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第五部 『帝国』編
459 「目覚めた後(2)」
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「それなら、クロやアイにも出来たんじゃあ? クロを先に神殿で覚醒させただけで、ハルカさんを治せたのか?」
「いいえ。覚醒しても、依り代をより相応しい状態にさせる事は出来かねます。
なお、儀式の前にミカンにわたくしの覚醒を行なっておりますが、わたくしの基本的な能力に変化は御座いません」
「フーン。それでさあ、今回の儀式魔法って、魂の状態とかはどのくらい関係してたの?」
ボクっ娘が次の疑問をぶつけたが、クロはそれには首を横に振る。
「ダンカルク様達の儀式を拝見する限り、魂自体に儀式魔法は及んでおりませんでした」
「ボクもまだ不安定な筈なんだけど、そういうのは何か出来たりしないんだね」
「左様です。それにレナ様は、今は安定して御座います」
「でも、完全に途切れてもないし、二人にもなってないんだよね?」
「左様です。ですが、非常に安定して御座います。それ以上の事は、わたくし達には測定や判断は不可能です」
「クロ達には不可能だけど、それ以上の存在ならいけるって事は?」
「不明です。「世界」ならば或いはと推測できますが、わたくし達には連絡を取る手段が御座いません」
「あるじゃない。恐らく一つ」
ボクっ娘とクロのやり取りに、ハルカさんが断言するように告げる。
そうだ、彼女はどこに向かうかとマーレス殿下達に既に告げてる。何か考えなりがあるんだろう。
そう思って視線を向けると、彼女の強い視線が注がれた。
「神々の塔へ行くって話がここで出てくる、で良いのか?」
「そういえば啓示を受けたとか言っていたが、あれはなんだ?」
「ああ、あれ? ああ言えば、こっちの世界の人は何も言えないでしょう。これは逃げないとって、思ったの。けど今のクロの話で、神々の塔に行く決心もついたわ」
「本当は行く気は無かった?」
「ええ。とにかく騒がれる前に、人の世界から離れたかったの。
聖地の結界を復活させるわ、第五列魔法を一人で使うわじゃあ、もう言い逃れできないもの」
言葉の後半がウンザリげだ。
そう言えば、でかい魔法を見舞った後に何もせずいたのは、やっちゃった的に呆然としてたんじゃないだろうか。
「で、私かクロから聞きたい事は他にある?」
一通り聞いて話してスッキリ顔のハルカさんが、周囲を見渡す。
そこに、かぶり付き状態なレイ博士が、ピシッと挙手する。
「この聖地の結界については?」
「私が目覚める前の事は知らないわ。寝てる間に、何かの声が聞こえたとか、力が流れたとか、逆に流れ出したとかも分からない。次は?」
「『神槍』の魔法は、儀式魔法でもらったのか?」
「いいえ。2年ほど前に覚えたわ。て言うかレイ博士、私のネームドの由来が『神槍』が使える事に由来してるの知らないんですか?」
「えっ? 鎧が光るのと、か、か、可愛いのが理由か、かとではないのか?」
「そんなのがネームド由来になるわけないでしょう。まあ、実験以外は大勢から支援を受けた実戦の一回きりだったから、一人で使えるようになって自分でも凄く驚いてるけど」
「出し惜しみではないのか?」
さらに質問を続けるレイ博士に、ハルカさんが小さく頷いて続けける。
「Aランク程度の魔力だと、大量の魔力が必要ね。何年も前の時は、どっちも大量の魔石と10人以上の支援が必要だったし」
「まあ第五列だとそんなもんだろうな」
「けど、あの魔法使うと、自前の魔力だけだとこれだけ魔力があっても一回でガス欠状態ね」
レイ博士の質問の最後に、ハルカさんが肩を竦める。
それを見つつトモエさんが小さく挙手。
「次はクロにいい?」
「何なりと。お答え出来る限りお話させて頂きます」
それに頷きつつ言葉を続ける。
「うん。ハルカに儀式魔法で施した時、依り代を用意する際に用いるのと似た処置って言ってたけど、それって私達の依り代を作る時の作業に近いの?」
「そう考えていただいて構わないかと」
