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第8章 南部動乱編

接続

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「無意識で一度使っただけなのに、どうして異能発動の方法が分かったんだ?」

「……なんとなく? 感覚かなぁ?」

 何となく感覚で?

「こう、パッとすればサッとできる、みたいな」

「……」

「とにかく、分かるの!」

 幸奈らしいというか、らしくないというか。
 やはり、酔いが残っているのかもしれないな。

「もう! 信じてないでしょ?」

「……」

「けどさ、きっとそれが異能なんだよ」

 異能の使い手にそう言い切られると、返す言葉もないが。

「功己もそうじゃない?」

「俺は異能を使えないぞ」

「違うよ、魔法のこと」

「……」

「魔法を使う時、全て分かってる? 気づいたら使えてる感じじゃない?」

 その通りだ。
 ある程度は理解しているが、全てではない。
 
 メカニズムを理解せずとも、異能は使えるってことか。

「だからね、わたしも同じ」

 確かに……。
 そういうものかもな。

「なら、その感覚で何か気づくことは?」

「うーん……異能を使う力は足りているはずだし、上手く使えたと思うんだけど」

「……」

「発動が途中で消えちゃった感じがするから。やっぱり、ここと日本が繋がっていないとか?」

 さっきの想像通りだ。

「一度目は繋がったのに、今回は繋がらなかった?」

「うん。何が違うのかなぁ??」

 今の幸奈と、日本での幸奈。
 違ってる点は……。
 色々あるよな。

「困ったね」

「ああ」

 大問題だ。
 幸奈の記憶が戻っても魂替を上手く使えないんじゃ、解決したことにならない。
 そもそも、俺の最初の目的は2人を元に戻すことだったんだから。

「あっ!?」

「どうした?」

「今のわたし、ペンダントを持ってない」

「ペンダント?」

「功己がわたしにプレゼントしてくれたペンダントだよ。あれって、この世界の物だったんでしょ?」

「……」

 翠緑のペンダント。
 俺が幸奈にプレゼントした異世界製の魔道具だ。
 ただ、それと魂替に何の関係がある?

「あのペンダントがわたしとこの世界を繋いでくれたんじゃないかな?」

 そんなことが……。

 いや、あり得るのか?

「……」

 魂替自体には異世界を渡る力なんて備わっていない。
 なのに、幸奈は日本の誰かと入れ替わるのではなく、異世界のセレスさんと入れ替わった。

 つまり、2つの世界を繋ぐ何らかの力が作用したということ。
 それが翠緑のペンダントの力だと。
 十分に考えられる。

「でも、あのペンダントはあっちのセレスさんが今も身に着けているんだよね。それなら、今も繋がってるような?」

「魂替の発動者が身に着けている必要が……いや、魔力か!」

「えっ、何?」

「今のペンダントは魔力が抜けた状態なんだ。だから、2つの世界を繋ぐことができない。魔力による通路が形成接続されていない。と仮定できる」

「そう、なの?」

「全ては推測に過ぎない。が、可能性は十分だ」

「そっかぁ」

 現状では、これが最も妥当な推測だろう。

「でもさ、それが正解だとしても、どうして一度目は他の人じゃなくセレスさんに繋がったんだろ?」

「幸奈と魂の質が似ているからじゃないのか?」

 鑑定によると入れ替わる相手には魂の類似が必要とのことだから。

「ほんと、それだけ? 日本にもこの世界にもたくさんの人がいるのに?」

「……」

「他に何かわたしたちを繋ぐものないのかなぁ?」

 2人を繋いだのは幸奈が身につけていた魔道具。俺の魔力がこもったペンダント型の魔道具。
 なら、セレス様にも俺の魔力が……。

 そうだ!

「攻撃用の魔道具かもしれない」

「えっ? あっ!」

「護身用にセレス様に渡していた魔道具だ」

「功己のファイヤーボールが込められた?」

「ああ」

「これだよね」

 幸奈が懐から取り出したのは円筒形の魔道具。

「間違いない」

 魂替の発動時、ともに俺の魔力が充填されていた。
 この2つが異世界間を繋ぐ鍵……。
 
「じゃあ、これに功己の魔力を込めて、日本にいるセレスさんのペンダントにも込めれば?」

「試す価値はある」

「うん!」

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