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第三部
260「合流(2)」
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ハルカさんが言葉の最後に、ホッと一息をつく。厳しく糾弾してが、本当は心配してのことだ。
そしてそれを分かっていたのであろう、二人が頭を下げる。
「本当に助かったよ」
「礼なら、そこの領主様に言って。急ごうって言ったのは彼だから」
話し合いを半ばぼーっと見ていたオレに、急に視線が集まる。
「領主? ハルカが領主じゃなかったの?」
「実はエルブルスは、男じゃないと正式な領主にさせてくれないの。今回、本当はそれをするためにノヴァに来たようなものだったのよ」
「確かショウ君だったな。では君が新たな、いや正式なエルブルス辺境伯ということか?」
「はい、そういう事になりました」
オレの頼りない返事よりも、少し後ろで待機している家臣の皆さんの表情や頷き具合の方が、よほど真実を伝えていた。
「そちらの領内の事情は分かった。早期の来援を改めて感謝申し上げる、エルブルス辺境伯よ」
そう言うとジン議員が、こちらの世界の礼儀作法に則って頭を下げる。合わせてリンさんも頭を下げた。
家臣の皆さんに見せる為でもあるが、真摯な態度で状況から見て本当に大変だったのだろう。
「よしてください。それにオレはオツムはあれなんで、こういう時に剣を振り回すくらいしか出来ないですから」
「だが、エルブルス辺境伯の決断が、今回の戦闘の勝利を我らノヴァトキオにもたらしたのは間違いない事実だ」
「そうよ、感謝し足りないくらい。ところで、今後も戦闘参加してもらえるのかしら?」
頭を上げてさらに賛辞が続く。ただ、少し早く来ただけなのに、こそばゆいくらいだ。
「事前の作戦期日の間は参加しますよ。ただ、補給とかはお願いします」
「何しろ領主様が急かしたから、晩御飯も持たずに駆けつけたからねー」
ボクっ娘の混ぜ返しに、苦笑ながら多くが笑顔を見せた。
「ここでの世話は、私たちが責任を持って最大限提供させてもらうわ」
「報奨についてもだ。窮地を大勝に変えた功績は、この戦場にいる誰も否定できないだろう」
オレが聞きたかった言葉はこれで十分だ。
しかし周りの状況は、それで済ませて良いとは思えなくなりつつあった。
魔物達が逃げ始めて、掃討戦に移りつつあったからだ。
「けど、まだ完全じゃないですよね」
「まだ戦ってくれるのか?」
意外そうな顔をされた。
けど、この状況を高みの見物は出来そうに無い。
「魔法職はともかく、オレはまだ全然余裕なんで手伝いますよ。まだみんな戦ってるんですから」
「と、領主様の仰せだ。行くぞ野郎ども。もうひと暴れだ!!」
「竜騎兵隊も出るぞ。ユーリはレナ殿と偵察を」
「分かりました。って、待ってよー」
オレの一言でみんなが動き始める。
ボクっ娘などは、オレが話し始めた時点でヴァイスの元へ走り始めていた。
「すいませんが、皆さんお願いします」
「私はどうする? また焼き払うか?」
「その後も追撃をすぐにするなら、森は焼かない方がいいと思います」
オレの言葉にシズさんが頷く。
言ってみただけと言った感じだ。
「分かった。なら、偵察が戻ってきたら、空から逃げるヤツらを爆撃して回ろう」
「お願います」
「派手に魔法使うなら、魔力を少し融通しましょうか? 流石に龍石も空でしょう」
「ハルカこそ消耗してるんじゃないのか?」
「どっちも、後でオレの残りを吸い上げてください」
「では、後でそうさせてもらおう」
ハルカさんがオレに視線を向けて片眉をあげ、シズさんが耳を軽く揺らす。
さらにハルカさんは言葉を続けた。
「とはいえ、今は私も行くわ。ラルドさん、シズの護衛もお願いね」
「ワシ、出番なしなんだがのお」
「治癒職は出番がないほどいいのよ」
顎髭をしごいていたラルドさんが、苦笑を止めて頷いた。
「違いないな。ま、お前さんもほどほどにな」
