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第8章 南部動乱編
安眠
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聞き取れるようになった直後に終了するとは……。
一歩遅かった。
とはいえ、収穫は皆無じゃない。
10日後に決行という有益な情報を得ることはできた。
何をするかは分からなくても、日程を限定できるのは大きいぞ。
しかし、10日後か。
異世界間移動の時差を考慮すると、向こうの世界に渡った後20日の余裕ができるわけだ。
20日あれば、何とか……。
おっ。
異能者2人の気配が玄関に向かっている。
和見家を出るんだな。
なら、こっちも離れた方がいい。
***********************
<ヴァーンベック視点>
「よし」
久々にゆっくりと休めた身体には活力が戻っている。
力が湧いてくるのを感じる。
「ヴァーンさんもか?」
「ああ。これなら、いつでも戦えるぜ」
「おれもだ!」
答えるアルの表情も昨日までとは雲泥の差。
明らかに顔色が良くなっている。
それは、ワディンの騎士連中も同じ。
「一晩寝ただけで、こんなに回復するってのは驚きだよなぁ」
「この地下空間には安眠効果でもあるんじゃねえのか」
「なるほど! そうかも」
いや、冗談だぞ。
さすがに地下に潜っただけで安眠効果はないだろ。
「……」
まっ、真実はどうあれ、俺たちの心身が回復したことに変わりはねえ。
それで十分だ。
「でもさ、安眠効果も凄いけど、テポレン山の中にこんな住空間があったことにビックリするって」
「ビックリなんて言葉じゃ足りねえなぁ」
「なら、驚天動地とか?」
「まあ、な……」
地下に広がる異質の空間。
岩肌むき出しの地下に溢れる不思議な光とその中に建ち並ぶ多くの建造物。
ロマンと現実が混ざり合った摩訶不思議な世界。
余裕がある状況なら、ゆっくりと地下世界を楽しませてもらうのによ。
そんなことしてる場合じゃねえってのが残念だぜ。
「ヴァーン殿!」
ん?
こっちに歩いてくるのはルボルグ隊長か?
こいつも、すっきりした顔してるぜ。
「コーキ殿の姿が見えないのですが?」
「ああ、心配はいらねえぞ。しょっちゅう消えちまうけど、すぐ戻って来るからよ、あいつは」
「それなら……」
「どうした? 問題でもあんのか?」
「今後の方針をもう一度確認する必要がありまして」
「だな」
「エンノアの民と親しいコーキ殿がいないことには……」
コーキがいなけりゃ、話し合うこともできねえ。
何とも情けない話だが。
仕方ねえか。
「……」
「……」
なんて思ってるところに。
「コーキ殿!」
戻ってきやがった。
相変わらずタイミングを理解してる野郎だぜ。
「今朝は、どこ行ってたんだ?」
「悪い。地中を見回っていたら遅くなった」
疲労の溜まった体で、こんな早朝から?
いや、コーキならあり得るな。
「コーキ殿、お待ちしておりました」
「隊長……。どうかしましたか?」
「ああ、今後の方針を話し合おうってよ」
「なるほど」
「コーキ殿、ヴァーン殿。どうぞ、あちらの部屋へ」
今回エンノアに提供された家屋の中で最も大きいこの家の一室。
そこに集まっているのは、いつもの面々だ。
「セレスティーヌ様、これからもう一度我らの進むべき道を確認したいと思います」
「……はい」
方針の確認。
といっても。
これからオルドウに向かうか、エンノアに留まるか?
まずは、その択一だけ。
こいつが決まらないことには、何も始まらねえ。
で、方針が決まったら、詳しい内容を考える必要がある。
どれくらいエンノアに留まるのか?
ここでレザンジュ王軍を迎え撃つのか?
オルドウに長期潜伏するのか?
それが可能なのか?
無理なら、どこに行くか?
他国に逃れるのか?
