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第四部
316「新学期始動(2)」
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始業式で久しぶりに登校すると、教室の様子が少し違っていた。
夏休み明けなので当然だろうと思いつつ入ると、何人かの視線がオレに固定された。
一学期の終盤には半ば孤立しつつある状況なのに、これはどうした変化だろう。
と思って、視線を半ば無視しつつ教室をぐるりと見渡すと、その変化の原因に行き当たった。
いや、すぐに思い当たるべきだった。
玲奈の髪型が変わったのはオレにとっては数日前の事だけど、クラスメートにとっては今日が初めてだ。
しかも地味な目立たないキャラながらも、オレという地味ながらも彼氏ができた事で注目度が上がった状態で一学期が終わっていたので、夏休み明けの髪型の変化で余計に注目を集めているらしかった。
それれでも玲奈の髪型は、ちゃんと地味目になっている。あのままだったら、もっと注目を集めていただろう。
メイクの方も、今までのノーメイクではなくて、他の女子と同じくらいにしているのが分かった。
そしてクラスの中では、玲奈が一番変化していた。
なにしろ見渡した限り、他のクラスメートは一部の男子が日焼けしている程度で、印象に変化がある程の奴はいなかった。
夏休みデビューと見られているかもしれない。
そして、オレまで変な動きをするのもやぶ蛇なので、玲奈とは視線が合うと互いに小さく頭を下げる程度に留めた。
しかしそれでもオレ達に注目したい奴はいるようだ。
こんな事なら、時間ギリギリに登校すればよかった。
それは玲奈の方が当てはまり、オレが登校した時点で彼女が属するようになったグループのリーダー格の側にいた。
弄られているに決まっている。
『いじり』と人様の恋愛ごとが大好きだけど、意外に姉御肌で実は世話好きなだけの女子だ。年をとったら、いい感じの母親になりそうな雰囲気を放っている。
横目で玲奈とそいつのやり取りを見ていると、そいつと視線が合ってしまう。
そして「ツッキー」と呼びかけられた。
そんな呼び方された事がないので「つ、ツッキー?」と思わず自分を指差しながらおうむ返しすると、ウンウンと頷き手招きされる。
「何? てか、ツッキーって」
「月待だからツッキー。うちのクラス、翔太だけで二人居るでしょ」
「あ、そうか」
オレの言葉に「これだから陰キャは……」とわざとらしくため息をつく。
「で、二人はどこまでいったの?」
「レナからは何も聞いてないのか?」
「レナって言ってるんだ。で?」
「みんな聞いてるようなところで言えと?」
こっちが立っているのを利用して、目に少し力を入れて言葉を返す。
「あー、流石にデリカシーなさすぎ?」
オレが強く頷くのに合わせて、レナも「ここではちょっと」と小さな声で抗議の声を上げる。以前なら、何か口にしても「え、あ、でも」くらいしか言えなかったんじゃないだろうか。
思わずちょっと笑みが浮かんでしまう。
が、それをそいつに見られた。ていうか、こいつの名前なんだっけ? 出席が玲奈のすぐ後だから、確か伊藤だ。
「ま、いいか。順調そうだし。それよりさあ、ツッキーてそんなキャラだった?」
「オレはオレだし。キャラ変えるとか、気にしたこともないけど?」
「そう、そういうところ。春と全然違うよね。それってやっぱり、レナと付き合うようになったから?」
最初は意外そうな顔だったのが、もうニタニタと嬉しそうに聞いてくるだけじゃなくて、指まで指してくる。
本当の事を話しても仕方ないので、「多分」と渋々といった感じで頷いておく。
そうすると、さらに笑顔が大きくなる。
「ま、いいんじゃないの。私も今の方がいいと思うし。あと、話さなくてもネタは上がってるよ」
「「ね、ネタ?」」
思わず二人でハモってしまう。何を見られたんだろうか。やはり二人きりの所だろう。
他のグループのメンバーも楽しげに笑っている。このうちの誰かが、目撃者っぽい。
「そんな警戒しなさんな。二人が自転車で一緒に走ってるのを見たやつが、何人かいるだけだって。
ただツッキーは、別の可愛い女の子とも自転車で仲良く走ってるのを見たってやつもいるんだけど?」
今度は違う笑顔で二人の顔を交互に見てくる。
しかし、オレにとってその答えは簡単だ。
オレが夏休み中に一緒に自転車で行動した女の子とやらは、玲奈以外に一人しかいない。
「それ、オレの妹だよ」
「あ、そうなんだ。妹いるのかあ。幾つ?」
「中三。自転車で一緒ってことは、一緒に勉強見てもらいに行くところだと思う」
「へーっ、つまんない」
そう言って、これに手をヒラヒラとする。用済みらしい。
呼びつけておいて勝手な気もするけど、これ以上絡まれても面倒なので、こっちとしても願ったり叶ったりだ。
ラノベのありがち主人公のように、軽く肩でも竦めて見せて「はいはい」と自分の席へと戻る。
