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第4章 異能編
廃墟ビル 8
しおりを挟む「ガシャーン!」
「バリーン!」
「ドゴーン!」
屋上に広がる光景。
それは、まさに異能者の戦闘そのもの。
炎と氷が飛び交う中、尋常ではない速度で攻防が繰り広げられていた。
「えっ!」
分かってはいたことだけれど。
「……」
確実に見られてしまったな。
「これって? 有馬くん!」
「静かに。ひとまず、こっちに隠れよう」
疑問でいっぱいといった表情の里村と共に非常階段を離れ、通常の出入り口の陰に隠れる。
と、そこに転がされていた物体?
こいつは?
「うぅ!」
両手両足を拘束され、口にはガムテープ。
「うっ、ううぅ!」
敵方のようだな。
となると、ここは放置?
いや、眠ってもらうか。
そいつの胸に手を当て、寸勁を発動。
と同時に少しばかり魔力を流し込んでやる。
「ぐっ……」
これで、しばらくは目を覚まさないだろう。
「有馬くん?」
「説明は後でする。今は静かに」
「……うん」
とりあえず、里村のことは後回し。
それで、戦況は?
「……」
古野白さん側は3人、敵対する相手は2人。
今は両陣営共に距離をとって対峙している状態か。
さっきまでの異能による戦闘の痕跡が、そこかしこに残っている。
ここには、どんな異能者がいるんだ?
古野白さんが火を使うということは知っている。
氷を使う者もいるだろう。
残りの異能者は何を扱う?
この後の戦闘に対する判断基準の1つとして、知っておきたい。
「……」
そうだ!
進化を遂げた俺の鑑定で分かるんじゃないのか。
こっちの人間を鑑定したことはないけれど、この世界でも俺の魔法は使えるんだ。
それなら、ステータス鑑定が使えてもおかしくはない。
今ここで試してみる価値は十分にある。
よし!
古野白さん側の2人を鑑定すべく、意識を集中して視線を送る。
少々距離があるが、どうだ?
上手くいったぞ1
武上 大志(タケガミ ヒロシ)
レベル 1
20歳 男 人間
HP 93
SP 71/102
STR 167
AGI 92
INT 148
<異能>
身体強化
「!?」
キャップをかぶっているあの男、武上なのか?
「間違いない……」
昼前の大学で見かけた時と同じ黒のタンクトップを着ている。
確かに武上だ。
あいつも異能者だったのか。
「……」
異能者であり、古野白さんとも付き合いがあったと。
そういうことか。
はぁぁ。
ホント、前回の人生で俺は何も見えてなかったんだな。
異能者と知り合っていたというのに。
「有馬くん、間違いないって何?」
こちらに顔を寄せ、囁くような小声で里村が尋ねてきた。
「……」
里村は武上に気付いていない様子。
なら。
「それも、あとでな」
「……分かったよ」
それにしても、世間は狭い。
その上、異能者であふれている。
いったい、どうなっているんだ?
「……」
まあ、今はゆっくり驚いている場合じゃないか。
鑑定を続けよう。
武上は見た目通りの身体強化の異能持ち。
十分戦えそうだな。
もうひとり、こちらは暑い中でもしっかりと濃紺のスーツを着こなしている。
この男性はというと。
鷹郷 洸一郎(タカゴウ コウイチロウ)
レベル 2
43歳 男 人間
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STR 138
AGI 103
INT 223
<異能>
操風
風を扱うことができる異能者か。
こっちはレベル2なんだな。
それで、この年齢ということは古野白さんの上司なのかもしれない。
この人が異能組織の上司。
「……」
できれば顔を合わすことなく、ここを去りたいものだ。
ところで、このステータス表示。
あちらの世界とは少し異なっている。
ギフトやスキルの代わりに異能が表示され、MPの代わりに異能のポイントであるSPが表示されている。
2つの世界で仕様を変えて鑑定が可能。
ほんと、トトメリウス様には感謝しかないな。
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