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第8章 南部動乱編
懸念 2
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いや、王軍の侵入など許せるわけもない。
何をおいても、それだけは避けなければならない。
というわけで、遊撃戦の早期敢行が決定したんだ。
「しかし、ほんと不気味だぜ。あいつら、どこまで掴んでると思うよ?」
「こっちの動向を知っているようでもあり、知らないようでもあるな」
「穴掘りなんてぇのは、地下の存在を知らなきゃやんねえぞ」
「……」
「バレてる可能性が高い、そう思った方がいいんじゃねえか?」
王軍が俺たちの動きを掴んでいる可能性。地下都市を認識している可能性。
ヴァーンの言う通り、低いとは思えない。
なのに。
「奇襲については、まったく対策がされていなかった」
動きを掴んでいるなら、奇襲への対策をするはず。
少なくとも対策の兆候は見られるだろう。
そう踏んで警戒していたというのに、蓋を開けてみれば呆気ないものだった。
「ああ、微塵もなかったな。警戒してたこっちが馬鹿みたいだったぜ」
「つまり」
「何らかの情報は入手してるが、動きを完全に掴んでるわけじゃねえ。裏切り者も……いねえかもな」
「……」
内通者の存在。
最も恐れていたこの危険が消えた、のか。
「裏切り者がいねえなら、どうして地下を知ってるんだって話になるけどよ」
「エンノアの存在を知っている者が王軍にいる」
地下都市の存在を知っていて、奇襲作戦を知らない。
とすると、内通者が存在するのではなく、単にエンノアを知る者がいるだけ。
「おそらくは、そういうことだ」
「まっ、それしかねえわな」
あくまでも可能性に過ぎないが。
なぜだか、これが正解だと今は思えてしまう。
「何にしろ、裏切り者がいねえってのはありがてえことだぜ」
ああ、同感だ。
********************
<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>
3度目の遊撃戦から戻ってきた騎士の皆さん。
その姿は、表情は……。
よかったぁ。
これまで同様、ひとりも欠くことのない無事な帰還に安堵の息が漏れてしまう。
「セレスティーヌ様、大勝利にございます」
エンノアの家屋のすぐ近くに位置する広場の中央。
そこに集まったわたしたちとエンノアの皆さんに勝利を伝えてくれるのはルボルグ隊長。
「今回はどのような?」
「まずは王軍の背後に出まして、それから……」
勝利に沸くワディンの騎士の中、ルボルグ隊長が落ち着いた口調で戦果を報告してくれた。
「この勝利、騎士の皆様とエンノアの皆様、そしてローディン様、トトメリウス様に感謝いたします」
「「「「「「トトメリウス様に感謝を!」」」」」」
「「「「「「感謝を!」」」」」」
わたしの言葉に、エンノアの皆さんが唱和するように感謝を口にする。
「ありがたきお言葉」
そう言って深く頭を下げるルボルグ隊長。
後ろに控えるワディン騎士たちも倣うように頭を下げたままだ。
「頭を上げてください。この勝利は皆さんのお力なのですよ。危険を顧みず、頑張ってくださった皆さんのおかげですから」
「「「「「「はっ」」」」」」
「「「「「「……」」」」」」
「まずは、ゆっくりと身体を休めてくださいね」
「「「「「「ありがとうございます」」」」」」
「……」
何をおいても、それだけは避けなければならない。
というわけで、遊撃戦の早期敢行が決定したんだ。
「しかし、ほんと不気味だぜ。あいつら、どこまで掴んでると思うよ?」
「こっちの動向を知っているようでもあり、知らないようでもあるな」
「穴掘りなんてぇのは、地下の存在を知らなきゃやんねえぞ」
「……」
「バレてる可能性が高い、そう思った方がいいんじゃねえか?」
王軍が俺たちの動きを掴んでいる可能性。地下都市を認識している可能性。
ヴァーンの言う通り、低いとは思えない。
なのに。
「奇襲については、まったく対策がされていなかった」
動きを掴んでいるなら、奇襲への対策をするはず。
少なくとも対策の兆候は見られるだろう。
そう踏んで警戒していたというのに、蓋を開けてみれば呆気ないものだった。
「ああ、微塵もなかったな。警戒してたこっちが馬鹿みたいだったぜ」
「つまり」
「何らかの情報は入手してるが、動きを完全に掴んでるわけじゃねえ。裏切り者も……いねえかもな」
「……」
内通者の存在。
最も恐れていたこの危険が消えた、のか。
「裏切り者がいねえなら、どうして地下を知ってるんだって話になるけどよ」
「エンノアの存在を知っている者が王軍にいる」
地下都市の存在を知っていて、奇襲作戦を知らない。
とすると、内通者が存在するのではなく、単にエンノアを知る者がいるだけ。
「おそらくは、そういうことだ」
「まっ、それしかねえわな」
あくまでも可能性に過ぎないが。
なぜだか、これが正解だと今は思えてしまう。
「何にしろ、裏切り者がいねえってのはありがてえことだぜ」
ああ、同感だ。
********************
<和見幸奈視点(姿はセレスティーヌ)>
3度目の遊撃戦から戻ってきた騎士の皆さん。
その姿は、表情は……。
よかったぁ。
これまで同様、ひとりも欠くことのない無事な帰還に安堵の息が漏れてしまう。
「セレスティーヌ様、大勝利にございます」
エンノアの家屋のすぐ近くに位置する広場の中央。
そこに集まったわたしたちとエンノアの皆さんに勝利を伝えてくれるのはルボルグ隊長。
「今回はどのような?」
「まずは王軍の背後に出まして、それから……」
勝利に沸くワディンの騎士の中、ルボルグ隊長が落ち着いた口調で戦果を報告してくれた。
「この勝利、騎士の皆様とエンノアの皆様、そしてローディン様、トトメリウス様に感謝いたします」
「「「「「「トトメリウス様に感謝を!」」」」」」
「「「「「「感謝を!」」」」」」
わたしの言葉に、エンノアの皆さんが唱和するように感謝を口にする。
「ありがたきお言葉」
そう言って深く頭を下げるルボルグ隊長。
後ろに控えるワディン騎士たちも倣うように頭を下げたままだ。
「頭を上げてください。この勝利は皆さんのお力なのですよ。危険を顧みず、頑張ってくださった皆さんのおかげですから」
「「「「「「はっ」」」」」」
「「「「「「……」」」」」」
「まずは、ゆっくりと身体を休めてくださいね」
「「「「「「ありがとうございます」」」」」」
「……」
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