「ええ。けど、魔力を沢山使うほどの相手はいなさそうだけどね」
「油断大敵。戦場の中心は隙間がないだろうから、注意しながら敗残兵を狩ろう」
そう言って駆け出した。
後ろからは「お願いします」というリンさんの声に被って「元気なことだ」というジン議員のため息まじりの声が聞こえていた。
確かに、我ながら元気なものだと思う。
その後の戦いは、前線の大きな砦を包囲していた魔物の大集団は、体制を整えたノヴァの増援部隊と砦から打って出たノヴァの市民軍によって挟み撃ちにされた。
さらに空中からもノヴァの竜騎兵たちとエルブルスの竜騎兵の攻撃が加わり、魔物の大群は壊滅的打撃を受ける。
そして大樹海側の北の方を囲んでいた魔物を中心にした生き残りは、追撃を受けつつバラバラとなって深い森へと消えていった。
その中でオレ達は、ノヴァの軍の邪魔にならないように、主に崩れて敗走し始めていた魔物を中心に攻撃していった。
最初は歯ごたえが足りないとホランさん達がぼやいていたしオレも同感だったが、あまりにも数が多いので終盤は辟易とさせられた。
その上戦闘の終盤には、こちらも体力と魔力を消耗したので、軽傷者だったが怪我人を出すなど無傷とはいかなかった。
このため、戦闘終了後にはドーワフのラルドさんの出番と相成った。
だが、相手は魔物。潰せる時に潰せるだけ潰しておく方が良いので、まずは満足すべき結果と言える。
ジン議員の見積もりでは、攻撃してきたうちの70%以上、特に空中戦力の90%以上は倒せたとの事だ。手を焼いた魔物に飼われていた地龍も、1ダースを超える数を倒したそうだ。
魔物の集団が1万を大きく上回る数だった事を考えると、結果として完全勝利と言える。
魔物が得意な夜の戦闘も無理だろうとの事だ。
その上、この強襲で魔物たちが戦力の出し惜しみをしたとは考えられないので、これ以上増えることもないだろうとの予測だった。
しかも単純に倒した魔物の数だけなら、発生頻度などから考えると、向こう1年は何もしなくても大丈夫な程だそうだ。
大物狙いとなると、数年は獲物不足に悩むだろうとまで言っていた。
そしてそれを分かっていたのであろう、二人が頭を下げる。
「本当に助かったよ」
「礼なら、そこの領主様に言って。急ごうって言ったのは彼だから」
話し合いを半ばぼーっと見ていたオレに、急に視線が集まる。
「領主? ハルカが領主じゃなかったの?」
「実はエルブルスは、男じゃないと正式な領主にさせてくれないの。今回、本当はそれをするためにノヴァに来たようなものだったのよ」
「確かショウ君だったな。では君が新たな、いや正式なエルブルス辺境伯ということか?」
「はい、そういう事になりました」
オレの頼りない返事よりも、少し後ろで待機している家臣の皆さんの表情や頷き具合の方が、よほど真実を伝えていた。
「そちらの領内の事情は分かった。早期の来援を改めて感謝申し上げる、エルブルス辺境伯よ」
そう言うとジン議員が、こちらの世界の礼儀作法に則って頭を下げる。合わせてリンさんも頭を下げた。
家臣の皆さんに見せる為でもあるが、真摯な態度で状況から見て本当に大変だったのだろう。
「よしてください。それにオレはオツムはあれなんで、こういう時に剣を振り回すくらいしか出来ないですから」
「だが、エルブルス辺境伯の決断が、今回の戦闘の勝利を我らノヴァトキオにもたらしたのは間違いない事実だ」
「そうよ、感謝し足りないくらい。ところで、今後も戦闘参加してもらえるのかしら?」
頭を上げてさらに賛辞が続く。ただ、少し早く来ただけなのに、こそばゆいくらいだ。
「事前の作戦期日の間は参加しますよ。ただ、補給とかはお願いします」
「何しろ領主様が急かしたから、晩御飯も持たずに駆けつけたからねー」
ボクっ娘の混ぜ返しに、苦笑ながら多くが笑顔を見せた。
「ここでの世話は、私たちが責任を持って最大限提供させてもらうわ」
「報奨についてもだ。窮地を大勝に変えた功績は、この戦場にいる誰も否定できないだろう」
