。
 間に合うか?

 ガッゴン!

 ぎりぎり間に合ったものの、不完全な形でディアナの剣を受けたためだろう。
 弾かれた自身の木剣で胸をしたたかに打ってしまった。

「くっ!!」

 苦悶の表情を浮かべるエレナさん。
 まだ剣を手放してはいないものの……。

 勝負あった、かな。

 対するディアナは、勝利を確信したように剣を構えなおす余裕。
 エレナさんから一瞬目を離し、応援するワディン騎士、そしてセレス様の方に目線を投げかけてくる。

 そして。

「これで最後だ!」

 そんな決め台詞を口にしながら、豪剣が放たれた!
 エレナさんはもう足が使えない。
 辛うじて迎え撃つ木剣にもさっきまでの力はなく。

 ガゴン!!

 木剣を手放してしまった。

「……」
「……」

「それまで!」

 ルボルグ隊長の声が入る。
 ディアナの勝利だ。

「「「「「おおぉ!!」」」」」
「「「「「やったぞ!!」」」」」
「「「「「ディアナぁぁ!!」」」」」

 瞬時に沸き返るワディン騎士。

「「「「……」」」」
「「「「……」」」」

 一方、冒険者たちは声を失っている。


「やったぜ!!」

「セレス様、やりました! ディアナさん、勝ちましたよ!!」

「……そう、ね」

「セレス様?」

「……」

「セレス様!?」

「……ゴホッ」

 えっ!?

「ゴホッ……」

 嘘だろ!?

「ゴホッ、ゴホゥッ!!」

 待て!
 ちょっと待ってくれ!!


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