しかし、やり取りの方はクラス中から、かなり注目を集めていたらしい。
オレはともかく玲奈が大丈夫かと思うも、玲奈は軽く弄られながらも平気そうなので、あまり気にしないことにした。
そしてそれで今日のクラスでのイベントは終わりかと思ったのだけど、始業式のため教室から体育館に向かう途中、ごく軽く肘で脇腹を小突かれた。
小突いてきたのは、クラスで陽キャグループに属している男子の一人だ。
「何?」と答えつつ振り向くと、好意的な笑みで「やるじゃん」と声までかけてくる。
フツメンだけど、人好きのする笑顔だ。
とりあえず、なるべく陽キャっぽい笑みを返すとさらに何度か小突いてきて、「天沢があんなに可愛いとか、ぜっんぜん気づかなかったっての。ツッキー、先見の明ありってやつ?」「そうかも」「うっわ、ドヤ顔だよ」という感じで、その後は意外に会話になった。
その後も玲奈の事を聞かれたりしたが、当たり障り無く応対していると、何となく陽キャの会話をしているような気になる。
しかも気がつくと、その男子が属する陽キャグループの数人と話していた。
当然だけど、一学期は縁のなかった男子達だ。
けど、話しかけられた内容を総合すると、しばらくグループ入りさせる為のお試し期間の始まりという事らしい。
休み時間などの教室の一角などへの集まりへの参加はまだだが、こうした移動中など目立たない状況の時に、フィーリングなどが合うか話してみようという事らしかった。
彼女ができたからグループ勧誘の検討とか、オレには分からない選定基準や理屈だが、男子は女子に比べてクラス内のグループ分けが緩やかなので、こんなものなのかもしれない。
そしてそれ以外でクラス内でまともな会話もする事もなく、始業式とクラスでの諸々も終わって、今日はこれで解放された。
クラスの男子とほぼ会話なしはちょっと不味いかと思ったが、一学期の終わりからの事だし、もう陰キャなグループに戻るのは絶望的だろう。
かと言って、オレが陽キャグループに正式に入れるとも思えないので、残り半年はボッチキャラになりそうだ。
(いや、クラス内に彼女がいるんだからボッチにはならないのか)
今ひとつ自分自身にとって関心が薄い事を思いつつ、玲奈と一緒に部室へと向かう事にした。
もう今更なので、教室内で玲奈に普通に声をかけることも気にしなかった。
一種の開き直りというやつだが、意外に注目を集める。
今までのジミ男とジミ子ではなく、玲奈がかなり垢抜けたというか本当は可愛いというのが、衆目の目に晒されてしまったからだろう。
玲奈を部活に誘う際も、玲奈のグループにはごく軽く囃し立てられたりもしたが、気にしたら負けだ。
夏休み明けなので当然だろうと思いつつ入ると、何人かの視線がオレに固定された。
一学期の終盤には半ば孤立しつつある状況なのに、これはどうした変化だろう。
と思って、視線を半ば無視しつつ教室をぐるりと見渡すと、その変化の原因に行き当たった。
いや、すぐに思い当たるべきだった。
玲奈の髪型が変わったのはオレにとっては数日前の事だけど、クラスメートにとっては今日が初めてだ。
しかも地味な目立たないキャラながらも、オレという地味ながらも彼氏ができた事で注目度が上がった状態で一学期が終わっていたので、夏休み明けの髪型の変化で余計に注目を集めているらしかった。
それれでも玲奈の髪型は、ちゃんと地味目になっている。あのままだったら、もっと注目を集めていただろう。
メイクの方も、今までのノーメイクではなくて、他の女子と同じくらいにしているのが分かった。
そしてクラスの中では、玲奈が一番変化していた。
なにしろ見渡した限り、他のクラスメートは一部の男子が日焼けしている程度で、印象に変化がある程の奴はいなかった。
夏休みデビューと見られているかもしれない。
そして、オレまで変な動きをするのもやぶ蛇なので、玲奈とは視線が合うと互いに小さく頭を下げる程度に留めた。
しかしそれでもオレ達に注目したい奴はいるようだ。
こんな事なら、時間ギリギリに登校すればよかった。
それは玲奈の方が当てはまり、オレが登校した時点で彼女が属するようになったグループのリーダー格の側にいた。
弄られているに決まっている。
『いじり』と人様の恋愛ごとが大好きだけど、意外に姉御肌で実は世話好きなだけの女子だ。年をとったら、いい感じの母親になりそうな雰囲気を放っている。
横目で玲奈とそいつのやり取りを見ていると、そいつと視線が合ってしまう。
そして「ツッキー」と呼びかけられた。
そんな呼び方された事がないので「つ、ツッキー?」と思わず自分を指差しながらおうむ返しすると、ウンウンと頷き手招きされる。
「何? てか、ツッキーって」
「月待だからツッキー。うちのクラス、翔太だけで二人居るでしょ」
「あ、そうか」
オレの言葉に「これだから陰キャは……」とわざとらしくため息をつく。
「で、二人はどこまでいったの?」
「レナからは何も聞いてないのか?」
「レナって言ってるんだ。で?」
「みんな聞いてるようなところで言えと?」
