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#4 自己紹介と美的感覚

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常識は疑え。古事記にも書いてある。


――


「落ち着きました?」
「んっ♡ ぁっ♡ は、はい♡ 大丈夫です♡」
「あっそう……」

 いやもうそんな艶っぽい声で鳴かれたらこっちが全然大丈夫じゃないんですけどそこんとこわかってんですかねこのプリティー人外幼女様は。竜娘でレースゲーム出せば流行るんじゃね? どう考えても語呂が悪いから却下な。

「と、とりあえず自己紹介もしてなかったのでまずは俺から――」
「あ、それは大丈夫です」
「えっ」
「主様のお名前をお聞かせ願えるなど我が一族の名誉が極み、至上の喜びに他なりません。ですが主様は尊く強き雄であらせられます。すなわち御身の名は我が魂に刻まれ目を合わせるだけで屈服しきってお情けを乞うこととなりお話どころではなくなってしまいますのでそれはまた後日に是非とも」
「えっ」

 ちょっと待って話がぶっ飛びすぎてておじさんついていけない。あとなんやねん尊く強き雄て。

「……えーっと? つまりなんだ、俺の名前を聞いただけでさっきみたいになりかねないと?」
「比ではありません」
「お、おう……」

 なにそれこわい。さっきのアレもだいぶイキ散らかしてたけど思うですがそれは……。ていうかあんな姿見られといて随分ケロっとしてらっしゃいますね。見た目の割にタフだな。そもこの子人間じゃなかったわ。
 まずどういう世界情勢なんこれ。終末にハーレムしちゃう系か? なんとなくそんな気はしてきたな。そうでもなきゃこの上位種がただの人間如きにこんな扱いせんやろ。

「じゃあ逆にお名前をお聞かせいただいても……?」
「…………え、っと」
「あ、ダメでした?」

 え、なにこの間。この世界じゃ男女問わず名前聞くとなんか呪われたり刻まれたりするん? 先走ったか……いやまあ既に先走ってるモノは相当量あるんだけど。正直目の前の幼女がドスケベ過ぎて辛抱たまらんです。

「それは……命令でしょうか?」

 なぜそうなる。

「いや、命令というかお願いというか」
「お願い……」
「そうそう」
「主様が私にお願い…………つまり主様が私を頼って下さっている……? こ、これはやはり好機なのでは……! 私の素顔を見てもこんな風に普通に接してくれてしかも名前まで……私の名前を聞いてくれる殿方なんて主様が初めて……。――――イケる! 苦節800年、遂に私にも番を得る千載一遇のその時が!!」
「うーんこの……」

 ちょっとあなた、心の声が駄々洩れでしてよ。せめて隠す素振りぐらいは見せなさいなんかの王なんだろ君は。ていうか800年も生きててその容姿なんですね合法ロリとかマジでこの世界業が深いな最高かよ。

「わかりました! こうなれば我が真名も主様に捧げ奉りましょう!!」
「声でっか」

 鼓膜破れるわ肺活量凄いな。目もめっちゃクワッ! ってなっとるし。
 あとなんか真名とか言っちゃってますけど大丈夫なんこの子。

「私は竜人王。通名に黒銀竜。真名をネラ・アルジェントと申します。どうか末永く主様のお傍に立つことをお許しください。いかなる艱難辛苦も我が吐息が消し飛ばし、御身に尽くすことをこの血肉と魂と名誉にかけて誓いましょう」

 こいつはくせぇッー! 厨二病のにおいがプンプンするぜッーーーーーッ! これは封印されし右腕()が実に良く疼きますねぇ。あと急にかっこよくなるんやめーやキュンキュンするやろ。

「今のは威厳を感じた。にしても竜人王は無理があるでしょ」
「ほんとなんですってばぁ……」


――


「つまり――、この世界の男は早い段階で成長止まって年をとっても小さなままで、そもそもの数が極端に少なく希少価値が高いと?」
「主様にとってはおかしなことなのですか?」
「そりゃおかしいもなにも……」

 ようやっとこの世界のことが聞けたと思ったらとんでもすぎて頭おかしくなりますよ。色んな種族がいるらしいがどの種も男女比1:10000もないとかいくらなんでも歪すぎるだろどうなってんねん。
 しかもこの竜人族、現状1万程度の個体は皆女ばかりで男は1人もいないらしい。雌の遺伝子強すぎんか? それとも雄の遺伝子がクソザコ過ぎて淘汰されてるのか。なんにしろこのままじゃ滅亡待ったなしだった訳だ。

「なんか呪われてない? 神様がいていたずらしてるとか?」
「どうなのでしょう、我々にとってはこれが普通ですから。神と呼ばれる存在もいるにはいますがそうそう姿を現すものでもないのでよくわかりません」

 あ、マジでいるんだ神様やっぱ異世界凄い。是非とも会ってみたいけど出現率激レアっぽいし会うのは無理かな。そもそも神様って地球基準だと禄なのいないから会わない方がいいかもしれん。人殺した数ダントツで神>悪魔だったりするし。

「その……主様の世界では私のような者が、えっと……美しいとされるのは本当なのでしょうか…………?」
「地球だと綺麗とか可愛いってレベルじゃないからね君」
「ほっぎゅ……♡♡ くっふ♡ …………で、でもまだ信じられません」

 お、今度はちゃんと耐えれたね偉い偉い。って言うのすら反応して即イキアクメ決めちゃうから迂闊に褒められないんだよなこの竜人王様……。どんだけ酷い扱い受けて来たんだよ。

「他種族の殿方は皆、私達の素顔を見ると卒倒なさるか泣いて許しを乞われるかの2択でしたので…………」
「うわぁ……」

 なんやその2択えぐ過ぎるやろ……。

「じゃあどんな顔ならいけるんだよそいつら……」
「あ! では主様の脳内に今話題の方々を投影しますね、皆さんほんとに素敵な方ばかりで多種族女性誌の表紙も飾られてるんですよ!」
「えっ。あ、いや、ちょっと待っ――」
「このオークの女性なんてとってもガタイが良くって毛深くて皴が凄くって」
「」
「こちらのゴブリン族の方は妙齢なのにまだまだお綺麗で太ましくてお鼻がとっても大きくて羨ましいですよね!」
「」
「このコボルトの女性もまだお若いのにも眉毛と髭がとても立派で――」
「」

 りゅうじんおう ネラ の SAN値への ダイレクトアタック!
 きゅうしょに あたった! こうかは ばつぐんだ!
 きゅうしょに あたった! こうかは ばつぐんだ!
 きゅうしょに あたった! こうかは ばつぐんだ!
 おとこは めのまえが まっくらに なった!


――


「二度とやるな」
「え、でも――」
「二 度 と や る な」
「アッハイ」


――


異世界で生きていくって大変なんだなぁ(白目)
多分力強さ=美とかそんな感じ。知らんけど。

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