「やっぱりそうか。あ、私もこのキイロから知識というか魔法もらう時、似たような遣り取りしてるんだ。だからショウと同じくらい接近戦できる上に魔法属性2つ有り。しかも魔法てんこもりっていうインチキしてるわけ」
まさにチートだ。
けど、トモエさんの言葉が確かなら、ハルカさんもそういう事だ。
ハルカさん自身も気づいたらしい。
「私の体も魔法属性二つのまま、脳筋ビルドと同じになったって事?」
「言葉のいくつかは理解しかねますが、身体能力は以前より向上しております」
「属性二つプラスのユニーク持ちの『ダブル』も居るという噂はあるし、儲け物と思っておけばいいんじゃないか?」
シズさんが投げやり気味に話をまとめる。
取り敢えず、オレの存在価値がまた下がったのは間違いなさそうだ。
そしてシズさんの言葉は続く。
「それでクロ、お前が覚醒後に増えた情報と能力は何なんだ? 人以外の姿を取れるようになった事もそうなんだろう」
「わたくしは依り代作成、周辺状況の認識が主な能力で、特化していると言えます。よって、知識に関しての増加は御座いませんでした。
また、変形能力ですが、形と基礎的な能力を真似ますが、高い能力は御座いません。それにこの能力は、わたくし以外の物の多くも出来ます」
「そう言えば、ミカンがハルカの鎧になっていたな」
「変態、変形能力とか、錬金術師としては夢の技術だな。スミレも、聖地に行った時に覚醒しよう」
「覚醒には同意ですが、元主人様の鎧には壊れてもなりたく御座いません」
「ま、マントとかローブは?」
「その程度なら、その辺の布切れでも纏って下さいませ」
横では、レイ博士とスミレさんが、また脱力系なコントを始めている。
けどこれで空気も弛緩してきたので、そろそろハルカさんとクロの話は終わりのようだ。
けど夕食までにはまだ時間がある。
そしてこれを話すのは、オレの役目だろう。
「じゃあ今度は、ハルカさんが寝ていた間に分かった事だな」
「話があるって言ってたわね。三週間も寝てたのなら、聞かないといけない事は沢山あると思うけど?」
「諸々もあるけど、一番大切な話」
「何? もったいぶらないでよ」
少し機嫌を損ねた表情だけど、次の言葉で彼女の全身が驚きに包まれる。
「ハルカさんは、死んでなんかいなかったんだ」
「いいえ。覚醒しても、依り代をより相応しい状態にさせる事は出来かねます。
なお、儀式の前にミカンにわたくしの覚醒を行なっておりますが、わたくしの基本的な能力に変化は御座いません」
「フーン。それでさあ、今回の儀式魔法って、魂の状態とかはどのくらい関係してたの?」
ボクっ娘が次の疑問をぶつけたが、クロはそれには首を横に振る。
「ダンカルク様達の儀式を拝見する限り、魂自体に儀式魔法は及んでおりませんでした」
「ボクもまだ不安定な筈なんだけど、そういうのは何か出来たりしないんだね」
「左様です。それにレナ様は、今は安定して御座います」
「でも、完全に途切れてもないし、二人にもなってないんだよね?」
「左様です。ですが、非常に安定して御座います。それ以上の事は、わたくし達には測定や判断は不可能です」
「クロ達には不可能だけど、それ以上の存在ならいけるって事は?」
「不明です。「世界」ならば或いはと推測できますが、わたくし達には連絡を取る手段が御座いません」
「あるじゃない。恐らく一つ」
ボクっ娘とクロのやり取りに、ハルカさんが断言するように告げる。
そうだ、彼女はどこに向かうかとマーレス殿下達に既に告げてる。何か考えなりがあるんだろう。
そう思って視線を向けると、彼女の強い視線が注がれた。
「神々の塔へ行くって話がここで出てくる、で良いのか?」
「そういえば啓示を受けたとか言っていたが、あれはなんだ?」
「ああ、あれ? ああ言えば、こっちの世界の人は何も言えないでしょう。これは逃げないとって、思ったの。けど今のクロの話で、神々の塔に行く決心もついたわ」
「本当は行く気は無かった?」
「ええ。とにかく騒がれる前に、人の世界から離れたかったの。
聖地の結界を復活させるわ、第五列魔法を一人で使うわじゃあ、もう言い逃れできないもの」
言葉の後半がウンザリげだ。