こっちが立っているのを利用して、目に少し力を入れて言葉を返す。
「あー、流石にデリカシーなさすぎ?」
オレが強く頷くのに合わせて、レナも「ここではちょっと」と小さな声で抗議の声を上げる。以前なら、何か口にしても「え、あ、でも」くらいしか言えなかったんじゃないだろうか。
思わずちょっと笑みが浮かんでしまう。
が、それをそいつに見られた。ていうか、こいつの名前なんだっけ? 出席が玲奈のすぐ後だから、確か伊藤だ。
「ま、いいか。順調そうだし。それよりさあ、ツッキーてそんなキャラだった?」
「オレはオレだし。キャラ変えるとか、気にしたこともないけど?」
「そう、そういうところ。春と全然違うよね。それってやっぱり、レナと付き合うようになったから?」
最初は意外そうな顔だったのが、もうニタニタと嬉しそうに聞いてくるだけじゃなくて、指まで指してくる。
本当の事を話しても仕方ないので、「多分」と渋々といった感じで頷いておく。
そうすると、さらに笑顔が大きくなる。
「ま、いいんじゃないの。私も今の方がいいと思うし。あと、話さなくてもネタは上がってるよ」
「「ね、ネタ?」」
思わず二人でハモってしまう。何を見られたんだろうか。やはり二人きりの所だろう。
他のグループのメンバーも楽しげに笑っている。このうちの誰かが、目撃者っぽい。
「そんな警戒しなさんな。二人が自転車で一緒に走ってるのを見たやつが、何人かいるだけだって。
ただツッキーは、別の可愛い女の子とも自転車で仲良く走ってるのを見たってやつもいるんだけど?」
今度は違う笑顔で二人の顔を交互に見てくる。
しかし、オレにとってその答えは簡単だ。
オレが夏休み中に一緒に自転車で行動した女の子とやらは、玲奈以外に一人しかいない。
「それ、オレの妹だよ」
「あ、そうなんだ。妹いるのかあ。幾つ?」
「中三。自転車で一緒ってことは、一緒に勉強見てもらいに行くところだと思う」
「へーっ、つまんない」
そう言って、これに手をヒラヒラとする。用済みらしい。
呼びつけておいて勝手な気もするけど、これ以上絡まれても面倒なので、こっちとしても願ったり叶ったりだ。
ラノベのありがち主人公のように、軽く肩でも竦めて見せて「はいはい」と自分の席へと戻る。
しかし、やり取りの方はクラス中から、かなり注目を集めていたらしい。
オレはともかく玲奈が大丈夫かと思うも、玲奈は軽く弄られながらも平気そうなので、あまり気にしないことにした。
そしてそれで今日のクラスでのイベントは終わりかと思ったのだけど、始業式のため教室から体育館に向かう途中、ごく軽く肘で脇腹を小突かれた。
小突いてきたのは、クラスで陽キャグループに属している男子の一人だ。
「何?」と答えつつ振り向くと、好意的な笑みで「やるじゃん」と声までかけてくる。
フツメンだけど、人好きのする笑顔だ。
とりあえず、なるべく陽キャっぽい笑みを返すとさらに何度か小突いてきて、「天沢があんなに可愛いとか、ぜっんぜん気づかなかったっての。ツッキー、先見の明ありってやつ?」「そうかも」「うっわ、ドヤ顔だよ」という感じで、その後は意外に会話になった。
その後も玲奈の事を聞かれたりしたが、当たり障り無く応対していると、何となく陽キャの会話をしているような気になる。
しかも気がつくと、その男子が属する陽キャグループの数人と話していた。
当然だけど、一学期は縁のなかった男子達だ。
けど、話しかけられた内容を総合すると、しばらくグループ入りさせる為のお試し期間の始まりという事らしい。
休み時間などの教室の一角などへの集まりへの参加はまだだが、こうした移動中など目立たない状況の時に、フィーリングなどが合うか話してみようという事らしかった。
彼女ができたからグループ勧誘の検討とか、オレには分からない選定基準や理屈だが、男子は女子に比べてクラス内のグループ分けが緩やかなので、こんなものなのかもしれない。
そしてそれ以外でクラス内でまともな会話もする事もなく、始業式とクラスでの諸々も終わって、今日はこれで解放された。
クラスの男子とほぼ会話なしはちょっと不味いかと思ったが、一学期の終わりからの事だし、もう陰キャなグループに戻るのは絶望的だろう。
かと言って、オレが陽キャグループに正式に入れるとも思えないので、残り半年はボッチキャラになりそうだ。
(いや、クラス内に彼女がいるんだからボッチにはならないのか)
今ひとつ自分自身にとって関心が薄い事を思いつつ、玲奈と一緒に部室へと向かう事にした。
もう今更なので、教室内で玲奈に普通に声をかけることも気にしなかった。
一種の開き直りというやつだが、意外に注目を集める。
今までのジミ男とジミ子ではなく、玲奈がかなり垢抜けたというか本当は可愛いというのが、衆目の目に晒されてしまったからだろう。
玲奈を部活に誘う際も、玲奈のグループにはごく軽く囃し立てられたりもしたが、気にしたら負けだ。
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