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第3章 救出編

捜索隊 1

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<冒険者ギルド長 バルドィン視点>



「タラム、この空気はダブルヘッドの影響か?」

「おそらくは。さっきダブルヘッドに遭遇する前にも、こんな空気を感じたような気がします」

「そうか」

 この空気が何であれ、今は進むしかないのだがな。

「ギルマス、こっちです」

 タラム先導のもと、さらに捜索しながら進んでいると。

「ギルマス、あれは?」

「ザンジブ達か?」

 樹々の合間から現れたのは、タラムとパーティーを組んでいるザンジブとエレナ、ランセル、それにゾルダーか。

「お、お前ら」

 儂の前を歩いておったタラムが4人に駆け寄る。

「良かった、無事だったんだな」

「タラムこそ、無事に脱出できたんだな」

「俺のことはいいんだ、お前たちを置いて逃げたんだから」

「違うでしょ。助けを呼びに行ってくれたんじゃない」

「そうだぞ」

「お前ら……」

 4人ともに無事で良かった。
 だが、まだ終わりじゃない。
 タラムには悪いが、無事の再会を喜んでいる余裕はないぞ。

「タラム、ザンジブ、感動の再会は後にしてくれ。今は時間がない」

「ああ、そうですね。まずは状況の確認をしないと。ザンジブ、エレナ、ランセル、ゾルダー、お前らダブルヘッドからどうやって逃げたんだ」

「それは……逃げたというか」

 エレナが口ごもっている。

「実は……」

 それから聞いた話は俄かには信じがたいものだった。

 結果、儂だけではなく救出に来たメンバー全員が儂同様に呆然としておる。
 それも当然だ、まだ新人の冒険者であるコーキが単独でダブルヘッドを撃退したというのだから。

 コーキが新人離れした腕を持つことは報告で上がってきておったから儂も知っている。
 しかし、単独でダブルヘッドを撃退する腕を持つとは聞いておらんぞ。
 そこまでの強者なのか。

 運が良かった、ということか。

 いや、運でダブルヘッドを撃退することはできんな。

 今回の騒ぎが収まったら、褒賞を含めコーキへの対応をじっくり考えねばならんようだ。

 と、それより今は。

「そのダブルヘッドは、まだ生存しておるのだな?」

「はい、テポレン山の方に逃げていきました」

「ダブルヘッドが逃げて行った、か……」

 その事実に、また皆が黙り込む。

「その後をあの魔剣士が追いかけて行きました」

 そんな我々に、エレナが情報を補足する。

「ふむ……。では、未だこの森の中にダブルヘッドが2頭生息しておると」

「はい」

「そうか。では、お前たち、捜索を続けるぞ」

「バルドィン様、我々はどうすれば?」

「ああ、すまん。お前たちは先にオルドウに戻るように。ここからなら4人でも問題ないだろ。いや、タラムも一緒に戻るか?」

 4人から聞いた以上のことをタラムが知っている訳でもない。
 ならば、タラム抜きでも問題はない。

「ですが」

「おう、遠慮は要らねえぜ。今日のタラムは十分活躍したんだからよ。そうですよね、ギルマス」

「その通りだ」

 冒険者の1人の発言に頷きを返す。

「それでしたら、はい」

「ふむ、5人とも疲れておろう。今日はゆっくり休め。ただし、明日は朝からギルドに顔を出してもらわねばならん。良いか?」

「もちろんです」

「では、オルドウに戻ってゆっくり休め」

「ありがとうございます、バルドィン様。それに、みんなも助けに来てくれて感謝する。常夜の森に残っている奴らも助けてやってくれ」

「ギルマス、皆さん、助かりました。感謝いたします」

「ありがとう。助かった」

 タラムも含め、皆が安心したような顔をしておる。
 それも当然だな。

「俺たちは戻りますが、捜索気をつけてください。ダブルヘッドは健在なのですから」

「分かっておる」

「では、これで」

「おう」

「気をつけろよ」

「お前たちこそな」

 タラムらが去って行くのを見送る冒険者たち。
 ふむ、常夜の森に入った頃に比べると随分と落ち着いておるな。

 ザンジブたち4人の救出、1頭のダブルヘッドが手負いと判明、さらにダブルヘッドを撃退可能な冒険者の存在。

 落ち着く気持ちも理解できるな。
 だが、まだ捜索の最中。
 油断は禁物だ。

「捜索を続ける」



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