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第7章 南部編

異なる世界 10

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 この地が怪物の創り出した異界だというのは、まだ想定内。
 ただ、ここが貯蔵庫だったとは……。

 完全に食料扱いかよ。


「ここが奴の創り出した異界だとすると、奴を倒せばここから出ることができる」

「確かなのですか?」

 そこが知りたかった。
 敵を倒したのに、異界に閉じ込められたままなんて洒落にもならないからな。

「魔物の創り出す異界は、創造主を消した時点で消え去るはず。つまり、この異界が消えエビルズピークに戻ることができるはずだ」

 剣姫が断言してくれるのなら、まず間違いはない。

「もちろん、他の脱出手段もあるだろう。暗闇を突き進めればエビルズピークに戻れるかもしれんしな。だが……」

「他の方策が見つからない現状では、あいつを倒すしかないと?」

「うむ」

「問題はどうやって倒すかですね」

「……簡単ではないな」

「ええ。ただでさえ倒すのが難しいのに、こうしてこの地から消えることもできるのですから」

「……」

「……」

 とんでもない防御力を誇るあの魔物に対し、これまでの2度の戦闘では大きなダメージを与えることができていない。

 そんな鉄壁の魔物が自由にこの地から消えることができる。
 これはもう、討伐困難としか思えない。

「それでも、倒すしかない」

「……そうですね」

 剣姫の言う通り。
 脱出口が見つからないのなら。
 あいつを倒すしかない。

「そのためには闇雲に戦っても無駄だろう。方策を考える必要がある」

「ええ。色々と探りながら戦いましょう」

 幸いなことに、あいつは防御力は高いものの、敏捷性はそれほどでもない。
 攻撃も威力はかなりのものだが、攻撃そのものが単調。
 注意さえしていれば、痛手を受けることはまずないと考えられる。

 なら、あいつと何度も戦い、倒す術を探ればいい。

「とりあえず今は、あいつの出現を待つだけですね」

「うむ」

 なんてことを話していたら。
 少し先の空間に歪みが……。

「現れましたよ」




**********************




「グルゥゥ……」

 何なんだこいつらは!

 もう3度目だというのに倒すことができない。
 何度襲っても、避けられてしまう。

 攻撃が当たらない……。


「鱗と鱗の隙を突いてみましょう」

「了解だ」

 こいつらの攻撃は恐れるほどじゃないのだが、とにかく動きが早い。
 素早過ぎる。

「駄目です。効いてませんね」

「……」

 鬱陶しい。

「では、また魔法で援護します。雷撃!」

「グウゥゥ!」

 それに、この魔法。
 僅かではあるが、身体が痺れてしまう。

 鬱陶しい。
 煩わしい。
 イライラする。

 素晴らしい食材だと思って、この箱の中に捕まえたというのに。
 喰らうことができないなんて。

 今日もまた、無駄に時が過ぎていく。

「グルゥゥ……」

 ああ、腹が減ってきたぞ。


「次は背中を攻撃してみましょうか」

「うむ、試してみよう」


 ……やめだ。

 今回はもうやめだ。
 とりあえず食事。
 食料を持って、寝床に戻るぞ。

 少し味は劣るかもしれないが、食材は山のようにある。

 こいつらは……。

 また今度だ。
 どうせ、この箱の中からは逃げられないのだからな。



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