オレが聞きたかった言葉はこれで十分だ。
しかし周りの状況は、それで済ませて良いとは思えなくなりつつあった。
魔物達が逃げ始めて、掃討戦に移りつつあったからだ。
「けど、まだ完全じゃないですよね」
「まだ戦ってくれるのか?」
意外そうな顔をされた。
けど、この状況を高みの見物は出来そうに無い。
「魔法職はともかく、オレはまだ全然余裕なんで手伝いますよ。まだみんな戦ってるんですから」
「と、領主様の仰せだ。行くぞ野郎ども。もうひと暴れだ!!」
「竜騎兵隊も出るぞ。ユーリはレナ殿と偵察を」
「分かりました。って、待ってよー」
オレの一言でみんなが動き始める。
ボクっ娘などは、オレが話し始めた時点でヴァイスの元へ走り始めていた。
「すいませんが、皆さんお願いします」
「私はどうする? また焼き払うか?」
「その後も追撃をすぐにするなら、森は焼かない方がいいと思います」
オレの言葉にシズさんが頷く。
言ってみただけと言った感じだ。
「分かった。なら、偵察が戻ってきたら、空から逃げるヤツらを爆撃して回ろう」
「お願います」
「派手に魔法使うなら、魔力を少し融通しましょうか? 流石に龍石も空でしょう」
「ハルカこそ消耗してるんじゃないのか?」
「どっちも、後でオレの残りを吸い上げてください」
「では、後でそうさせてもらおう」
ハルカさんがオレに視線を向けて片眉をあげ、シズさんが耳を軽く揺らす。
さらにハルカさんは言葉を続けた。
「とはいえ、今は私も行くわ。ラルドさん、シズの護衛もお願いね」
「ワシ、出番なしなんだがのお」
「治癒職は出番がないほどいいのよ」
顎髭をしごいていたラルドさんが、苦笑を止めて頷いた。
「違いないな。ま、お前さんもほどほどにな」
「ええ。けど、魔力を沢山使うほどの相手はいなさそうだけどね」
「油断大敵。戦場の中心は隙間がないだろうから、注意しながら敗残兵を狩ろう」
そう言って駆け出した。
後ろからは「お願いします」というリンさんの声に被って「元気なことだ」というジン議員のため息まじりの声が聞こえていた。
確かに、我ながら元気なものだと思う。
その後の戦いは、前線の大きな砦を包囲していた魔物の大集団は、体制を整えたノヴァの増援部隊と砦から打って出たノヴァの市民軍によって挟み撃ちにされた。
さらに空中からもノヴァの竜騎兵たちとエルブルスの竜騎兵の攻撃が加わり、魔物の大群は壊滅的打撃を受ける。
そして大樹海側の北の方を囲んでいた魔物を中心にした生き残りは、追撃を受けつつバラバラとなって深い森へと消えていった。
その中でオレ達は、ノヴァの軍の邪魔にならないように、主に崩れて敗走し始めていた魔物を中心に攻撃していった。
最初は歯ごたえが足りないとホランさん達がぼやいていたしオレも同感だったが、あまりにも数が多いので終盤は辟易とさせられた。
その上戦闘の終盤には、こちらも体力と魔力を消耗したので、軽傷者だったが怪我人を出すなど無傷とはいかなかった。
このため、戦闘終了後にはドーワフのラルドさんの出番と相成った。
だが、相手は魔物。潰せる時に潰せるだけ潰しておく方が良いので、まずは満足すべき結果と言える。
ジン議員の見積もりでは、攻撃してきたうちの70%以上、特に空中戦力の90%以上は倒せたとの事だ。手を焼いた魔物に飼われていた地龍も、1ダースを超える数を倒したそうだ。
魔物の集団が1万を大きく上回る数だった事を考えると、結果として完全勝利と言える。
魔物が得意な夜の戦闘も無理だろうとの事だ。
その上、この強襲で魔物たちが戦力の出し惜しみをしたとは考えられないので、これ以上増えることもないだろうとの予測だった。
しかも単純に倒した魔物の数だけなら、発生頻度などから考えると、向こう1年は何もしなくても大丈夫な程だそうだ。
大物狙いとなると、数年は獲物不足に悩むだろうとまで言っていた。
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