「……」
どう考えても、簡単じゃねえなぁ。
ありがてえことに、エンノアの皆は好意的で、ここに残るよう言ってくれるけどよ。
はぁ~~。
っとに、悩ましいぜ。
一歩遅かった。
とはいえ、収穫は皆無じゃない。
10日後に決行という有益な情報を得ることはできた。
何をするかは分からなくても、日程を限定できるのは大きいぞ。
しかし、10日後か。
異世界間移動の時差を考慮すると、向こうの世界に渡った後20日の余裕ができるわけだ。
20日あれば、何とか……。
おっ。
異能者2人の気配が玄関に向かっている。
和見家を出るんだな。
なら、こっちも離れた方がいい。
***********************
<ヴァーンベック視点>
「よし」
久々にゆっくりと休めた身体には活力が戻っている。
力が湧いてくるのを感じる。
「ヴァーンさんもか?」
「ああ。これなら、いつでも戦えるぜ」
「おれもだ!」
答えるアルの表情も昨日までとは雲泥の差。
明らかに顔色が良くなっている。
それは、ワディンの騎士連中も同じ。
「一晩寝ただけで、こんなに回復するってのは驚きだよなぁ」
「この地下空間には安眠効果でもあるんじゃねえのか」
「なるほど! そうかも」
いや、冗談だぞ。
さすがに地下に潜っただけで安眠効果はないだろ。
「……」
まっ、真実はどうあれ、俺たちの心身が回復したことに変わりはねえ。
それで十分だ。
「でもさ、安眠効果も凄いけど、テポレン山の中にこんな住空間があったことにビックリするって」
「ビックリなんて言葉じゃ足りねえなぁ」
「なら、驚天動地とか?」
「まあ、な……」
地下に広がる異質の空間。
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ロマンと現実が混ざり合った摩訶不思議な世界。
余裕がある状況なら、ゆっくりと地下世界を楽しませてもらうのによ。
そんなことしてる場合じゃねえってのが残念だぜ。
「ヴァーン殿!」
ん?
こっちに歩いてくるのはルボルグ隊長か?
こいつも、すっきりした顔してるぜ。
「コーキ殿の姿が見えないのですが?」
「ああ、心配はいらねえぞ。しょっちゅう消えちまうけど、すぐ戻って来るからよ、あいつは」
「それなら……」
「どうした? 問題でもあんのか?」
「今後の方針をもう一度確認する必要がありまして」
「だな」
「エンノアの民と親しいコーキ殿がいないことには……」
コーキがいなけりゃ、話し合うこともできねえ。
何とも情けない話だが。
仕方ねえか。
「……」
「……」
なんて思ってるところに。
「コーキ殿!」
戻ってきやがった。
相変わらずタイミングを理解してる野郎だぜ。
「今朝は、どこ行ってたんだ?」
「悪い。地中を見回っていたら遅くなった」
疲労の溜まった体で、こんな早朝から?
いや、コーキならあり得るな。
「コーキ殿、お待ちしておりました」
「隊長……。どうかしましたか?」
「ああ、今後の方針を話し合おうってよ」
「なるほど」
「コーキ殿、ヴァーン殿。どうぞ、あちらの部屋へ」
今回エンノアに提供された家屋の中で最も大きいこの家の一室。
そこに集まっているのは、いつもの面々だ。
「セレスティーヌ様、これからもう一度我らの進むべき道を確認したいと思います」
「……はい」
方針の確認。
といっても。
これからオルドウに向かうか、エンノアに留まるか?
まずは、その択一だけ。
こいつが決まらないことには、何も始まらねえ。
で、方針が決まったら、詳しい内容を考える必要がある。
どれくらいエンノアに留まるのか?
ここでレザンジュ王軍を迎え撃つのか?
オルドウに長期潜伏するのか?
それが可能なのか?
無理なら、どこに行くか?
他国に逃れるのか?
「……」
どう考えても、簡単じゃねえなぁ。
ありがてえことに、エンノアの皆は好意的で、ここに残るよう言ってくれるけどよ。
はぁ~~。
っとに、悩ましいぜ。
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