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第5章 王都編

エリシティア 1

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 レザンジュ王国の第一王女!?
 それはもう、正真正銘のお姫様じゃないか。

 ちょっと待ってくれよ。
 高位貴族のお姫さまだと思ってたのに……。


「それで、私はウォーライルと申しまして、エリシティア様の護衛隊の指揮をしております」

「……」

 この所作、立ち居振る舞い。
 ウォーライルさんも高位の貴族なんだろう。

 一国の王女様に御付きの高位貴族。
 しかも、隣国レザンジュの。

 セレス様のワディン家と争っているレザンジュ王家の……。

「あらためて、この度のことお礼申し上げます。それで……」

 まずい。
 こっちも名乗らないと。

「申し訳ございません。名乗るのが遅くなりました。私は冒険者をしているコウキと申します。さっきまで一緒にいたのは旅で知り合ったジンクさんという方で、料理人とのことです」

 正直、レザンジュという国には思うところもある。
 けれど、そこは今考えることじゃない。
 いったん頭からなくして。
 丁寧に対応を……。

「コーキ様に、ジンク様ですね」

「冒険者に料理人、か。とても、そうは見えぬな」

 ジンクが料理人に見えないのは理解できるが、俺は冒険者に見えるのでは?
 どこかおかしいのか?

「そうでございますな。コーキ様もジンク様も素晴らしい腕前でしたから」

「……」

「我らは最初の魔法発動の瞬間は見ておらぬのだがな」

「ですが、その後の結果を見れば明らかかと」

「うむ、その通りだ」

 レザンジュの王女様にこんなことを目の前で話されても、こちらとしては反応に困るだけ。
 どうにも、落ち着かない。
 この場を早く去りたい。

「それで、コーキ様はキュベルリアに向かう途中ですかな?」

「はい。これから王都に向かうところです」

「目的地が我らと同じということは……」

「あの、ウォーライル様。その敬称をつけて私のことを呼ぶのは、やめていただけないでしょうか? 私は一介の冒険者ですので」

 高位貴族であろうウォーライルさんに様と呼ばれるのは気が引ける。
 周りの目もあるし、面倒なことになるとしか思えない。

「いえ、コーキ様はエリシティア様の命の恩人ですから、そういうわけにはまいりません」

「……恐縮してしまいますので、何とかなりませんか」

「ウォーライルよ、本人が望んでおるのだ。聞いてやるが良い」

「はっ! それでは、コーキ殿とお呼びしても?」

 それなら、まだましだな。

「それでお願いします」

「では、コーキ殿。私にも敬称はやめていただけますかな?」

「……ウォーライルさんと呼んでも良いでしょうか?」

「もちろんです」

 はぁぁ。
 こんなやり取りだけでも疲れてしまう。

 やっぱり、貴族との付き合いは苦手だ。
 体力も精神力も消耗するよ。
 続けられるもんじゃない。

 けど……。

 セレス様たちとは気楽に話せている。
 不思議なことだ。


「キュベリッツの王都に着いたら、相応の礼をせねばならんな。ウォーライル、分かっておるな」

「承知しております。コーキ殿、この御礼は後ほど必ずいたしますので」

「……ありがとうございます」

 これ、断るわけにはいかないか。
 となると、王都到着後に王女様のもとに足を運ぶ必要が?

 また、こんなやり取りを……。

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