そう言えば、でかい魔法を見舞った後に何もせずいたのは、やっちゃった的に呆然としてたんじゃないだろうか。
「で、私かクロから聞きたい事は他にある?」
一通り聞いて話してスッキリ顔のハルカさんが、周囲を見渡す。
そこに、かぶり付き状態なレイ博士が、ピシッと挙手する。
「この聖地の結界については?」
「私が目覚める前の事は知らないわ。寝てる間に、何かの声が聞こえたとか、力が流れたとか、逆に流れ出したとかも分からない。次は?」
「『神槍』の魔法は、儀式魔法でもらったのか?」
「いいえ。2年ほど前に覚えたわ。て言うかレイ博士、私のネームドの由来が『神槍』が使える事に由来してるの知らないんですか?」
「えっ? 鎧が光るのと、か、か、可愛いのが理由か、かとではないのか?」
「そんなのがネームド由来になるわけないでしょう。まあ、実験以外は大勢から支援を受けた実戦の一回きりだったから、一人で使えるようになって自分でも凄く驚いてるけど」
「出し惜しみではないのか?」
さらに質問を続けるレイ博士に、ハルカさんが小さく頷いて続けける。
「Aランク程度の魔力だと、大量の魔力が必要ね。何年も前の時は、どっちも大量の魔石と10人以上の支援が必要だったし」
「まあ第五列だとそんなもんだろうな」
「けど、あの魔法使うと、自前の魔力だけだとこれだけ魔力があっても一回でガス欠状態ね」
レイ博士の質問の最後に、ハルカさんが肩を竦める。
それを見つつトモエさんが小さく挙手。
「次はクロにいい?」
「何なりと。お答え出来る限りお話させて頂きます」
それに頷きつつ言葉を続ける。
「うん。ハルカに儀式魔法で施した時、依り代を用意する際に用いるのと似た処置って言ってたけど、それって私達の依り代を作る時の作業に近いの?」
「そう考えていただいて構わないかと」
「やっぱりそうか。あ、私もこのキイロから知識というか魔法もらう時、似たような遣り取りしてるんだ。だからショウと同じくらい接近戦できる上に魔法属性2つ有り。しかも魔法てんこもりっていうインチキしてるわけ」
まさにチートだ。
けど、トモエさんの言葉が確かなら、ハルカさんもそういう事だ。
ハルカさん自身も気づいたらしい。
「私の体も魔法属性二つのまま、脳筋ビルドと同じになったって事?」
「言葉のいくつかは理解しかねますが、身体能力は以前より向上しております」
「属性二つプラスのユニーク持ちの『ダブル』も居るという噂はあるし、儲け物と思っておけばいいんじゃないか?」
シズさんが投げやり気味に話をまとめる。
取り敢えず、オレの存在価値がまた下がったのは間違いなさそうだ。
そしてシズさんの言葉は続く。
「それでクロ、お前が覚醒後に増えた情報と能力は何なんだ? 人以外の姿を取れるようになった事もそうなんだろう」
「わたくしは依り代作成、周辺状況の認識が主な能力で、特化していると言えます。よって、知識に関しての増加は御座いませんでした。
また、変形能力ですが、形と基礎的な能力を真似ますが、高い能力は御座いません。それにこの能力は、わたくし以外の物の多くも出来ます」
「そう言えば、ミカンがハルカの鎧になっていたな」
「変態、変形能力とか、錬金術師としては夢の技術だな。スミレも、聖地に行った時に覚醒しよう」
「覚醒には同意ですが、元主人様の鎧には壊れてもなりたく御座いません」
「ま、マントとかローブは?」
「その程度なら、その辺の布切れでも纏って下さいませ」
横では、レイ博士とスミレさんが、また脱力系なコントを始めている。
けどこれで空気も弛緩してきたので、そろそろハルカさんとクロの話は終わりのようだ。
けど夕食までにはまだ時間がある。
そしてこれを話すのは、オレの役目だろう。
「じゃあ今度は、ハルカさんが寝ていた間に分かった事だな」
「話があるって言ってたわね。三週間も寝てたのなら、聞かないといけない事は沢山あると思うけど?」
「諸々もあるけど、一番大切な話」
「何? もったいぶらないでよ」
少し機嫌を損ねた表情だけど、次の言葉で彼女の全身が驚きに包まれる。
「ハルカさんは、死んでなんかいなかったんだ」
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