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第6章 移ろう魂編

魔剣士 8

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<ヴァーンベック視点>



「ぅぅ……」

 堪らず隊長が蹲る。

 ほんと、すげえ。
 剣も身のこなしも、恐ろしいくらいに冴えている。

 けど、まだだ!

「……」

 もう俺の剣が剣姫に届く。
 当たれぇ!!

 キン!

 くっ、これでも駄目。
 ディアナの攻撃を弾いた剣をもう戻しやがった。

「つぅ……」

 その上、この衝撃。
 弾かれた剣を持つ俺の右手が痺れ。
 衝撃で体が泳いじまう。

 結局、全部防がれたのかよ。

 それでもだ。
 まだ終わってねえ!

「アイスアロー!」

「たぁ!」

 隊長は動けねえが、3人は戦える。
 ユーフィリアの魔法、ディアナの剣撃。

「だっ!」

 そして、俺の一撃だ。

 決まれ!
 決まってくれ!!

 パリン!

 キン!

 アイスアローを砕き、ディアナの剣を再び弾き。
 俺の剣を躱して、鞘で打ちつけてくる。

 ドスッ!

「痛ぅ!」

 みぞおちを庇った左腕が、剣姫の鞘をまともに受けちまった。
 その痛みで動きが止まった俺の眼前。

「うっ!」

 剣姫の細剣がディアナの胸をとらえ。
 ディアナが昏倒。

 崩れ落ちるディアナに剣姫は一瞥もくれず。
 粘水と泥で動きづらいはずの地を蹴り。
 跳躍する。

「アイスウォ……」

 着地先はユーフィリアの正面。
 魔法発動直前のユーフィリアをしたたかに打ち据え。
 またも圧倒……。

 この間、数瞬。
 ほんのわずかな間に、全員が圧倒されてしまった。

「……」

 ワディン騎士、ルボルグ隊長、ディアナ、ユーフィリア、俺。
 剣姫ひとりに全員が?
 こんな簡単に!?

「っ!」

 地面に伏しているのはディアナとユーフィリア。

 剣姫の攻撃は、魔力を纏った剣腹でのもの。
 斬られたわけじゃない。

 だから、命は落としていないだろう。
 が、剣撃の威力は充分。

 ディアナもユーフィリアも完全に意識を手放している。

「ぅぅ……」

 隊長は意識はあるが、動けない状態。

 動けるのは俺だけ。
 俺だけだ。


「お見事です。さすが、イリサヴィアさんだ」

「まだ終わっていない」

「終わったようなものですよ」

「……」

「まっ、あなたが現れた時点で終わったも同然なんですけど」

「饒舌だな、メルビン」

「イリサヴィアさんの剣撃に感服したもので」

「やはり、饒舌だ」

「そうですかねぇ」

 もう無理。
 倒すことなんて無理だ。

「……そこのお前、どうする?」

 どうしようもねえ。
 けどよ、シアたちが逃げていれば、それでいい。

「……」

 って、おい!
 何でまだそこにいるんだ!
 この状況で留まってどうする!

「シア、すぐにここを離れろ!」

「無駄だ」

「……」

 こうなりゃ、仕方ねえ。
 無理でも無駄でも、最後まであがいてやるよ。

 いくぞ!

「ファイヤーボール!」

 シュン!

「ファイヤーボール!」

 シュン!

「ファイヤーアロー!」

 シュン!

「はあ、はあ……」

 くそっ!
 3連続で精いっぱいかよ。

「詠唱をせずにこの発動速度。なかなかのものだな」

 よく言うぜ。
 全く通じないじゃねえか。

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