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第3章 救出編
魔落 9
しおりを挟む「そうです。その微笑みが見たかった」
「そんな……。面白いお方」
少しは気分も変わったかな。
こんなことで元気が出てくれるなら安いものだ。
とはいえ、無理して笑顔を作ってもらうというのは避けないとな。
それはそれでストレスの原因になるのだから。
ゴブリンとの戦闘のおかげで遅くなってしまったが、昨夜同様の携帯食での昼食を済ませ、探索を再開。
やはり、砂地に岩という景色に変化はなく、脱出の手がかりはつかめないまま。
そのまま探索を続けると。
2種類の魔物と連続して遭遇。
大型の蜥蜴のような魔物と巨大な蛙のような魔物だ。
ともに強力な魔物だったが幸いなことに1頭ずつの遭遇だったため、そう苦労することなく倒すことができた。
蜥蜴魔物も蛙魔物も黒ゴブリンと同等か少し上のレベルといったところ。
この大空洞内には、それなりに強い魔物しかいないのかもしれないな。
やはり、魔落。
その可能性は高いか。
2種類の魔物との遭遇後も探索を続ける。
本当に変わりのない眺めが続くばかり。
先も見えない。
これは、どこまで続くんだ?
テポレン山の地中にしては広すぎるよな。
はるか地中まで落下してしまったということなのだろうか。
分からないことだらけだ。
とはいえ、セレスティーヌ様の前で不安な顔はできない。
今は前を向いて進むだけか。
探索を続けるしかない。
そのまま半刻ほどが過ぎたころ。
「コーキ様」
「ええ、今度は大丈夫です」
またしても、黒ゴブリンの集団に遭遇してしまった。
「ここで待っていてください」
セレスティーヌ様をゴブリンから見えない場所に残し。
戦闘を開始。
対ゴブリン集団戦は2度目。
同じ轍は踏まない。
まっ、前回も俺の失敗だけどな。
ということで、今回は魔法を多用し無難な戦いに終始。
おかげで、ほぼ無傷で倒しきることができた。
とはいえ、魔法の使い過ぎで魔力が枯渇しかかっている。
身体的にも疲労が溜まっている状態だ。
なので、休憩をとることになってしまった。
今回の休憩場所はただの岩陰ではない。
探索中に、空洞内で偶然見つけた小さな横穴だ。
小さいといっても、横穴の中は俺とセレスティーヌ様が休むには充分の広さがある。
大空洞内からは視認しづらい立地でもある。
休むには最適だな。
「思ったより広いですね」
「そうですね。しばらくは、ここで休みましょう」
「はい」
こうして中で休んでみると、随分と広く感じるな。
ふたりで休んでも、ゆっくり落ち着くことができそうだ。
「コーキ様は本当にお強いのですね」
岩肌を背にしてふたりで横に並んで座っていると、セレスティーヌ様がポツリとそんなことを呟いた。
「セレスティーヌ様のお力になれたのなら、良かったです」
「そんな、力になるどころではないです。コーキ様がいなければ、私は今ここで生きてはいません」
「……」
「何度も命の危険がありましたから。あの崖下で、そしてこの地下への落下で、本来ならもう命を落としていたと思います。仮に運よく生きのびたとしても、私には魔物に対する力もありません。それに、食料も……」
「……」
「私は運が良いのでしょうね」
運が良い?
そんなわけないだろ。
この状況で、そう口にするセレスティーヌ様の心情を思うと、言葉に詰まってしまう。
「……」
何としても、セレスティーヌ様を護ってここを抜け出さないとな。
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