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第8章 南部動乱編
まだ終わらない
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<イリアル視点>
「思ったより早く決着が付きましたねぇ」
「……子爵次第で、もっと被害を抑えることもできたはずだがな」
「そりゃそうですけど、簡単に決断できることでもありませんしね」
「……」
「こんなもんでしょ」
今回の攻城戦。
開戦前から寝返りの可能性は十分に考えられていた。
家門繁栄を第一とするトゥレイズ子爵に働きかけることは、そう難しいことでもなかっただろうからな。
とはいえ、戦は水物。
戦況次第で子爵の心がどう動くのか?
まったく分かったもんじゃない。
ってことで、こっちは開戦以降慎重な攻めに終始してきたわけだ。
「想定の倍の損害は軽くないぞ」
まっ、6万という圧倒的多数で攻めながら、それなりの損害を受けちまった攻城戦に愚痴を言いたくなる気持ちも理解できる。
とはいえ、悪い戦果じゃねえだろ。
「難攻不落と称されるトゥレイズ城塞をこの短期間で落としたんです。好しと考えるべきですよ」
「……」
満足できねえってか。
潔癖で完璧主義のトゥオヴィらしいぜ。
けどよ。
おまえは攻城戦の指揮官どころか、大隊の長ですらねえんだぞ。
「……そうだな」
おっ?
「イリアルの言う通りだ」
今日は素直じゃねえか。
「どうも、いかんな。つい焦ってしまう」
「エリシティア様ですね」
「……うむ」
今は白都にいる王女エリシティア。
こっちは遠く離れた辺境の城塞にいるってのに、相変わらずトゥオヴィの心は王女様でいっぱいか。
ほんと、呆れた忠誠心だよ。
「ですがまあ……これで南部侵攻も終了でしょ」
終戦となれば、黒都に戻ることができる。
場合によっちゃあ、白都までエリシティアに会いに行けるんじゃねえのか。
「うむ。大規模な軍事行動はこれで終わりだろう。ただ……」
「神娘ですね?」
「逃走を許してしまったからな。彼の者を捕らえるまでは南部侵攻が終了したことにはならぬ」
「そうはいっても、神娘を護るのは少数のワディン騎士でしょ。なら、難しい追跡じゃない。捕縛は他の者に任せて、トゥオヴィ様は黒都に戻れるのでは?」
数字上は容易なこと。
けど、実際は……。
「ローンドルヌを突破した猛者たちだぞ。侮れる相手ではない」
良く分かってるな。
って、当たり前か。
トゥオヴィはあの戦いを指揮してたからな。
「神娘を容易に捕縛できるとは思えん」
「追跡部隊によりますよ」
「……」
で、その追手はどんなもんだ?
「……200名の部隊を複数差し向けているらしい」
「200ですかぁ」
並の兵士200じゃあ、無理だろ。
「トゥオヴィ様は進言しなかったので?」
「したに決まっておろう」
「ってことは?」
「少数のワディン騎士への対応など、200で十分とのことだ」
「……」
上は、奴らの力を過小評価してると。
まっ、常識的に考えりゃ、妥当な兵数だけどよ。
「……難しい、か」
その通り。
ほんと、上の奴らは分かってねえなぁ。
ローンドルヌ大橋での戦闘報告は上げてんのによ。
「あのワディン騎士たち、それにダブルヘッドまでいるのだからな」
間違いねえ。
そいつらだけでも十分な戦力だ。
けどよぉ、トゥオヴィ。
ひとつ抜けてるぞ。
あのバケモンだ。
神娘の傍には、常にあいつがいるんだぜ。
って、おまえは知らないんだったな。
とにかく。
バケモンが神娘を護っていることは確実。
それだけで、追跡捕縛がどんだけ困難になることか。
「思ったより早く決着が付きましたねぇ」
「……子爵次第で、もっと被害を抑えることもできたはずだがな」
「そりゃそうですけど、簡単に決断できることでもありませんしね」
「……」
「こんなもんでしょ」
今回の攻城戦。
開戦前から寝返りの可能性は十分に考えられていた。
家門繁栄を第一とするトゥレイズ子爵に働きかけることは、そう難しいことでもなかっただろうからな。
とはいえ、戦は水物。
戦況次第で子爵の心がどう動くのか?
まったく分かったもんじゃない。
ってことで、こっちは開戦以降慎重な攻めに終始してきたわけだ。
「想定の倍の損害は軽くないぞ」
まっ、6万という圧倒的多数で攻めながら、それなりの損害を受けちまった攻城戦に愚痴を言いたくなる気持ちも理解できる。
とはいえ、悪い戦果じゃねえだろ。
「難攻不落と称されるトゥレイズ城塞をこの短期間で落としたんです。好しと考えるべきですよ」
「……」
満足できねえってか。
潔癖で完璧主義のトゥオヴィらしいぜ。
けどよ。
おまえは攻城戦の指揮官どころか、大隊の長ですらねえんだぞ。
「……そうだな」
おっ?
「イリアルの言う通りだ」
今日は素直じゃねえか。
「どうも、いかんな。つい焦ってしまう」
「エリシティア様ですね」
「……うむ」
今は白都にいる王女エリシティア。
こっちは遠く離れた辺境の城塞にいるってのに、相変わらずトゥオヴィの心は王女様でいっぱいか。
ほんと、呆れた忠誠心だよ。
「ですがまあ……これで南部侵攻も終了でしょ」
終戦となれば、黒都に戻ることができる。
場合によっちゃあ、白都までエリシティアに会いに行けるんじゃねえのか。
「うむ。大規模な軍事行動はこれで終わりだろう。ただ……」
「神娘ですね?」
「逃走を許してしまったからな。彼の者を捕らえるまでは南部侵攻が終了したことにはならぬ」
「そうはいっても、神娘を護るのは少数のワディン騎士でしょ。なら、難しい追跡じゃない。捕縛は他の者に任せて、トゥオヴィ様は黒都に戻れるのでは?」
数字上は容易なこと。
けど、実際は……。
「ローンドルヌを突破した猛者たちだぞ。侮れる相手ではない」
良く分かってるな。
って、当たり前か。
トゥオヴィはあの戦いを指揮してたからな。
「神娘を容易に捕縛できるとは思えん」
「追跡部隊によりますよ」
「……」
で、その追手はどんなもんだ?
「……200名の部隊を複数差し向けているらしい」
「200ですかぁ」
並の兵士200じゃあ、無理だろ。
「トゥオヴィ様は進言しなかったので?」
「したに決まっておろう」
「ってことは?」
「少数のワディン騎士への対応など、200で十分とのことだ」
「……」
上は、奴らの力を過小評価してると。
まっ、常識的に考えりゃ、妥当な兵数だけどよ。
「……難しい、か」
その通り。
ほんと、上の奴らは分かってねえなぁ。
ローンドルヌ大橋での戦闘報告は上げてんのによ。
「あのワディン騎士たち、それにダブルヘッドまでいるのだからな」
間違いねえ。
そいつらだけでも十分な戦力だ。
けどよぉ、トゥオヴィ。
ひとつ抜けてるぞ。
あのバケモンだ。
神娘の傍には、常にあいつがいるんだぜ。
って、おまえは知らないんだったな。
とにかく。
バケモンが神娘を護っていることは確実。
それだけで、追跡捕縛がどんだけ困難になることか。
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