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第5章 王都編
王都の長い夜 1
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訓練所での手合わせを終え、お互いの健闘を称えるように握手を交わしたあと。
これまでの勢いが消し飛んだかのような顔をのぞかせるヴァルターさん。
「あ~、さっきは実力を疑うような態度をとってしまい申し訳なかった」
そういうことか。
「いえ、5級の冒険者を疑うのは当然ですよ」
「まあ、そうなんだが……。とにかく、すまなかった」
「気にしないでください」
「いいのか?」
良いも悪いもない。
謝ってもらいたいなんて、こっちは思っていないのだから。
「コーキさん……」
一転して、感激したような面持ち。
ヴァルターさん、感情が豊かなんだろうな。
「あんたぁ、いい奴だ!」
「……」
ヴァルターさんの率直な物言いに対し、返答に困っていると。
こちらに近づいて来たウィルさんが。
「だから、コーキさんは強くて、いい人だって。何度も言ったでしょ」
「お嬢、いい人だとは聞いてませんよ」
「……とにかく、これで護衛の話は終わり」
「ええ、コーキさんなら問題ないですな」
「さっきの今でよく言えるわね」
これはカロリナさん。
なかなか厳しいことを言ってくれる。
「ん? さっきとは事情が違うだろ」
「はぁ~、これだから、あんたは」
「何だ?」
「何でもないわ」
「……」
話を続けてくれるのはいいんだけど、護衛問題が解決したのなら。
「とりあえず、ここから出ませんか?」
訓練所に残っている冒険者たちが、今にも話しかけてきそうだからさ。
もう厄介事は勘弁してもらいたい。
「おっ、そうだな。よし、裏口に来てくれ」
「分かりました」
「ギルドに報告しなくていいのかい?」
「ああ~、まっ、明日でいいだろ。今本館に戻ると色々うるさそうだしな」
それは、ありがたい。
今日はなかなか大変な一日だった。
ゆっくりと王都を散策するつもりだったのに、小広場での昼食後はもう……。
怒涛のように時間が流れていったよ。
まっ、それでも悪い時間じゃなかったかな。
コルドゥラの蛮行以外は……。
さてと。
これから宿に戻るか、外で夕食をとるか?
「どうするかな?」
裏口から訓練所を出たところでウィルさんたちとは別れ、ひとり大通りを歩いているのだが、夕食をどうするか迷ってしまう。
せっかくの王都なのだから外で食事をしたいところではあるけれど、かなり疲れたからなぁ。
などと考えているうちに行政区を抜け広場に到着。
ここはファミノとダンスをした小広場じゃない。
夕方に通り過ぎた、あの美しい大広場だ。
今は日も暮れたとあって、魔道具の照明で綺麗にライトアップされているようだな。
「……」
広場中央に見えるのは自然に囲まれた円形の噴水。
夕闇の中で光を受けるその姿は……。
地上から数メートル上空に打ち上げ続けられる清流。
頂上で花弁を開くように、四方に水飛沫を放っている。
そこに7色の光が照らされ、きらきらと幻想的な光の粒を……。
美しい。
それ以外の言葉が出てこない。
幽玄ともいえる光景に、立ち止まって見惚れてしまう。
「……」
昼間と違い、広場の中は静かなもの。
その静穏とした空気と格別の眺めに、時間を忘れてしまいそうだ。
数分は経っただろうか?
