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第2章 エンノア編

エンノア 12

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※ 少し入り組んでいますので、時系列を整理したいと思います。


病で亡くなったアデリナさんを救うためリセット
    ↓
薬草採取のためテポレン山に入った初日に戻る
    ↓
エンノア到着前に、ユーリアさんの姿を見て記憶が戻る
    ↓
戻った記憶を時系列で簡単に並べると

1 フォルディさんとユーリアさんを助ける
2 2頭目のブラッドウルフにユーリアさんが殺される
3 フォルディさん救出を皆に感謝されるが、心は晴れない
4 地下通路を案内される
5 宴でも気分は晴れず、宴に欠席したフォルデイさんが気になってしまう
6 就寝前、ゼミアさん、スペリスさんの会話の中に記憶操作を疑うような発言

    ↓ 
記憶操作を疑い考え込んでいる目の前でフォルデイさん、ユーリアさんがブラッドウルフに襲われる
    ↓
助けに向かう…… 今はここです。


*****************************




 くっ!
 やってしまった。

 今の状況は?

 すぐに、立ち上がり前方を確認する。

「フォルディ兄さま、逃げて、早く逃げて!」

「ユーリア、何を言ってるんだ。ボクがなんとかしてやる」

 そこか!

 なら、間に合う。
 大丈夫だ。

「だめ、ブラッドウルフになんか、もう」

「いいから、ボクが引きつけている間に、ユーリアは逃げるんだぞ」

 魔力を身体に循環させながら駆ける。
 ふたりのもとへ。
 もう見知らぬふたりじゃない、彼らのもとへ。

「いや、兄さま、やめて!」

「このままだと、ふたり共危ないんだ。ユーリア、分かるだろ」

 気配を消して静かに走る。

「いや、分からない」

 引き抜いた剣に魔力をまとわせる。

「……今から走ってあいつを引きつける。その隙に地下に逃げ込むんだ」

「いやよ」

 ブラッドウルフまでは20メートル。

 よし!
 充分間に合う。

「じゃあ、いくよ」

 拳大の石が数個浮き上がる。
 が、その必要はない。

「ふたりとも、そのまま動かないで!」

 叫びながら跳ぶように駆ける俺に気付いたふたり。
 必然、ブラッドウルフもこちらを振り返ろうとする。

 が、もう遅い!

 最後の一歩を跳躍!

 ブラッドウルフとの距離がなくなる。
 と同時にやつの首に剣を落とす。

 強力な魔力をまとった一撃が、その毛並みに沈みこむ。

 前回とは違う。
 冷静で冷酷な一撃。

 ……。

 驚愕に見開かれたブラッドウルフの眼。
 その身体は完全に動きを止め……。

 ドスン。

 その眼を閉じることなく、凶悪な顔が地面に転がった。

「なっ!?」

「えっ!?」

 振り抜いた剣を右に払い、血を飛ばす。
 そして……。

 ドオォォン!

 その巨体がエンノアの地に沈んだ。



「何が? えっ?」

「どうして? だれ?」

「……」

 まともに言葉も出ないふたり。
 呆然と立ちつくしているが、その身体には傷ひとつない。

 良かった……。

 安堵に胸をなでおろす。

 だが、まだ終わりじゃない。
 もう一頭、ブラッドウルフがいる。
 もうすぐここに現れるはずだ。

「あ、あの、ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「……まだです。話は後で」

「え?」

「まだ?」

「そこに隠れていてください」

 俺の後ろにある大きな岩。
 そこに隠れていてほしい。

「まだ何か?」

「静かに!」

 前回の状況を思い出す、というか、さっき見たばかりの記憶だ。
 鮮明に覚えている。

 あの時、ユーリアさんがいたのはあの辺り。
 ということは、ブラッドウルフはあちらから現れるのか?



 
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