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第1章 オルドウ編
序8
しおりを挟む『もういいかな』
その時、どこかから声が聞こえてきた。
周りにだれもいないのに。
『ああ、ワタシだよ』
「えっ、神さま?」
どこにいるの?
『キミの頭の中に直接話しかけているから、そこにはいない』
そうなんだ。
『では、クエストも終わったことだし、今からキミをこちらに戻そうと思う』
クエスト……。
そうだ!
クエストをするつもりで魔球合戦に出たんだった。
戻るのかぁ。
もうリーナにもオズにも会えないな。
そっかぁ……。
『もう十分に人助けをしたからね。では、戻すよ』
周りが全て白くなって……。
そしてあの白い場所にもどって来た。
目の前には神さま。
やっぱりキラキラしている。
「クエスト完了おめでとう。これで無事帰還できる」
「ありがとうございます」
「ふむ、しっかり話せるようになったね、それにこんな短期間で随分成長したみたいだ」
「神さまのおかげです」
成長なんてしたのかなぁ。
でも、神さまにほめられるのはうれしいな。
「そんなキミにご褒美だ。キミにギフトを与えよう。まあ、既に与えているものもあるんだがね」
「ギフト?」
「ああ、能力のことだよ。キミの新しい能力、新しい力だ」
えっ、えっ?
まさか魔法とか。
ぼくも魔法を使えるの?
でも、魔球合戦では魔力を使えていたような……。
「ホントですか」
魔法なら、すごくうれしい。
ホントにうれしい。
うれしすぎる。
「まあ、今回はこちらのミスだしね。賠償的な意味合いもあるのだけど、とにかくワタシの気持ちだよ。ただ無条件という訳にもいかないか……そうだね、そう、条件がある」
「……」
「次にワタシに会うまで、元の世界の人間に異世界のことを知られてはいけない。知られた場合……ギフトを喪失する」
知られちゃいけないってことは、人に話をしてはいけないってこと。
それなら、力を使っているところを見られるのもまずいかな。
ちょっとがっかりする。
でも、ひとりの場所なら力を使える。
使えないよりまし。
あっ、でも、まだ魔法とは決まってないんだった。
「……はい、分かりました」
力強くうなずき、神さまと約束した。
「では、元の世界に戻りなさい」
家に戻れるのはうれしい。
それはそうなんだけど…。
こちらに来た時は不安でしかたなかったのに…。
今はまたあの世界に行きたい気もちでいっぱいだ。
ワクワクするあの世界へ。
リーナとまた会いたい。
オズとも。
「……」
2人とも逃げられたかな。
無事だといいな。
でも、何から逃げてたんだろ。
……広場に集合できなくてごめん。
また会いたいよ。
会って、一緒に魔球合戦をやりたい。
今度はもっと上手くできるから。
でも、今日は帰らなきゃいけない。
……さびしいな。
でも、家に帰りたい気持ちもある。
お父さん、お母さんに会いたい。
なんだろ?
悲しいような、うれしいような、さびしいような、変な気持ちだ。
「準備はいいかな」
「……はい」
はずかしい。
神さまの前で、泣きそうな声になってしまった。
「ふむ、次に会う時まで約束を守れたら、今度はこちらの世界でも暮らせるようにしてあげよう」
「えっ?」
それって?
「では、元気で暮らしなさい」
神さまのその言葉とともに目の前が白くなり、かすんでいく。
けど。
ちょっと待って。
あの世界で暮らせる?
あの魔法の世界で。
そう言ったよね、神さま!
約束を守れたら。
リーナとオズにまた会える。
ほんとに?
「か、神さま、またぼくはあの世界に……」
最後まで言う前に何も見えなくなってしまった。
でも、神さまが笑ってくれたような、そんな気がしたんだ。
そうかぁ。
またあの世界に行けるんだ!!
それなら悲しくなんかない。
さびしくなんかない。
楽しみしかない!
なんだか、やる気が出てきたぞ。
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