「無粋だな……」
この幸せな時間を破ったのは、広場を駆ける男たち。
数人の不審な男たちが、今まさに広場を駆け抜けて行った。
あやしい……。
まっ、俺には関係ないか。
ということで、雑念を払い。
静寂を取り戻した広場で、再び癒しをもらっていると。
今度は大きな足音が聞こえてくる。
こんな美しい夜の広場に。
ほんと、粋じゃない。
と……。
「おい、コーキじゃねえか!」
この声は……。
「ギリオン?」
「んん? おめえ……コーキか?」
頬に汗を流しながら上気した顔で話しかけてくるのは、間違いない、ギリオンだ。
「なんで、コーキがこんな所にいんだよ?」
それはこっちのセリフだろ。
これまでの勢いが消し飛んだかのような顔をのぞかせるヴァルターさん。
「あ~、さっきは実力を疑うような態度をとってしまい申し訳なかった」
そういうことか。
「いえ、5級の冒険者を疑うのは当然ですよ」
「まあ、そうなんだが……。とにかく、すまなかった」
「気にしないでください」
「いいのか?」
良いも悪いもない。
謝ってもらいたいなんて、こっちは思っていないのだから。
「コーキさん……」
一転して、感激したような面持ち。
ヴァルターさん、感情が豊かなんだろうな。
「あんたぁ、いい奴だ!」
「……」
ヴァルターさんの率直な物言いに対し、返答に困っていると。
こちらに近づいて来たウィルさんが。
「だから、コーキさんは強くて、いい人だって。何度も言ったでしょ」
「お嬢、いい人だとは聞いてませんよ」
「……とにかく、これで護衛の話は終わり」
「ええ、コーキさんなら問題ないですな」
「さっきの今でよく言えるわね」
これはカロリナさん。
なかなか厳しいことを言ってくれる。
「ん? さっきとは事情が違うだろ」
「はぁ~、これだから、あんたは」
「何だ?」
「何でもないわ」
「……」
話を続けてくれるのはいいんだけど、護衛問題が解決したのなら。
「とりあえず、ここから出ませんか?」
訓練所に残っている冒険者たちが、今にも話しかけてきそうだからさ。
もう厄介事は勘弁してもらいたい。
「おっ、そうだな。よし、裏口に来てくれ」
「分かりました」
「ギルドに報告しなくていいのかい?」
「ああ~、まっ、明日でいいだろ。今本館に戻ると色々うるさそうだしな」
それは、ありがたい。
今日はなかなか大変な一日だった。
ゆっくりと王都を散策するつもりだったのに、小広場での昼食後はもう……。
怒涛のように時間が流れていったよ。
まっ、それでも悪い時間じゃなかったかな。
コルドゥラの蛮行以外は……。
さてと。
これから宿に戻るか、外で夕食をとるか?
「どうするかな?」
裏口から訓練所を出たところでウィルさんたちとは別れ、ひとり大通りを歩いているのだが、夕食をどうするか迷ってしまう。
せっかくの王都なのだから外で食事をしたいところではあるけれど、かなり疲れたからなぁ。
などと考えているうちに行政区を抜け広場に到着。
ここはファミノとダンスをした小広場じゃない。
夕方に通り過ぎた、あの美しい大広場だ。
今は日も暮れたとあって、魔道具の照明で綺麗にライトアップされているようだな。
「……」
広場中央に見えるのは自然に囲まれた円形の噴水。
夕闇の中で光を受けるその姿は……。
地上から数メートル上空に打ち上げ続けられる清流。
頂上で花弁を開くように、四方に水飛沫を放っている。
そこに7色の光が照らされ、きらきらと幻想的な光の粒を……。
美しい。
それ以外の言葉が出てこない。
幽玄ともいえる光景に、立ち止まって見惚れてしまう。
「……」
昼間と違い、広場の中は静かなもの。
その静穏とした空気と格別の眺めに、時間を忘れてしまいそうだ。
数分は経っただろうか?
「無粋だな……」
この幸せな時間を破ったのは、広場を駆ける男たち。
数人の不審な男たちが、今まさに広場を駆け抜けて行った。
あやしい……。
まっ、俺には関係ないか。
ということで、雑念を払い。
静寂を取り戻した広場で、再び癒しをもらっていると。
今度は大きな足音が聞こえてくる。
こんな美しい夜の広場に。
ほんと、粋じゃない。
と……。
「おい、コーキじゃねえか!」
この声は……。
「ギリオン?」
「んん? おめえ……コーキか?」
頬に汗を流しながら上気した顔で話しかけてくるのは、間違いない、ギリオンだ。
「なんで、コーキがこんな所にいんだよ?」
それはこっちのセリフだろ。
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